八百二十三生目 聴取
龍脈とは大地に巡るエネルギーの大きな流れだ。
星の血とも言える。
どのような端でさえも本来は龍脈の毛細血管の先みたいなところからにじみ出るエネルギーで端の細胞にも力が行き渡っている。
今は何らかの原因で龍脈の一部が機能していない。
ただそのかわり空の龍脈空洞が流れを維持しようと必要なものも全部奪っていっている。
それはまさしく植物が水を吸い上げたりする毛細管現象と同じだ。
この村を狙ったというわけでもないだろう。
近くをちゃんと見るに切り開かれたわけでもないのに木々が倒れ植物は地に還っている。
村人たちは良い素材が手に入ったぐらいで気にしていなかったようだけれど。
そんなことをミアさんに話していた。
「たいへんなことが起きていますね……」
「正直、権力者が絡んで来るとしたら厄介だなあって」
「えっ、権力を持った方が!? なぜ……」
「龍脈をいじるような大規模な魔法が元だとすると、やっぱり一般人よりも権力者がバックにいることが殆どで、理由は利権争いから龍脈の利用、それと一極集中させてニンゲンではとても使えない魔法儀式を再現したり、それと、まさしく畑や植物それにニンゲン自身を活性化させたりと、利用範囲は大きいからね……ただ、もちろんそうじゃない事故的な原因も考えられるけれど」
「あわわ……もしそうなら、もしバレたらわたしたちの命が危ない!?」
「そこまでいったら、さすがにミアや村の人達は守るよ……」
「……ローズさんは?」
「私は、まあ何とかなるんじゃないかな」
「ええっ!? そんな、自分を犠牲にするのは駄目ですよ!?」
ミアとやんややんや話しつつも作業はする。
なんだか勘違いされているっぽいけれど。
さて畑のほうが結果が出るのはあとだとしても。
実際のところ食い荒らされている畑にも来た。
壊された柵に木の根の通った穴ぼこだらけ。
踏み込んだ形跡はない……話のとおり遠隔からやったようだ。
つまりあっちの森の方に……
あったあった。食べ残したちだ。
「ふうむ、賢いのは本当みたい。草食か雑食。踏み込まないように気をつけているみたい」
「あ、それなんですけれど! 村の方たちが気になることを言っていました。魔物が出てから家の前に魔除けを置き出したと」
「魔除け? というと?」
私はミアに案内され実際に家の前にぶら下がっていたとあるものを案内された。
それはよく見ると屋根からぶらさがる1つのかざり。
各家にそれぞれ下がっている。
私はこの土地に初めて来たせいでこれが文化的なものなのかそれとも魔除け的なものなのか見分けがついていなかった。
「この魔除け、元はハンターの一家がみんなに教えていたそうなんです。魔物が来たときに、家を守ってくれる証なんですって。なにか役に立つ情報でしょうか……」
「このにおい……紋様……なるほど! ありがとうミアさん! これはすごい情報だよ」
「えっ、本当ですか!」
「ハンターが最後まで村を守ろうとしていた証だよ」
私はミアと共に森を移動しながら話す。
森と言ってもずいぶんと枯れているのは今見ると確かにそうだ。
山賊と戦っていたあたりと見比べてもひどい。
……あの魔除けは機能していた。
家のあたりという極小さな範囲だが私みたいに力でねじ伏せられなければ獣の多くは忌避するようなにおいと共に小さな精神作用を引き起こす。
私は精神攻撃耐性があるけれどそうでないならばすごく通るだろう。
効果はまさしく忌避。
なんだか嫌で近寄りがたいというものだ。
簡易な結界と言ってもいい。
賢い魔物だから遠巻きにしか攻めておかなかったわけだ。
「つまり、村がまもられているのは……!」
「うん、魔除けのおかげだったんだ。あの村は今後魔除けを増やしていけば、追加の災害は防げるはず。大手柄だったよミアさん」
「やったあ……! わたしでも、役に立てた……!」
「むしろミアさんは今回、色々被害者側だからここまでしなくていいのに……」
「少しでも役に立ちたいんです。わたしの村は、お話したとおりだと想いますから……」
「ああ……」
ミアの村はここと同じ寒村。
そこに鳥車を率いる武装集団山賊。
結果としてどうなったかは言うまでもない。
自衛団がいるようなサイズの村じゃないからあっという間にエサにされた。
もちろん巡回兵もいるのだがそんなに都合よく巡り合うこともない。
街へ行ったあと彼女はなんとかして村へ行くらしい。
結論がどうであれだ。
そして一緒に同じ鳥車に乗せられていたニンゲンは知らない誰かだったらしい。
村の者ではない。
彼女のことも気になっているが跡が追えず。
1つ1つ順にこなすしかない。
山賊風の男たちから話を聞き出すのは……まあなんとかなるんじゃない?




