第72話
久々の投稿です。
長らくお待たせして、すみませんでした。
残業続きで帰宅が夜10時位だったので、書いている時間がありませんでした。
「お!それも美味しそうじゃないか!」
そういう声が聞こえてきた。
僕がその声のした方に顔を向けると、そこにはトレーを手に持って、目の前に立っている本間君の姿があった。
「うん!凄く美味しそうに感じたから、これにしたんだ」
僕はそう答えた。
「そうか、前に座っていいか?」
そう言ってきたので、
「いいよ」
そう返すと、本間君は僕の前の席に座ってきた。
「本間君は何を買ったの?」
席に座った本間君に、持っていたトレーを覚えて、僕が興味本位でそう訊ねると、
「俺はこれにしたんだ」
そう言って、持っていたトレーを少し前に出して、僕に見せる様にしてくれた。
そのトレーの上には、カツ丼が置かれていた。
「カツ丼?」
僕がそう訊ねると、
「ああ!洋風カツ丼だよ!」
本間君が笑顔でそう答えてきた。
そう!
本間君の持ってきたカツ丼は、普通のカツ丼とは違っていた。
丼に盛られている御飯の上には、カツが置かれている所までは同じなんだけど、その上には、更にトロミの付いたタレがかけられていたのだ。
このトロミのついたタレは、少し甘酸っぱい味に味付けされているのだ。
だから、普通に見かけるソースカツ丼や、卵とじカツ丼とは違った、変わった味わいを楽しむ事が出来るのだ。
これは、いま僕達が住んでいる永岡市のご当地グルメの1つなのだ。
「ねえ、それは永岡に帰ってからでも、食べられるわよ」
だから、僕はそう本間君にそう聞く事にした。
「ああ!けど、何か食べたくなったんだよな~」
本間君がそう答えてきた。
「ふ~ん・・・」
僕はそう返事を返した。
「所でさ~、中山のそれも美味しそうだよな」
本間君が、僕の鯛茶漬けを方に顔を近づけて、そんな事を言ってきた。
「良かったら、本間君も食べてみる?」
僕が本間君にそう聞いてみると、
「良いのか?」
本間君が明らかに顔を綻ばせながら、そう言ってきた。
「うん。その代わり、本間君のも食べさせてね」
僕が人差し指で本間君の持っている洋風カツ丼を指差しながら、そう言うと、
「ああ!もちろんだ!!」
本間君が笑顔でそう答えながら、テーブルに置いた洋風カツ丼をトレーに手を置くと、それを僕の方に押し出してきた。
僕は、それを迂回するようにして、鯛茶漬けの載ったトレーを本間君の方に押し出すと、本間君は嬉しそうにして、そのトレーを受け取っていた。
僕はそれを見た後、両手を合わせて、
「それじゃあ、いただきます!」
そう言ってから、置いていた箸を手に持つ。
「ああ!いただきます!」
本間君も僕に続いてそう言うと、箸に手が伸びる。
僕は早速、丼の上に載っているトンカツの1つを掴むと、それを口に運んだ。
口の中に入ったトンカツを噛みしめると、サクッとした衣の感触と、タレでしっとりとした衣の感触の両方が感じられた。
次に、上にかかっているタレの甘酸っぱい味が感じられた。
その甘酸っぱさを楽しむと直ぐに、カツの肉汁が口の中のタレと重なって、それが旨味とコクが追加されるのだ。
そのタレと肉汁の味を感じながら、肉を?み続けるのが、凄く幸せを感じてしまうよ。
そして、その肉を噛みながら、ご飯を口の中に入れて、一緒に頬張る。
それだけで、もう至福って感じだよ!
あとはもう、一生懸命に肉を噛んで、噛んで、飲み込むのも名残惜しい。
ジーーー・・・
僕はカツをもう1つ食べようと箸を伸ばすが、
「おい!それは食い過ぎだろ!」
本間君がそう言ってきたから、カツに伸ばしかけた箸を止める。
ちぇっ!
もう1個食べたかったな!
