八百三十生目 偏在
冒険者ギルドを見つけた。
ここで申請しないと私は冒険者としての正式な活動を行うことができないのはいった通り。
賊に襲われ捕縛したのは賊自体がほとんどの場合どのニンゲンであれ反撃や襲撃そして殺害や緊急逮捕が許されているから。
村の救援時には代理で村長さんを通した。
特例処理ではあるが問題があるはずもない。
というわけでウキウキと訪問だ。
もちろんここも全部金属でできている。
中に入ればガラの悪そうな面々と受付が遠巻きでこちらを見る。
うーん雰囲気が悪い。
なんというかニンゲンたちまで寂れて錆びているというか。
「へぇ〜、良い姉ちゃんじゃねえか」
「知らねー顔だな。ここらで青毛の獣毛持ちは目立つだろうが……」
「田舎からの初心者なのか?」
「へへっ……」
昼間から飲んでいる者たちの声が聴こえてくる。
……ニンゲンのトランスは未だわかっていない部分が大きい。
個体差が大きいというか。
私みたいになっていくのもいるし耳やしっぽだけニンゲンから外れるものもいる。
そのまんまな風貌だったりちいさくなったり大きくなったりと多種多様。
もう少し形態固定されれば将来設計も楽なのに……という話は聞く。
国や街ごとに若干流行り廃りもあるしかなり特殊だ。
だから私でも溶け込めるわけだが……
実はニンゲンは一定の範囲から外れない。
1つ。2足2腕である。
翼が生えても背中や腰から。
必ず器用な腕と2つの足は残ったまま。
化ける事はスキルでできるがあくまで仮の姿だ。
もちろん失ったり元々なかったりはある。
さらに1つ。目は2つ。
3つ目はない。たとえあったとしてもスキルで生やすだけで一般的ではないのだ。
いきなり目がなくなることもない。障害持ちで〜〜というのは上記と同じくあるが。
そしてもう1つ。ニンゲン語が操れる。
どれだけトランスしても声帯がそんなに変わらない。
これは他の種族も似たようなもので私もホエハリ時代の言語を楽に扱えるのだ。
つまりいきなりトランスすることでニンゲンが「バウバウ」としか声を出せなくなることはない。
障害に関しては同上。
食性や子孫繁栄あたりもだいたいこの感じでトランスしてもニンゲンはニンゲンなのだ。
いきなりものすごい頭が悪くなってしまうこともない。
……つまり何が言いたいかと言えばトランスしても今ここにいる者たちはニンゲン。
いきなり金属や木の身体を持つ者たちはいないようだ。
それでも比喩表現で錆びついていると表現されてしまうが。
私の見た目が珍しいのは四方八方そりゃそうだよねと思いつつ歩みを進める。
似たような方にはあったことあるが額に目もないし言葉も問題ない。
そこらへんをうまく隠すのに私も慣れたものだ。
「こんにちは、海外から来たんですけれどこの国での登録良いですか?」
「こんにちは! 元の国での証と申請書はありますか?」
「はい」
アノニマルースでの冒険者ギルドで発行してもらった海外活動申請許可認定書と冒険者証を出した。
ちらりと見て受付の方が頭にはてなを浮かべるのが見てわかった。
「おや、完全に見たことがない文字……」
「ああ、翠の大地より外から来たんですよ」
「ええっ!? 流暢に喋りますねえ! 少々お待ち下さい」
まあ私のラーニング能力はスキルだからね……
受付さんが翻訳する機械に通すため裏に引っ込んでいった。
すると背後に動く気配。
私の方に来ているらしい。
振り返るとニヤニヤしているさっきのガラが悪そうな1グループが
来ていた。
3名だ。
「おいおいネーチャーン、どこから来たんだ? こんなところによう」
「へへへ……オレたちが案内してやろうか?」
「そんなに弱そうじゃあ、他で苦労してここに来たんだろ? なあに、ちょっとした授業料さえくれりゃあいいのさ、ゲヘヘ……」
どうしてもこういう輩はたくさんいる。
こんなところではねえ……
"無敵"圏発動。
普段はなんとなく私に漂わせているだけでほとんど効果のないけれどニンゲンたちに自分と敵ではないとするぐらいの効果はある状態。
それを濃密に広げる。
範囲は私から2メートルほど。
これで3人は範囲内に入った。
さて対処法はいくつかある。
その間にも彼らは私が逃げないよう取り囲んでいた。
ぶっちゃけ彼らが同じようなことを今後も繰り返すならば穏便な方法での対処は意味が薄い。
さすがに彼ら程度に腹が立つほどこちらも清いわけでもなしだが……
本物の初心者にむけてはよろしくない。
先を駆ける者に求められるのは……こういった若芽を摘む相手への対処だ。
「おい姉ちゃん、何も黙ってビビるこたなぁ――」
「では、少し手合わせ願えますか?」




