八百八十五生目 移動
移動サーカスまではかなり距離があった。
地図上では簡単に指で行き来出来ても実際の距離は山越え谷越えその先だ。
町もいくつか挟む大移動だ。
これなら単独で足を伸ばしたほうがいい。
アノニマルースで一緒に行くメンツ募集しても良さそうだ。
そして出来うるなら私の正体を知っている相手の方が良い。
「ローズオーラさん単独で移動サーカスへ?」
「ほら、私、そういう立場ですし。最速移動は飛空船に任せますが、そこそこ早くなら、ね」
「「ああー……」」
ここには私のことを英傑程度に知っているものが多い。
私が単独で走ったほうが早いぐらいは思っているだろう。
「それと、バンさんたちに、ミアちゃんのことを任せていいですか? 彼女は向こうについたら召喚するので」
「わかっ……召喚!?」
「そのぐらいは出来ます」
バンになぜか呆れられてしまった。
むしろ感心なのだろうか……
「規格外なのは今更だな。それよりも、今表の奴らに何をどう説明するかだな。ガス抜きもいるだろう。強制監査までは遠い」
「そうですねぇ……そこはどうにかしないと」
「ぼくが出ていって謝れば……」
「何も解決にならないからやめときなさいって」
その後も話し合いは続き一旦ギルドの金で宴会したら多少は収まった。
説明も酒で曖昧だろう。
なおギルドはそんなに金がないので私のポケットマネーである。
最近こういうこと多いな……?
まあ自由に使えるお金にはかなり余裕がある。
そこまで気にしていない。
気になるのはミアだ。
宴会から抜け出すようにミアとふたり歩く。
町の中はどことなくやはり寂しい。
「……というわけで、私はちょっとの間別行動を取るよ。ミアちゃんはその間、ここで待ってもらうことになる」
「わかりました……さすがに足手纏いですもんね」
しぶしぶだが受け入れてくれたようだ。
苦笑いをしつつ続ける。
「まあまあ、そうおもわないでよ。ミアちゃんの力としては、ここで鍛えたほうが上がっていく。それに、私がみているのもいいけれど、それ以外のことをもっと見て知っていってほしいんだ。今は村のためというのが頭を占めているだろうけれど……世界はいろいろあるって、せっかく冒険者になったんだからお得にね」
「わ、たしは……」
いきなり色々言われても困るだろう。
ミアは今自分の中に大きく強い信念をもっている。
他者に何を言われても揺らぐことがない。
しかしそれが視野を狭めている。
ミアの人生は村に戻るにせよまだまだ続く。
今のことが終わったあとどうするにせよそこにも視野を向けてほしい。
「まあようは……せっかくお出かけしたんだから、今も楽しもう」
「で、でもまだ攫われたみんなが!」
「大丈夫、ミアちゃんは出来ることはやれている。それに今ミアちゃんが気張っても影響が与えれることは少ない。だったら、休める時に休んで、楽しめる時に楽しまなきゃね。力をたくわえて、その時に備えよう」
「力を蓄えて……」
ミアは少し言葉を反芻してからうなずく。
どうやらある程度自分の中で落とし込めたらしい。
よかったよかった。
「まあ難しいことは言ったけれど……自分でチームを組んで、自分で依頼を受けてみるのもいいと思うよ。その力は、もうミアちゃんにはあるから」
「はい!」
少なくとも今の時間は楽しもう。
そう思えたなら良かった。
宴会はまだ続く。私のお金で。
ふう。久々に4足になった。
解放された気分でニンゲンのいない沼地を駆けていく。
彼らとの関わり合いもきらいではないが本来の自分でもありたいのだ。
さて脳内でざっくりした方角は分かっている。
大地踏みしめしばらくは旅を楽しもう!
私はしばらくの間街道をそれて旅をした。
道中ついでに盗賊3拠点ほど潰しと未発見迷宮1を報告した。
時間がないのでざっくりだが迷宮勢力調査も調べてある。
出てくる魔物の傾向やおだやかな気候と転がれるような草花が続くなだらかな丘で出来た迷宮は深入りを避ければ初心者でも問題なさそうだ。
近くの町に方向しつつ進む。
どこもかしこもどうにも寂れた印象がある。
やはり商人が少なすぎるのか。
活気が薄い。税金が高い。
物価の割に税率が死ぬほど高いんだ。
1つの町だけじゃあなくその領地を抜けるまではずっとだった。
「ここが領地の境目か……」
というわけで来ました領地の境目。
まあ同国なのでなんもないんだけれど。
最終的に国の境目まで走る事となる。
ちなみに杭があってそれで境目がわかる……らしい。
杭の話は街道なんだよね。
ここは思いっきり森だからわからない。
もちろんただの領地境ごときに国境警備みたいなガチガチの警備もなければフリーパスである。




