九百十四生目 賭場
質の良い魔道具がポイント換算だが随分低価格で手に入ってしまった。
良いものなら数千から万シェルかかるなど珍しくない。
それを50無償ポイントで買えたのだから随分なお得だ。
「良かったのかな……無償ポイントで」
「そういえばそうだね」
買っておいてなんだが弟のハックに指摘され今更思い直しながら歩む。
ただ不思議なことだけれど向こうは平然と受け入れていた。
無償ポイントは換金できないのだけれど……
「無償ポイントでいいとしたのは、それを元手にするつもりだけでしょうね。それに、有償ポイントは無償ポイントより遥かに価値がありますから」
「そういうものなのかな……」
「いつでも購入はお待ちしておりますよ? 纏めて買うと、無償ポイントが多めについてお得です」
ニコリとエイナに言われるがなんだか末恐ろしいものを感じて頷けなかった。
増えるのが無償ポイントだけなのがミソだよなぁ……
私達はしばらく移動し市場を抜ける。
道ということはそこらへんのテント郡や広場に繋がるわけで。
広場の地図を見るにまだここはテントたちもテナントというか土地貸し状態らしい。
「例のことなんだけれど、調べてくれたかな?」
「あのことですか? その券を持つツカイワ様のご指示なので一応はやりましたが、見ても面白いものはそんなにないですよ?」
そうはいいつつもエイナはしっかりとした紙に纏めしたためた束をくれた。
……まさか彼女に攫われたニンゲン入っていない? なんて聞くわけにもいかないので。
ここ数日とくに私が来る前のあたりで搬入された大きめの荷物取引一覧をまとめてもらった。
そうそれはまるで隠蔽すれば人一人入れそうな荷物を。
パラパラとめくりザッと目を通す。
ざっくり目を通して紙を返した。
「もうよろしかったのですか?」
「うん。後でしっかり読み直すね」
「承りました」
とはいいつつ今も脳内で読んでいる。
興味深いのは割と多い。
搬入と搬出を大きいものに絞っている割にどちらも数が多いのと……
明らかにこれおかしいだろ? っていう物品の嵩と重さと内容物の不一致すら当然のように見逃されている。
もちろん跳ねられているものもあるようだが内容物は誰かの魔法兵器らしくそりゃそうだろとしか言えない。
そして見逃すというよりもこれは……受け入れている。
ここには正義の執行者も町のお巡りさんもいない。
独立しよそからはみえぬ移動都市。
行楽の光は強く誰もが影を持つ。
そこで行われるものにほんの少しでもと外から仕入れて稼ぐ姿にわざわざ法をとくものはいない。
なんというか想像したよりもはるかにワンダーランドというよりダーティランドな雰囲気が漂っていそうだ。
怪しい記述は脳内でチェック入れつつ私はきょうだいたちの興味のまま歩いていく。
「なあ、こっちのほうのテントは何が?」
「ツカイワ様のご兄弟の……」
「ああ、インカローズだ。こっちが弟のハックマナイト」
「よろしく!」
「はい。ツカイワインカローズ様に、ツカイワハックマナイト様」
「長いから下だけにしてくれ……それで、ここらへんのは?」
ひととおりのやり取りをしたあとインカ兄さんが指したのは奥のテントに比べれば小規模で屋台に比べれば随分と立派なものだった。
表に飾られているのはダイスの看板。
あー……もしかしてもしかすると。
「個人の賭場ですね」
「とば……お金をかけてなにかする、あれ? 宝くじみたいな?」
……アノニマルースでも公式宝くじは実はやっている。
ちなみに約1名出禁である。
誰とは言わないが激運で全部持っていく可能性が高すぎるのだ。
「ううん、宝くじ、ですか……少し遠いですね。ただ、結果だけ見れば同じかと。説明はやはり難しいので、少々入ってみましょう。屋台屋よりはマシな環境のはずです」
私達はインカ兄さんに引き連れられる形でテントの中へ入っていく。
そこは外に比べればどことなく薄暗い。
だが薄暗さは明かりよりも雰囲気だろう。
「いらっしゃい」
ダーティな男性の声が響く。
カウンターのようなところで酒のために仕込んでいる者。
雰囲気出ている。
「おや、ここは当たりのようですね。最近流行りの酒場形式を踏まえつつ、賭博が楽しめるようですよ、ツカイワ様方」
「おや? 従業員の方つきかい? ということは……」
男の目が暗い色に光る。
「駄目ですよ。こんな中の下程度のところで本気の遊びはさせません。彼らはこちらの上客です」
「ははっ、そういうな。どうせここのレートなんてそっちと比べものにならないほど低いんだ。そう目くじらたてなさんな」
エイナは肩をすくめる。
どうやらそういう場にお呼びされたらしい。




