八百二十生目 中抜
村の危機……まあそうだよね。
「食料の備蓄が底をつき、狩りの不足、畑の不作あたり……ですか? 山賊で困っている感じではなかったですし」
「おお、おお……そこまで見抜いておられましたか」
私達がこの村に来たときに山賊を見ても嫌そうな顔をするだけだった。
もし近辺を荒らし回っているやつらがいるのならもしかしてと喜色を見せるはずだものね。
それにこの貧しさ。
寒村と言っても限度がある。
単なる不足ならば援助とか補助とかそれこそ野に狩りへ行くのもありだ。
明らかに狩人がいないのがすごい問題だけれど。
誰も村から少し足を伸ばして山菜や木の実そして肉を得られないならばそれは大変なことだ。
この国の制度が詳しくわかってないけれど領主は何をしているのか。
……全区域こんなんで頭抱えているのかもしれない。
「冒険者への依頼、ということで良いでしょうか?」
「ええ……直接になってしまうのが心苦しいですが」
「まあそこは、村長さんが代理承認しておけば処理的には問題ないはずです。冒険者は依頼以外の推薦される行動もありますから、お咎めなしで済みます」
私が咎められるというより依頼者が咎められる。
私ぐらいになると自慢じゃないけどある程度は融通がきくしね。
それに村長さんはなんやかんや権力者だから冒険者ギルドの委任受託が出来る。
まあようは村長が依頼したものを村長が代わりに依頼発行し私が受託して村長が代わりに依頼受託承認できる。
複雑なように見えてギルドの受付代わりを村長が代理に出来るのだ。
後でギルドには報告すればオッケー。
本来これがもっとも使われるのは農業ギルドだ。
「おお、農業のときのようにやれば良いのですな……それなら」
「では、早速話を聞かせてもらえますか?」
食べざかりな面々は置いてきて私は村長と共に村長の家へもどる。
椅子に座って向かい合い話を聞くことに。
「実は、魔物が出ているのですじゃ」
「ハンターは在留していないのですよね?」
「狩人の家は、流行り病でな……」
「なるほど……お悔やみ申し上げます」
「いや、そこはもう、そこそこ前ですからの」
ハンターの家系が途絶えてしまっていたか。
こうなると農民では手も足も出ない。
さらにハンターの森や海の知識が途絶える。
そこはもう外部の助けが必要だ。
「それで、その魔物は最近ですか?」
「それが……非常にお恥ずかしい話なのですが、我らは侮っていたのです。随分前に出て、それなのに依頼をしなかったのです」
「ええっ!?」
「そもそも魔物と獣と家畜の区別もそこまでついていなかったのでしょう。今思うと、愚かだったとしか思えませんのう……まず、防護柵を立てて簡単に破られ、次に若者たちが組んで退治すると行ったっきり帰ってこず……被害だけ増して行くのに、出費だけ増えて行きました。プロに頼めばさらに出費がかさむ……そう思うと、とてもではないけれど、頼めませんでした」
「なるほど……それでも、農業ギルドと冒険者ギルドのコラボレーションで、だいぶサポートが入るはずなのですが。農村には出費を強いることは難しいですから」
「ふむう……そのようなことは確かに聞いたことが。しかし、あってないようなものでして、実態としてはほとんど我々が支払う額ですし、しかも我々が依頼を出しても受けてもらえるかはかなり不安定で……何年もほったらかしになったまま、潰れて村の話も昔聞きましたし、見ましたのう」
うーん?
私の知っている冒険者ギルドの感じではないぞ?
何かやっぱしているやつがいるな?
それともここの仕組がそうなっているのか……
ないわけではないが重税をかしてなんやかんや合法的に金を巻き上げる国もあるらしい。
ギルドがいかに強くても横暴に常に打ち勝てるかは別だ。
あと朱の大地みたいに横暴側になってしまってもだめだし。
それとやはり知識の断絶が痛いなあ。
知識がないから無謀さと迷信と対策の違いが見分けがつかなくなっている。
「とりあえず気になるところは多いですが……まずは依頼の話をしましょう」
「そうですのう……これは魔物よりも前からなのですが、不作が続いていましてのう。なぜかは分からないけれど、そこに現れたのは木獣と我々は呼んでいる魔物ですじゃ。身体が木でできた獣で、確かに獣のようなのですが、我々ではとても勝てないような相手ですじゃ……しかも頭も良い。罠を逆に仕掛けられることもあったのですじゃ」
「わかりました。まずは見つけ出してみます引き受けましょう」
村長がホッとしたような複雑な笑みを浮かべる。
まさしく懐を気にするような仕草だ。
これは誰に対しても幸せな結果を導きたいね……




