八百九十九生目 調声
ユウレンは立ち上がり再度自身をチェックする。
もはや高身長となったユウレンは自身の違和感に何も言えず身体を隅々まで触ったり伸ばしたり屈んだりして確かめる。
それによってわかったことは……
全体的にやせぎすの男性であること。
凄まじい違和感はあるが誰かと入れ替わったわけではなく自分らしいということ。
それは魂と肉体の関係を死霊術師としてみることで判明した。
そしてとても興味深いポイントを見つけた。
「これって……ワタシの性別が根から変更されている?」
声が未だ違和感があるもののそこは一旦置いておく。
うねるように気味の悪い声が出てしまう。
皇国の舞台演劇に出る女形を何段階も情けなくしたような声だとユウレンは感じていた。
おそらくこの身体の声のだし方と合っていないのが原因だとユウレンは結論付けていた。
魂を見たところ精神と肉体とのバランスで符号部分が一致するようになっている。
これは異常なことである。
ユウレンは女性なのに元々男性だったと魂から変更されているのだ。
ユウレンは知らないが精神か魂かが肉体と違和が発生すると今ユウレンが感じている段階ではないほどに強い違和感を感じ続ける羽目になる。
それを知らないユウレンだとしてもあまりに奇妙だった。
「あっあー……あー……らー……うー……あー……」
調声をしながら頭の回転を止めないようにする。
爪にローズオーラが触れてからあたりが謎の光に包まれ浮遊感を得て。
気を失ってここまで飛ばされていたらひとりになっていて。
ついでに男になっていた。
「いやそうはならないでしょう」
そこそこ調声の終わった声で誰にでもなくツッコミを入れる。
途中まではまだわかる範囲だ。
どうせ何かにまきこまれたのだろう。
ローズオーラと共に行動するならありうることだ。
人知を超えたものがあっても珍しくはない。
ただこれの人知の超え方は意味がわからない。
種類や方向性が今までと違う質でユウレンはだいぶ困惑していた。
「どうしようかしら……」
もはや変に慣れてきたのに自分で恐ろしさを感じるユウレン。
ユウレンはこれを自分自身がなれやすいタチだからではないと判断する。
もはや馴染むかのようにさせられている違和感があるのだ。
とは言え困ったことは現状合流するには正面扉に向かうしかないということ。
それが嫌だった。
いかにも誘導されていて敵の思惑に沿うのはまさしくユウレンの神経を逆撫ですることさのものだ。
なのでユウレンは骸骨を呼び出すことにした。
ここが部屋であろうとユウレンは死の概念を操ることは出来る。
昔より強くなったユウレンはそこに死体がなくともどこにでもある死の感覚をかたちにしてまとわせられる。
つまりはゴーストゴーレムだ。
しかしすぐ違和感に気付く。
腕をかざし魔法を使っても作れないのだ。
「おかしいわね……まさか、ここには死がないのかしら……?」
清められた土地などならわかる。
意図的にそういったアンデッド対策がされているからだ。
しかしユウレンはその気配を肌で感じることはついぞなかった。
仕方ないので諦め自分の手で扉を開く。
自分の手なのに長く伸びゴツゴツとしていてなんとも感触が硬い。
ただドア1つあけるのに随分と感慨深く動いた。
「さてどうなって……あら」
ユウレンが扉をあけた先は意外な景色が広がっていた。
相変わらず室内でありさっきよりも広い空間にたどり着く。
ユウレンはなんとなくニンゲンらしくない建築の風味をなんとなく感じていた。
ただ問題なのはそこではない。
中央に集まっていたのは他のメンバーだった。
ノーツは大きく目立つ。変化は特にない。
もう1つゴーレムが置いてあるが草で出来ているのでたぬ吉のものだとユウレンは推察した。
推察しなくてはいけないのはその形式がだいぶ変化していたから。
前までのたぬきをイメージしたようなまんまるボディから速度と攻撃力の高そうなするどい雰囲気を漂わせる。
まるでたぬ吉が操りそうにない機体だ。
そして近くでアワアワと慌てているのは間違いなくたぬ吉だろうしどっしりと座っているのはジャグナーだろうと判断できた。
全員がユウレンに気づき驚かれた。
「「誰!?」」
「あら? たぬ吉は大きくなって、ジャグナーは小さくなっているのね?」
ユウレンは疑問には答えず他のメンツへと近づいてく。
確かに人から見れば他の種族の性別差異などよほど大きくなければなんとなくしかわからない。
特に彼らは文化的な営みを意識しているので隠すものは隠している。
なのでユウレンはもっとも目立つ体格差を指摘した。
巨体を誇っていたジャグナーは明確に小柄化していて岩鎧の形状もなんとなく違う。
対してたぬ吉は元々小柄だったのが今では大柄でローズオーラに例えるならばロゼハリー状態くらいに大きかった。




