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霊器の想起  作者: 甘酒
73/74

第72話

久々の投稿です。

長らくお待たせして、すみませんでした。

残業続きで帰宅が夜10時位だったので、書いている時間がありませんでした。



「お!それも美味しそうじゃないか!」

 そういう声が聞こえてきた。


 僕がその声のした方に顔を向けると、そこにはトレーを手に持って、目の前に立っている本間君の姿があった。


「うん!凄く美味しそうに感じたから、これにしたんだ」

 僕はそう答えた。

「そうか、ここに座っていいか?」

 そう言ってきたので、

「いいよ」

 そう返すと、本間君は僕の前の席に座ってきた。


「本間君は何を買ったの?」

 席に座った本間君に、持っていたトレーを覚えて、僕が興味本位でそう訊ねると、

「俺はこれにしたんだ」


 そう言って、持っていたトレーを少し前に出して、僕に見せる様にしてくれた。

 そのトレーの上には、カツ丼が置かれていた。

「カツ丼?」

 僕がそう訊ねると、

「ああ!洋風カツ丼だよ!」

 本間君が笑顔でそう答えてきた。


 そう!

 本間君の持ってきたカツ丼は、普通のカツ丼とは違っていた。

 丼に盛られている御飯の上には、カツが置かれている所までは同じなんだけど、その上には、更にトロミの付いたタレがかけられていたのだ。


 このトロミのついたタレは、少し甘酸っぱい味に味付けされているのだ。

 だから、普通に見かけるソースカツ丼や、卵とじカツ丼とは違った、変わった味わいを楽しむ事が出来るのだ。


 これは、いま僕達が住んでいる永岡市のご当地グルメの1つなのだ。

「ねえ、それは永岡に帰ってからでも、食べられるわよ」

 だから、僕はそう本間君にそう聞く事にした。


「ああ!けど、何か食べたくなったんだよな~」

 本間君がそう答えてきた。

「ふ~ん・・・」

 僕はそう返事を返した。


「所でさ~、中山のそれも美味しそうだよな」

 本間君が、僕の鯛茶漬けを方に顔を近づけて、そんな事を言ってきた。


「良かったら、本間君も食べてみる?」

 僕が本間君にそう聞いてみると、

「良いのか?」

 本間君が明らかに顔を綻ばせながら、そう言ってきた。


「うん。その代わり、本間君のも食べさせてね」

 僕が人差し指で本間君の持っている洋風カツ丼を指差しながら、そう言うと、

「ああ!もちろんだ!!」

 本間君が笑顔でそう答えながら、テーブルに置いた洋風カツ丼をトレーに手を置くと、それを僕の方に押し出してきた。

 僕は、それを迂回するようにして、鯛茶漬けの載ったトレーを本間君の方に押し出すと、本間君は嬉しそうにして、そのトレーを受け取っていた。


 僕はそれを見た後、両手を合わせて、

「それじゃあ、いただきます!」

 そう言ってから、置いていた箸を手に持つ。


「ああ!いただきます!」

 本間君も僕に続いてそう言うと、箸に手が伸びる。


 僕は早速、丼の上に載っているトンカツの1つを掴むと、それを口に運んだ。

 口の中に入ったトンカツを噛みしめると、サクッとした衣の感触と、タレでしっとりとした衣の感触の両方が感じられた。


 次に、上にかかっているタレの甘酸っぱい味が感じられた。

 その甘酸っぱさを楽しむと直ぐに、カツの肉汁が口の中のタレと重なって、それが旨味とコクが追加されるのだ。


 そのタレと肉汁の味を感じながら、肉を?み続けるのが、凄く幸せを感じてしまうよ。

 そして、その肉を噛みながら、ご飯を口の中に入れて、一緒に頬張る。


 それだけで、もう至福って感じだよ!


 あとはもう、一生懸命に肉を噛んで、噛んで、飲み込むのも名残惜しい。



ジーーー・・・



 僕はカツをもう1つ食べようと箸を伸ばすが、

「おい!それは食い過ぎだろ!」

 本間君がそう言ってきたから、カツに伸ばしかけた箸を止める。

 ちぇっ!

 もう1個食べたかったな!


