八百八十三生目 強奪
大きく決定的な事件。
それは実力行使をするかのような動きを見せた時点で確定した。
ミルーカは叛逆狙いなのだと。
「ぼくは一瞬で追われる身へとなりました。ただ、ぼくの味方だとして放たれた面々は、前少しだけ知りあったことがある相手でした……ここの領主一族の、ミルドレクド家の部下でした。すれ違う瞬間のこちらにだけ向ける悍ましい笑顔でわかりましたよ。誰に嵌められたのかは……」
「だが、話を聞く限り、ミルドレクド家の者だけではやれない気がするけど……?」
「もちろん。これは複雑に糸がからみあい、互いの利益のためにと動いた結果のようです。王族の誰か、そして少なくとも全国政府の誰かも……」
「バカな!?」
バンが立ち上がり抗議の声を上げる。
確かにバンの立場からすると認めることは出来ない。
ただミルーカは落ち着きを変えない。
「そもそも……言ってしまえば、ミルドレクド家代行の者達は、そこまで力も賢さもありません。あくまで庶民と比較した時強いと言うだけで。バックに強力な補佐があり、そして立場も崩されず認められている理由がある。ただ国の政府ならば、王族に手を出せるほどの力はなく、
王族の手引きはあくまで危険でない範囲での引き込み。肝心なところをミルドレクド家代行が行うにしても、強力な補佐がいりますから。何もかもをもみ消すような」
「それは……」
「それに、ぼくが逃げ延びて勘当されたのをしり、裏で調べた情報でいくらか出てきました。もちろん、組織全てではなく、その中で立場を利用して、自分たちの権力を集めようとしているものたちですが」
「王子の追撃にあまり力を割かず、勘当だけにしたのはなぜなんでしょう?」
「やはり、ことが大事になるのを避けたのと……ぼくの親族を代わりに処刑にしたさいに、ぼくを捕らえられなかったからでしょう。向こうとしても、表立ってそう動けない」
戦いの時に叫んでいたやつか。
ミルーカの代わりにというやつか……
それでも捕まっていないあたりミルーカの立ち回りもうまいらしい。
ただそれは同時に後悔そのものでもあるだろう。
ミルーカは握りこぶしを音が鳴るほど力を込める。
「ミルドレクド家はたしかに、ただの尖兵かもしれません。それでも、彼らは重大なピースとして動いた。たとえ少しでも反撃して、亡くなったみんなのためにむくいたいと思うことの、どこがおかしいことでしょうか?」
「なるほど……それに男爵も感銘を受けて?」
「ええ、ぼくに協力してくれています。彼は、不正があるならば正されるべきだと」
ただその影で新たな不正の温床になっていたのだからままならないものだ。
それはミルーカも感じているのか話している間も顔向きはよくならない。
「……ま、過ぎたことは言ってても仕方ない。それよりか、気になるのはどんな裏側が潜んでいそうか、そして領主一族のミルドレクド家とどう対処するか、だ。全国政府の方はアタシが当たってみる」
「幸い、今ココには切れる手札と、力、それぞれが揃っているからね。弾圧に対して不正を訴えていくのはいいタイミングだろうね」
「そういえばぼくは詳しくは知らないのですが、あなたたちは……? それに、表の騒ぎって一体……?」
「ま、いいのか悪いのかわからんが……ミルーカ、アンタの最後の望み、もしかしたら叶うかもしれない」
バンは悪い笑みを浮かべていた。
しばらく話していたら続報が来た。
つまり調査が終わったのだ。
「これは……ひどいですね」
「ひどいね」
「嘘でしょ……」
「こんな相手に苦しめられていたのか……?」
調査報告によると完全に向こうがおバカだというのが示されていた。
確かにキレものもいるようだが前提として統率された組織ではないのだ。
領主として動くのに各々が利益を貪るように動いていてとても管理業務を果たしているとはいえない実態。
そして今回の件もさっさと動き出したのはともかく結果的にはまあいいかでまとまっているらしい。
冒険者ギルドが冒険者ギルドとしての動きをするとは思ってもみないらしい。
むしろ冒険者ギルドが実はかなり変わった力を持つ組織だというのを知らない可能性すらある。
つまり本当に冒険者ギルドという猛獣の爪が切られているものだと思われていたらしい。
当然いつでも使えるよう研ぎながらしまっておいただけである。
みんなが愕然とするのは当然だ。
「結局のところ、黒幕に操られていないチンピラって感じだね……これは黒幕もむしろかわいそうなくらいだ」
「全国政府でも王族でも、もし気づいたら大慌てだろうからね……」
つまり大局を見られて知識のあるものが不足している。
まあそりゃそうだろう。
知識あって大局見られるやつがいつまでも略奪領主の一族として居座っているはずもない。




