八百七十七生目 帰還
キルルが自分の尾に向かって首を傾ける。
「わかったわかった。ならば、私がサポートできるようにしておく。別にこのような雑兵程度、ミスしたところで何でもない」
「それに、キルルさんは忙しそうだった。だったら、代わりに私がやれたほうがいいもの」
「「ローズオーラさん……」」
にょろろとくねねのふたりはヘビの目。
見定めるように向けられた目に果たしてお眼鏡にかなうのか。
むしろ仕事を増やさなきゃ良いが。
やっていることは確かに高度だ。
試してみて分かった。
スキル処理じゃなきゃ難易度が高い。
ただ私も魔法系は色々出来る……
スキルを組み合わせ似た結果を再現することも。
「……彼の者は罪人、されど閉ざされるはこの地上にあらず。空へ浮かぶ牢獄に、帰るときだ」
『ガッ……!? こ、この力……!? まさか、冥界へ!? や、やめろ……! 違うだろ、これは! こんなのが相手なら、戦ってなんて……!』
「おや?」
「ほ〜?」
私の前にある空間から多数の棘が生えてくる。
それは結晶のように透き通っていて美しく。
同時に小さくも鋭い命を断つ形。
しかし断つのは命ではない。
「地上との繋がりを断ち、冥界へ閉じろ、"デスサイズ"!」
『ぎゃああああああぁぁぁ!!』
トゲたちは一斉にビュウロウの魂を貫く。
やがてズタズタになった魂は霧散し……
その霧は結界が解かれると一気に空へと吸い込まれていった。
この魔法は過去の神々による断罪魔法。
情報魂に力奪う烙印を一時的に刻める魔法であり……
同時にビーコンのような力も持つ。
情報が付与された魂は冥界に捕捉され引力のように引っ張られるらしい。
さてと。
キルルさんのほうを見たらキルルさんは落ち着いていたもののくねねとにょろろはヘビの顎をあんぐりしていた。
「まさか成功するとは……!? 私達のコンプライアンスとしては、失敗してくれたほうがむしろベターだったかもしれませんのに!?」
「へびめとしても信じられない出来事です! まさか、神の御業を単なる生物の術に落し込んだというのですか!? あわや大惨事、小人が投げた石が巨人を打ち倒すほどの大惨事!」
「完全ではないけれどね、あくまで神の力がいるから」
「今のは、とんでもない効率化だ……成功させたあげく、アレンジもおこなうとは」
キルルがぐいっと私の近くへと寄る。
今私は2足なので背が高いけれどそれでも近くに迫る顔。
なんだかにおいが良い。
「えっと?」
「なかなかどうして、少し興味がデてきたよ」
キルルはそのまま通り過ぎて身体から淡い輝きが溢れる。
分神を解除しようとしているのだ。
「これは考えることが増えましたねえ、まあへびめらは話すだけですが。話せば神々の間でも映えますからね。これで地上の神々にも大ウケしてますから」
「それについてはまさしく今更、キルル様たちと共にある身故の贅沢。つまりはロイヤリティーなのです。少しでも役に立つよう、われらは愚考をするだけです」
「ええ、ええ。必ずや少しでも良い案を提案できるように、矮小なる身に余る考えでもしましょう」
「まあ、へびめらの身体はキルル様に繋がってるから別に矮小な身というわけでもないんですけどね。なんなら月の神たち全員にマウント取れる立場ですね。ボッコボコにしなきゃ、いけないので」
「「ハハハハハ!!」」
「……なんか、済まないな」
「え、いえ……ああ消えちゃった」
にょろろとくねねの劇場じみた会話を謝罪したタイミングで消えてしまった。
ビュウロウの遺体は回収しておこう。
後で使えるかもというのと後でこういうのがいたという証明になる。
悪い言い方すると貴重な材料の塊だ。
他の魔物たちと違ってこういう機会でなければ手に入ることはないのだから。
さて……
「ローズさーん! 大丈夫ですかー!?」
「うん、大丈夫ー」
少し遠くからミアの呼ぶ声が聞こえた。
戦闘している間に砦から離れてしまっていたから追ってきてくれたようだ。
人質を救助して帰ろう。
「やっぱり、いませんでした……」
「そうだったんだ……残念だったね」
私達はその後地下室への入り口を見つけた。
隠し通路ごと吹き飛んだ現状では見つけるのはあまりに簡単。
やはり隠された地下に攫われた人質たちはいた。
そして肝心のガンザたち賊だが……
最後の方はもう乱戦だったらしい。
ガンザは囲まれてもみくちゃにされ得意の投げ戦法を使えず。
賊たちは多体1であっけなく捕縛された。
いまや全員お縄についた。
きっとこれから尋問だが果たしてまともな情報は出るのか。
ガンザの連れ去られる際の強い瞳が気になる。
あれはバックに面倒な強い組織が絡んでいるやつのする余裕だ。




