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その能力は無敵! ~けもっ娘異世界転生サバイバル~  作者: チル
狂った境界と踊る神々そして大きな賭け後編
1955/2401

八百六十二生目 男爵

 炎の竜巻対風を斬り裂く突撃刃。

 それはまるで風車に立ち向かう騎士を馬鹿にするかのようで。


「ふざけ……るな」


 ヨロイ騎士の加速勢いは炎の竜巻にぶつかってもまだある。

 それは中心にいる敵を討たんと唸っていて。

 ただ同時に(エフェクト)同士の鍔迫り合いでまるで進まず。


「ふざけるな……! こんな、こんなやつらに……!!」


 言葉は呪詛の元となる。

 単純に……そう単純に。

 騎士は自分が悪態をついていることを認識した時点で。


 目の前に広がる力の渦が自らではどうしようもないことを悟ってしまった。


「ぐ」


 立ち向かうには着ている鎧があまりに頼りないと悟ったから。


「う」


 そして剣は風を受けて重く。

 さらに燃えだしていて。

 自らが進む足の歩みが止められて。


「オオォォォォーー!!」


 地面に足がつかなくなった。

 上昇気流。巻き上げ。風圧。

 様々な要素があるがなによりも。


 ヨロイ騎士は間違いなく負けていた。

 炎の竜巻に巻き込まれ飲み込まれ。

 灼き尽くされて。


「……すごい」


「お、オレの炎があんなんなっちまった」


 バンやウッズが出来上がった炎の竜巻を見上げる。

 えげつない威力だ……砦全体がきしむ。

 やがて炎が燃やし尽くし消える。


 それと同時に重々しい響きと共に地面へ木の塊が落ちてくる。

 ちゃんと中身入りだ。


「はぁ、はぁ……た、倒せたんですよね」


「十分すぎるほどにな……まさかウッズの炎を剣に纏わせるとは思わなかったが」


「んー……息はしている。ギリギリ。ただ危険な状態ではある。つまりアタシたちの勝利だ!」


「「よっしゃああ!!」」


 喜びの声を上げたのはゴズやロッズ……だけではなかった。

 みんながぎょっとして声の方を見ると私と回復した面々。

 戻ってまいりました。


「あ、あんた、傷は」


「それよりも勝ったんだな! すげえよあんたら!」


「傷はもう治してくれた! この人すげえんだな!」


「え? でも死んだ人も……」


「ギリ息を吹き替えしたぜ! ほら、ちぎれた腕も!」


「あの……やっぱりあなたたちも、すごいとかいうレベルではなくて、聖職者様クラスだって思いますよね……? そもそも、異様に回復が早くて、同時にいくつもの……結界もオリジナルのものを自力でやっていましたし……神の御使いといっても過言では……」


「そもそも、治りはすぐしたんだけど、実はさっきまで結界内でずっと休んでいたんだよなあ。敵の賊たちが何をやっても弾かれてて、それを見物にするのはちょっと気分が良かった」


「死ぬほど治療痛があったけど、死なずに済んだから良かった」


「ローズさん……?」


 さっきまで戦っていたメンバーが全員こっちを見る。

 ひとり治療師っぽい冒険者の方がさっきからずっとつぶやきながら混乱しているが……

 まあともかくこういう時は。


「ごほん。おめでとう、やったね!」


 あんまり誤魔化せなかった。

 天井に空いた穴だけがみんなを公平に見ていた。







 焦げた鎧をバンが無遠慮に取り外す。

 ぶっちゃけこのままだと蒸し焼けで死ぬからだ。

 兜を外しその面をあらわにする。


「げっ」


「は?」


 いくつかその苦しむ顔を見て驚きの声を上げた。

 私からしたらただの髭面おじいさんなのだが……


「バルクバーケイズ男爵!?」


「えっ、あっ、あの有名な?」


「……ミアちゃん、誰のことがわかる?」


「いえ、わたしにも……」


 それとなくミアに聞いてみたがバルクバーケイズ男爵が誰かわからなかった。

 ただ明らかに動揺がみんなに走っている。

 聞いてない……そんな言葉が漏れ聞こえてきた


 バンがこちらに気づきそっと耳打ちする。


「……男爵は愛称で、立派なヒゲが人気の騎士なんだ。有名人で、数々の武勲以上に、民草向けに売りに出された騎士道物語は、バルクバーケイズ男爵をモデルにしたものが多いんだ。最近王都で見かけないとは聞いていたけれど、これは……」


「……えっ、それってまずくない?」


「だいぶマズイ。みんなのヒーローがなぜか賊になったあげく、アタシたちで討ち取っちゃった」


「ろ、ローズさん! 回復をお願いできますか!?」


 私は指示させるがまま拘束しつつ回復する。

 男爵は人気らしくみんなの士気が明らかに低迷した。

 とりあえず顔色が回復する程度には治る。


「後は自然に目を覚ますと思う」


「ふう……だいぶ聞きたいことが増えちゃった」


「オレたちがよ、本当の意味でちゃんと聞けるチャンスあるとしたら……」


 ゴズが何とは言わず天井に空いた穴の先を見つめる。

 その先に待ち受ける力。

 かの男爵が守っていた先。


「いく、か……」


 浮いた気分はどこへやら。

 もはや先への恐怖が勝っているようにもみえる。

 自分たちが何と戦っているのか彷徨いながら歩みだけは止まらず。

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