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霊器の想起  作者: 甘酒
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第70話

なかなか筆が進まないです。

 ・・・疲れた。


 吉川さんや広花ちゃんと大浴場に入っていたが僕は、上がってからロビーに移動してきた。

 そして、ロビーの待合スペースに備え付けられているソファーに腰掛けて、思いっきり脱力していた。


 そんな声が聞こえたから、僕は目を開けて、声の聞こえてきた方に顔を向ける。

 そこには、直ぐ近くに本間君と三井田の2人が並んで、僕の事を見ていた。


「ああ!2人共どうしたの?」

 僕がそう訊ねると、

「いや、風呂から上がって歩いていただけなんだけど・・・」

 本間君がそう答えてくれた。


「そうなんだ」

 僕がそう言うと、

「ああ!それよりも、お前は何だか疲れていないか?」

 本間君がそう聞いてきた。


「うん。吉川さん達とお風呂に入っていて、ちょっとね・・・」

 僕がそう言って、少し中身を濁そうと思っていたら、


「ふ~ん、つまり、女の子達とお風呂に入っていて、キャッキャッウフフ!な事をしていたんだな。それで疲れるなんて羨ましいよな~」

 三井田がそんな事を言ってきた。

「・・・三井田~」

 僕が少し目を細める様にして、三井田を睨むと、


「何だよ?違うのか?」

 三井田は僕の睨んだ瞳に怯んだ様子も見せずに、そう返してきた。

「中山、どうなんだ?」

 本間君まで、そう聞いてきた。


「まぁ、確かに傍目はためには三井田が言っていた感じの様だったかもしれないけどね・・・」

 僕がそう返すと、


「ほら!やっぱり!中山はイイ思いをしているじゃないか!」

 三井田が何故かドヤ顔でそんな事を言ってきた。


「・・・ただ、その時に食われる!?とか、ヤらなければヤられる!?とかの恐怖心に襲われなければ、まだ良かったんだけどね」

 そう付け加えると、


「「え?」」

 本間君と三井田の2人は、声をハモらせて聞き返してきた。

 そして、2人揃って、目を丸くしている。


 ・・・まぁ、そうだろうね。

 普通、そんな言葉を聞くとは思わないだろうしね。


「な、中山は何を言っているんだよ」

 最初に気を取り直した三井田が、僕にそんな事を言ってきた。


「そうだぞ!何で風呂に入っているだけで、そんな恐怖を感じる事態になるんだよ」

 本間君まで、そんな事を言ってきた。


「まぁ、そう言いたい気持ちは分かるんだけどね、でも、ホントだから」

 本間君と三井田の2人の言葉を否定する様に、僕がそう言うと、今度は2人揃って動きを止めたよ。

 それから何秒か経ったら、何故か2人揃って顔から汗が流れてきたよ。


 何だか、2人のリアクションを見ているのが楽しくなってきた。


「・・・ま、またまた~!そう言って俺達を騙そうとしているんだろう?」

 三井田が顔を引き攣らせながら、尚もそう聞いてくるから、

「そうだったら、私も楽だったんだけどね~・・・」

 僕は、つい溜息をつきながら、そう返答してしまったよ。

 そうすると、何故か2人の額には冷や汗が流れ始めていた。


「ほ、ホントに、そんな感じなのか?」

 三井田がさっきまでの楽しそうな雰囲気とは違い、真剣に僕の方を見ながら、訊ねてきた。

 だから、僕はしっかりと頷くと、


「お前も大変なんだな・・・」

 本間君がそう僕に言ってきた。

 何でだろう?

 本間君の僕を見る目が、凄く同情的な、可哀そうなものを見るものに変わっている気がする。




「あら!こんな所に居たのね!」

 そんな声が聞こえてきたから、声のした方に顔を向けると、そこには広花ちゃんを連れてきた吉川さんの姿が見えた。


「よ、よ、吉川さん!」

 吉川さんの姿を確認した僕は、つい声が上ずってしまった。


 吉川さんは、驚きのあまりに動きの止まっている僕の方に歩み寄ってきた。

「さあ~!つ~かまえた!」

 そして、吉川さんは僕の腕を捕まえて、まるで音符が付きそうなテンポでそう言ってきた。


「捕まえたって、何かあったのか?」

 本間君が不審そうな顔になりながら、吉川さんにそう訊ねてきた。


「英奈ちゃんってね、お風呂の途中でいきなり大浴場から逃げ出したのよ」

 吉川さんは本間君の方に顔だけを向けながら、そう答えていた。

「だからって、何で捕まえるんだ?」

 本間君は更にそう問うと、

「英奈ちゃんは身体は洗ったけど、埃に塗れた髪の毛をまだ洗っていないのよ」

 吉川さんがそう答えると、本間君が僕の方に顔を向けて、


「そうなのか?」

 そう聞いてきた。


 だから僕は、観念したように頷く。


 そうすると、本間君は大きく溜息を吐き、僕に言ってきた。

「中山。諦めて、もう一回風呂に入ってこい!」


 それって、僕に吉川さん達のオモチャになれって事なの?


「そんな泣きそうな顔をしても、洗ってこなかったお前が悪いんだぞ」

 本間君がそう言い放ってきた。


 僕は三井田の方にも顔を向けて、助けを求めようとしたら、

「ちゃんと洗って綺麗にしてこいよ」

 三井田は、そう言ってきた。

 三井田の言っている事は普通の事なんだけど、面白いものを見る様に、ニヤニヤしながら言っているのが、何か腹が立つ。


「さ~!2人もそう言っているし、早くお風呂に入りに行きましょう!」

 吉川さんがそう言いながら、僕の腕を引っ張って立ち上がらせてきた。


「ま、待って!」

 僕は慌てて、吉川さんにそう言ってみたんだけど、

「待たない!」

 吉川さんは笑顔でそう答えてきた。


「2人とも助けて!」

 僕は本間君と三井田の2人にそう言ったけど、

「中山、諦めろよ」

 三井田がそう言い、本間君は静かに首を横に振っていた。


「ちょ、ちょっと!待って!!」

 もう役に立たない男性陣には目もくれず、吉川さんにそう言うんだけど、

「待たない!」

 そう返されて、そのまま引き摺られてしまった。


 そして、本日2度目の入浴をする事になった。




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