八百六十三生目 宣言
ぞろぞろと階段を歩いていたらミアが周りを見渡す。
そして目線をなぜかこっちにやってきた。
え? あ、はいどうぞ?
「あの!」
ミアが突如して声を上げたので全員の注目が集まる。
ミアはそれに対してびくりと体を震わせるがそれでも声は止めなかった。
「わたしは、ここの組織にさらわれかけ、そして助けられました」
みんなはミアの過去は殆ど知らない。
新人というデータだけだ。
そして今目の前の相手を打倒したとんでもない実績を得たうちのひとり。
だからこんな強い相手がさらわれたのだと……
そんな驚きが場に満ちた。
「わたしは、さっきの方がよくわかりません。ただ、それでも……さらわれた人は助けたいし、さらった罪を償ってほしい。罪は罪ですから。だからわたしは、戦います!」
たまたまだろうけれどまるで罪を憎んで人を憎まずだ。
逆に言えばニンゲンがヒーローだろうと罪は憎む。
その姿勢はミアをまさしく支えていた。
みんなの動揺が広がるのは手に取るようにわかる。
これほどまで気丈に足を踏み込む少女の姿は……
どこまでもこの中で異質にうつったかもしれない。
それでも。
「ま、ここまできたからな」
「直接謝らせてやるのが一番気持ちいいからな!」
「もう鬼でも蛇でも出てこいってんだ」
そういいつつ階段をのぼる3人組。
3人ともこの戦いで何かを得たのか……
こんな時にまっさきに帰りそうな姿勢がなりをひそめ気丈に立ち振る舞う。
それを見て次々と他の面々も上りだす。
手には獲物を。
目には覚悟を。
最後に残ったの意外にバンだった。
「……正直、男爵がいた時点でアタシたちの手に負えないと判断して、帰ってもいいほどだった。後発隊と合流するのは、きっとそれほど悪い手じゃない」
「でも、それでは……」
「ああ。敵がリスクを恐れて逃げ出したり人質を扱ったりしてくる可能性が高くなる。それでも、政治に巻き込まれるくらいなら、きっと帰った方がいい。そういう世界なんだ、こっち側は」
バンが暗に政治関係者だと今のでほのめかした。
しかしみんなに変な感じにというわけでもないし何かさぐりを入れるためにここへ来たというよりは……
守るために来たという感じがある。
だからこそ踏み出せない。
みんなを巻き込みたくないからか。
バンは強い……それが引けという声はとても強い。
ミアは私の方を見た。
「ローズさんは、どう考えますか?」
「私は見る立場だからどちらでも。ただいえるのは……自分がやらなきゃという背負い方はしないほうがいいかな、死んじゃうから。ただ、自分で選んだほうで後悔したほうが良いとは考えているよ」
私はミアに目線を送ってから……
バンに目線を送る。
バンは目を一瞬見開いた。
それから少しだけ考えてから。
足を踏み出す。
「わかったよ……このバンデラス、最後まで戦おう。みんなを守れる立場になるのなら、どちらにせよ戦わないといけないからね。その時に外から指を加えて見ているだけなのは、性に合わない」
「だはは、途中焦ったが、これならなんとかなりそうだな!」
「はぁ……良かった。さすがにバンに欠けられたらわどうすりゃいいかからんからなぁ」
がやがやと進んでいく面々。
ただバンや私やそれにミアも。
いまだまだ浮いた顔はできない。
感じる気配がまだ終わってないことを示している。
浮かれる気分にはなれないほどに強大な力が……
私達は砦内を進む。
先程までの激戦を思えばあまりに不気味な静寂。
やがて1つの扉にたどり着く。
たどり着いた先としてはここが唯一のところ。
そしてわざわざ大きな扉がつけられた場所だ。
「ああ……気をつけろよ、砦内にあるこういう場所は迎え撃つところだ。どんだけ罠が仕掛けられていてもおかしくない。向こう側からしかアクセス出来ない壁の向こうや高台がだいたいあって、中央のやつらを一方的になぶり殺せる。まあ、攻める側もそれを把握していて、たいていはここからどっちがしびれをきらすかの戦いになるが……」
「行きます!」
「話聞いてたミアちゃん?」
「さっきの男爵だって、死ぬほど強化もらっててスレスレだったんだ、絶対やばいって!」
ミアはゴズやウッズに止められてこちらを見て。
その目にはとめどめない強い力を感じた。
決意と……覚悟。
だからこそ二の句をみんな告げなくなった。
「罠ごと潰します。みなさん、至らないわたしを、手伝ってください!」
「……わあったよ! どうせもうローズさんの補助魔法がなきゃ、全員ココまで来れなかったんだ。最後まで付き合ってくれよ」
ゴズたちがこちらを見る。
まあ……そうだよね。
強化はただしかったが相手がそれ前提レベルで来るとはね。




