八百三十五生目 地味
結局半々は受け取らず2割だけ受け取ってくれることとなった。
なお架空の総額の2割。
つまり予定通りの金額に落ち着かせた。
額にして乗合馬車を乗り継ぎ飲み食いに困らず帰った時に多少元の生活に戻るための額程度はあった。
「結局悪党たちの逮捕のお金より多くもらっちゃった……」
言いくるめて確定させたため正気に戻ったときにはもう遅い。
袋の中でチャリチャリと音をたてていた。
「それでは、これでお別れですね」
「……! そう、ですね」
「乗合の時間は調べました? まだ少し時間があるので、まだ街を散策する時間はありますよ」
「その……さっきの詰所で話しながら考えていたことがあるんです」
ん? なんなんだろう。
かなりためらうように顔をうつむけ言い出せないようにしている。
はずがしがっているかのような。
「うん?」
「わたしも……わたしも連れて行ってはもらえないでしょうか!」
「ど、どうして?」
「ああそうだった! わたし、あれから考えたんです。やっぱり、わたしだけが帰ってしまうのは、想像できなくて……攫われたみんなのことが気になっているんです。どうか、わたしにも手伝わせてもらえませんか!」
「……もしかしたら、もっと見たくないもの見るかもしれないよ。それでも大丈夫?」
「は、はい! 盗られたものを取り返して、彼らに反省させたいんです! それに、こう言ってはなんですが、気になるんです。途中で色々と終わったので……龍脈のことも、に、全然知らないローズさんのことも」
「……なるほど」
まあだいぶ情報伏せちゃったからなあ。
私も途中でわからなくなるとなんとなく後味が悪いこと多い。
彼女のことなら私が守れるだろうし……よし。
「わかった。そこまで言うなら、私が連れて行くよ。その分、少しは手伝ってもらうけれど大丈夫?」
「もちろんです……! ありがとうございます!」
そうと決まれば早速行動だ。
夜までまだ時間がある。
やることを頭の中で素早く整理した。
「じゃあ、まずは冒険者ギルドへ行こう」
「……えっ!?」
ギルドの中に戻ってきた。
さっきのことやったばかりなので私の姿を見たらぎょっとしたニンゲン多数。
絡んできた3人組はいない。
「依頼もうこなしてきたんですね……正しく確認しますね」
「ありがとうございます。それとこの子なんですが……」
「冒険者登録しに来ました!」
ミアには冒険者登録をしてもらうこととした。
そのほうが動きやすい。
この後の色々もね。
「ええと何をすれば…………」
「ここを…………」
「農業ギルドには登録していて…………」
登録そのものはスムーズにいった。
他のギルドに登録していると割とスムーズにいくことが多い。
身分がはっきりしているからだ。
「はい、ではこれが冒険者証になります」
「やった! これでわたしも冒険者見習いですね!」
「はい、詳しい説明は……まあ大丈夫でしょうね」
私の方を見て微笑まれた。
……そうだそうだ。言わないと。
「ええ、それとなんですけれど、暇な低ランク冒険者を集めることはできますか?」
「え? ええ……なんとかなるかと。どうなさいました?」
「少しやりたいことがありまして。私が初心者講座を開こうかと」
「ええっ!? そ、そんな、それに対してお支払い出来る力はこちらには……!」
「大丈夫、私が自主的にやるだけです」
「ほ、本当ですか!?」
「ええ、ミアさんのオマケですから」
一方ミアは私と受付さんを見てキョロキョロウロウロしていた。
大丈夫大丈夫。
いいことしかないよ。
少ししたらだいぶニンゲンたちが集まってきた。
初心者って言ってた割には多いような……?
さっきの3人組もいる。
割と細かい最初のほうのやりとりや心得とか。
チンピラと冒険者の違いとか。
盗掘者と冒険者の違いとか。
まあようは倫理だの人権思考だのそういう話が多かったんだけれど。
そこはもはや前提なのだ。
武道ならぬ冒険道なのだ。
話がダレる前に身体を動かす。
各々武器を持つ前に行動の基本。
体力づくりの方法は教える程度にとどめる。
まああれこれ基本の動き方は教えつつも。
柔軟体操はしっかりこなしもらう。
みんなやはり身体が硬かったので柔軟のしがいがあった。
「こ、こんなの何の役にたつんだよぉ〜」
「さっきも言ったけれど、身体の柔らかさはそのまま、身体がどこまでどう動き、移動や攻めそして守り、もしものときに身体を痛めるかどうか、全部決まってくるからねー!」
彼らが大変そうになりつつ基本的な話をどんどんしていく。
繰り返し心得とか倫理とか冒険道を染み込ませていくのだ。
みんなかっこいい必殺技を教えてくれると思った? 残念! 地味な話だ!




