九百十五生目 演目
私たちはテーブルの1つに座る。
まずはルールを覚えるということで無掛けでのゲームだ。
表にあったのがダイスということでここでもダイスが出てくる。
「なんだかドキドキするね……」
「私はどうしようか迷う……色々と」
「俺は楽しみだな、修行をしていると、たまにこういう民衆の遊びが楽しみなんだ」
三者三様の反応をしつつ向かい側に座るディーラーをみる。
「まあ、これは賭け事全般ですが……ズルはなし、能力による不正や、魔法による妨害はだめで、当然こちら側もそういうことが出来ない仕組みになるよう対策はします。やるならバレないようにしてください」
「おいおい、インチキ推薦かよ!」
そうディーラーはエイナだ。
特別にということで。
ダンディーな声の男は私達のお酒を用意していてくれている。
まさかのインチキ勧告に苦笑いを浮かべつつもそれを強く否定はしない。
つまりはそれもルールなのだ。
見破れない方が悪いという。
私達はそこに全員なんとはなしに気づきハックがつばをのむ。
「まあ、これは簡単なゲームです。ちょっとした遊びで、勝敗を決めて、その結果で掛けの勝ち負けを決める……というもの。今回はデモプレイということで、シンプルに行きましょう」
机には端の高くされた木箱のような広い器。
そしてエイナは指の間に器用なことにダイスを3つ挟んで見せる。
姿から凄みというかなにかのスキルなのかオーラすら纏って只者のギャンブラーじゃない雰囲気が漂っている。
「本来はもっと複雑で細かい賭け事にしますが……今回は単純。4、6、8……と続く偶数か。3、5、7……と続く奇数か。それを決めてもらいます」
「なるほどなあ……でもよ、それだとなげる側が不正し放題じゃないか?」
それは私も思った。
しかしエイナは静かに笑みをたたえるだけ。
「……三流のゲームマスターは技を振るうのに必死。二流のゲームマスターは小賢しいテクで小銭を稼ぐでしょう。しかし一流のゲームマスターは、心を持つことです」
エイナはもう片方の手に空の木のコップを持ちサイコロをなげいれる。
からりと乾いた音が響いた。
「こころ?」
「ええ。信念とも言えるでしょう。お客様と向き合い、勝っても負けても真剣勝負。最後に笑うのが誰であれ、満足してもらえる一時にする。不正を働くようなゲームマスターの元で、果たして誰が遊びたいでしょうか? 魅せることの出来ないゲームマスターの元で誰が楽しめるでしょうか。これは1つの戦い、勝ち負け以上のものを得られなければ、そこに勝負をする意味はないのです」
コップが軽やかに揺れて6面ダイスたちが転がりぶつかり合う音が響く。
それは踊っているようにも祈っているようにも見えた。
信念だ。勝負事に向き合う心の信仰が信念として言葉と動きに出る。
必死に祈り拝む姿が人々を魅力するように。
腕を揺らし鳴らし立って回ってダイスが跳ねるだけで私達魔物でも惹きつけられた。
ダイスの音に異常はなく仕掛けらしいものはなく。
そしてこれはきっと目で追ったとして答えは彼女や神すらも知り得ぬものとなる。
祈りには応えるものがいるのだから。
「すっごいな……詳しいこと何もわからないけれど、あれは凄い、動きが鍛錬したものだ」
「芸術だ……これも芸術なんだよきっと」
「なるほど……そうか、これは芸術……」
「さあ! お賭けください! 偶か! 奇か!」
それは闇夜に浮かぶ獣の目のように。
美しくも妖しくおそろしい目が輝く。
それは軽い陶酔を呼び起こす。
簡単にいうと場の雰囲気に酔わせられる力がここにあった。
「えー偶数!」「奇数!」「ぐ、偶数!」
私だけ奇数の声が上がりピタリと舞いは止まる。
一連の所作が美しく気品があるように感じられるコップのスライド。
そして流れるようにサイコロたちは転がりながら3つきれいに分かれて出てきた。
一瞬の時なのにまるで長い時間転がり続けるように感じられ。
今1つの儀は閉じられる。
コロコロ、コロコロ。
6。 3。 1。
「合わせ数は10。偶の目であります」
「ぐあぁぁーー」
私は崩れ落ちた。
なんだろう満足感はすごい。
なんなら何も賭けていないのに。
ここまで心動かされるだなんて。
「「やったー!」」
きょうだいふたりは手を合わせでぱちんと鳴らしわいのわいのしている。
いつもこうだ! 宝くじ10枚セットで返却0シェルだったの身内で自分だけなんだ!
「……ったく、魅せるねえ」
「見世物ではありませんよ、しっしっ」
「ここ俺の店なんだけれど……そんな最初からガチプレイとか、果たして他で満足できる体になれるものか……」
不穏なことをダンディーな声が苦笑いしつつ話した。
ただ……気持ちはわかる……