「ありがとう!美味しかったよ」
僕はそう言いながら、カツ丼の載っているトレーを返すように、本間君の方に移動させる。
「ああ!この鯛茶漬けも美味しいんだな!」
本間君がそう言いながら、鯛茶漬けの載っているトレーを僕の方に押し返してきた。
「うん。そうでしょ」
僕はそう言い返しながら、鯛茶漬けの載っているトレーを受け取る。
「さてと、・・・」
帰ってきたトレーに置いてあるスプーンを手に持ち、僕は再び鯛茶漬けと対面した。
量は少しばかり減ってしまっていたが、まだ十分な量が残っていた。
僕はスプーンをお茶碗に差し入れ、お茶漬けを掬いながら、それを持ち上げる。
まだ湯気をたてているそれを、僕は口の中に入れる。
その瞬間、僕の口の中には鯛の風味が充満する。
カツの暴力的な旨味と油の味も美味しかったけど、このあっさりとしていながらも、まったく物足りなさを感じさせない風味も良い!
「お前って、ホントに美味しそうに食べるよな~」
本間君が何処か呆れたような感じで僕にそう言ってくる。
「だって、本当に美味しいんだもん!」
僕は、そう言いながらもスプーンをお茶碗に入れ、2口目を食べる為に持ち上げる。
ジーーー・・・
・・・何だろう?
この見られているような感覚は?
「ねぇ、何か感じない?」
僕が本間君の方に顔を向けて、そう訊ねると、
「中山も視線を感じるか?」
本間君もそう訊ねてきたから、僕はそれに頷いて返す。
本間君が僕を見てきた。
だから、僕も本間君の顔を見返してみると、顔を引き攣らせながら汗を流しているのが見えた。
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
これって、まさか・・・
僕と本間君は、2人同時に視線の感じる方向にゆっくりと顔を向ける。
・・・居たよ。
そこには、予想していた人間の姿が確認する事が出来た。
つまり、売店からこのフードコートまでの間の位置で、吉川さんと広花ちゃんと三井田の姿が見えたのだ。
3人は、ニヤニヤとした顔で僕達の事を見ていたのだ。
「ちょっと!3人とも!何でこっちに来ないの?」
こっちの方をジロジロと見ていながら、僕達の方には近づいてきていない3人にそう話しかける。
そうすると、やっと3人とも僕達の方に歩いてくる。
「いや~!なんか、私達が入り込めない様な気が空気を感じたのよね~」
吉川さんが、笑顔でそんな事を言いだしていた。
「何を言っているんですか?」
そもそも僕と本間君の間で、そんな入り込めない様な空気なんか無いじゃないか。
「そうそう!私達の知らない間に、本間さんとそんな仲になったんですか?」
広花ちゃんまでが、そんな事を言いだしてきた。
「そんな仲って何?」
そう聞いてみると、
「またまた~!2人で仲良く間接・・・ムフフ!」
三井田までがそんな事を言いだしてきたから、殺気のこもった視線を送る。
「英奈さんも、ちゃんと間接キスする所を見ていたんだから、そんなに恍けなくても良いのに~!」
そんな事を言い出した広花ちゃんに同調する様に、
「そうそう!でも、まさかそんな仲になっていたなんて思っていなかったなぁ~」
吉川さんも変な事を言い出してきたよ。
「2人とも!何を言っているんですか!私達はそんな事をしていないですよ!」
僕がそう言い返すが、
「まぁまぁ!そうゆう事にしててあげるわよ」
「まったく!素直じゃないんですから」
吉川さんと広花ちゃんがそんな事を言っていた。
これって、僕の言う事を信じていないよね。
「本間君!本間君からも何か言ってよ!」
僕は本間君の方に振り向いて、そう言ったら、
「そうだぞ!俺達はただお互いの料理を味見していただけなんだぞ!」
本間君もそう言って、援護してくれたんだけど、
「ほらほら~!困ったら本間君に頼ろうとしているわよ」
「仲が良いですよね~」
吉川さんと広花ちゃんは、またそんな事を言い始めていた。