「ありがとう!美味しかったよ」

 僕はそう言いながら、カツ丼の載っているトレーを返すように、本間君の方に移動させる。

「ああ!この鯛茶漬けも美味しいんだな!」

 本間君がそう言いながら、鯛茶漬けの載っているトレーを僕の方に押し返してきた。

「うん。そうでしょ」

 僕はそう言い返しながら、鯛茶漬けの載っているトレーを受け取る。


「さてと、・・・」

 帰ってきたトレーに置いてあるスプーンを手に持ち、僕は再び鯛茶漬けと対面した。

 量は少しばかり減ってしまっていたが、まだ十分な量が残っていた。


 僕はスプーンをお茶碗に差し入れ、お茶漬けを掬いながら、それを持ち上げる。

 まだ湯気をたてているそれを、僕は口の中に入れる。


 その瞬間、僕の口の中には鯛の風味が充満する。

 カツの暴力的な旨味と油の味も美味しかったけど、このあっさりとしていながらも、まったく物足りなさを感じさせない風味も良い!


「お前って、ホントに美味しそうに食べるよな~」

 本間君が何処か呆れたような感じで僕にそう言ってくる。

「だって、本当に美味しいんだもん!」

 僕は、そう言いながらもスプーンをお茶碗に入れ、2口目を食べる為に持ち上げる。



ジーーー・・・



 ・・・何だろう?

 この見られているような感覚は?


「ねぇ、何か感じない?」

 僕が本間君の方に顔を向けて、そう訊ねると、

「中山も視線を感じるか?」

 本間君もそう訊ねてきたから、僕はそれに頷いて返す。


 本間君が僕を見てきた。

 だから、僕も本間君の顔を見返してみると、顔を引き攣らせながら汗を流しているのが見えた。


 ・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・


 これって、まさか・・・


 僕と本間君は、2人同時に視線の感じる方向にゆっくりと顔を向ける。

 ・・・居たよ。

 そこには、予想していた人間の姿が確認する事が出来た。

 つまり、売店からこのフードコートまでの間の位置で、吉川さんと広花ちゃんと三井田の姿が見えたのだ。


 3人は、ニヤニヤとした顔で僕達の事を見ていたのだ。

「ちょっと!3人とも!何でこっちに来ないの?」

 こっちの方をジロジロと見ていながら、僕達の方には近づいてきていない3人にそう話しかける。

 そうすると、やっと3人とも僕達の方に歩いてくる。


「いや~!なんか、私達が入り込めない様な気が空気を感じたのよね~」

 吉川さんが、笑顔でそんな事を言いだしていた。


「何を言っているんですか?」

 そもそも僕と本間君の間で、そんな入り込めない様な空気なんか無いじゃないか。


「そうそう!私達の知らない間に、本間さんとそんな仲になったんですか?」

 広花ちゃんまでが、そんな事を言いだしてきた。


「そんな仲って何?」

 そう聞いてみると、


「またまた~!2人で仲良く間接・・・ムフフ!」

 三井田までがそんな事を言いだしてきたから、殺気のこもった視線を送る。


「英奈さんも、ちゃんと間接キスする所を見ていたんだから、そんなにとぼけなくても良いのに~!」

 そんな事を言い出した広花ちゃんに同調する様に、


「そうそう!でも、まさかそんな仲になっていたなんて思っていなかったなぁ~」

 吉川さんも変な事を言い出してきたよ。


「2人とも!何を言っているんですか!私達はそんな事をしていないですよ!」

 僕がそう言い返すが、


「まぁまぁ!そうゆう事にしててあげるわよ」

「まったく!素直じゃないんですから」

 吉川さんと広花ちゃんがそんな事を言っていた。

 これって、僕の言う事を信じていないよね。


「本間君!本間君からも何か言ってよ!」

 僕は本間君の方に振り向いて、そう言ったら、


「そうだぞ!俺達はただお互いの料理を味見していただけなんだぞ!」

 本間君もそう言って、援護してくれたんだけど、


「ほらほら~!困ったら本間君に頼ろうとしているわよ」

「仲が良いですよね~」

 吉川さんと広花ちゃんは、またそんな事を言い始めていた。



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