第67話
残業続きで小説を書く時間が作れません。
その為に、もしかしたら来週は投稿できないかもしれません。
「なるほどね」
少し離れている所にいた吉川さんがそう言ってきた。
「吉川さん?」
僕は、そう言葉を発した吉川さんの方に顔を向けた。
「うん。今回、他のチームじゃなくて、私達にここに行くように指示を出した理由が分かったわ」
吉川さんが1人で納得したように、頷きながら、そう言ってきた。
「どうゆう事ですか?」
僕はあらためて、そう聞くと、
「つまり、霊器だけでは、この結界を破る事が出来ないって事でしょ?だから、それ以外の要素を投入して対処しようって事なんでしょうね!」
吉川さんが僕の方に顔を向けながら、そう答えてきた。
「でも、それ以外の要素って、何ですか?」
僕が吉川さんにそう訊ねると、
「ああ!そうゆう事か!」
僕の隣で本間君が素っ頓狂な声を上げてきた。
「そうゆう事って?」
僕は本間君の方に顔を向けて訊ねると、
「つまり、霊器以外の力を使ってみようって事だろ」
と、答えてくれた。
「以外の力って?」
僕がそう聞くと、
「英奈ちゃん!英奈ちゃん!」
吉川さんが呼びかけてくるから、そっちの方に顔を向けると、
人差し指で、一生懸命に自分自身を指している吉川さんの姿が有った。
「吉川さん?・・・あ!?」
最初は気付かなかったけど、吉川さんの顔を見ている内に気付いてしまった。
そうだよ!
あったよ!!
霊器の攻撃以外の手段を持っている人がいたじゃないか!!!
「分かった!吉川さんの鳴弦之儀ですね?」
僕がそう聞くと、
「そうよ!」
吉川さんが嬉しそうに笑顔を浮かべながら、そう答えてきた。
「それじゃあ!吉川さんが鳴弦之儀を行なえば、この結界を破壊して、元に戻す事が出来るんですか?」
僕が吉川さんにそう訊ねると、
「そう上手くいくのか?」
本間君がそんな疑問を言ってきた。
「え?どうゆう事?」
僕が本間君にそう聞くと、
「俺達が霊器で攻撃しても駄目だったんだから、鳴弦だけで、そんな簡単にいくのか分からないじゃないか!」
そう答えてきた。
「そうね。言われて見れば、そうかもしれないわね」
吉川さんが本間君の言葉に頷いて、そう言ってきた。
「それなら、どうしますか?」
僕がそう問いかけると、
「それなら、私の出番ですよね!」
その声に振り向くと、広花ちゃんが大きな胸を張って、仁王立ちで立っていた。
「広花ちゃん?」
「まあ、そうだな」
僕が言葉を発する前に、本間君がそう言ってきた。
「え?」
僕が疑問に思い、そんな声を出してしまうと、
「考えてみるとそうだろ?俺達の中で攻撃力が一番デカいのは山岸なんだから、一番、突破力がある筈だしな」
本間君がそう説明してくれた。
「それはそうなのかもしれないけど・・・」
僕がそこまで言うけど、
「まぁ、あんまり話ばかりしていても、時間ばかり過ぎてしまうから、とっとと始めましょう」
吉川さんが僕達の話を打ち切るように、そう言ってきた。
「あ、はい・・・」
僕は何となく、話し足りないような気がしたけど、時間ばかりが過ぎていくと言う意見には納得できるから、そう返事をする。
吉川さんは、御堂の中心部近く、逆五芒星の正面に歩いていき、逆五芒星に相対するようにして立ち、軽く目を閉じ、深呼吸を繰り返した。
そして、目を開くと、そこには普段の表情豊かな顔とは違う、いっそ無表情と呼べそうな程、意識を集中させている吉川さんの顔だった。
吉川さんは、姿勢を正すと、肩幅の位置に足を広げる。
ただそれだけで、吉川さんはまるで地面から伸びた棒に括りつけられたかの様に、安定した感じを見せる。
それから、左手に持っていた弓を、まるで掲げるかの様に持ち上げる。
そして、右手の指が弦を掴み、ゆっくりと引いていく。
弦がキリキリと音が鳴ってくる。
そうして、ようやく弦が指から解き放たれる。
ビィーーーーーーン!
吉川さんの弓から弦の音が御堂全体に鳴り響く。
位牌で作られた結界の方を見ると、中にある黒いモヤには何も変化は発生してはいないようだ。
吉川さんは、もう一度弦に指をかけ、引き絞るとそれを弾く。
ビィーーーーーーン!
更に続けて、弦を弾く。
御堂の中を、吉川さんの弦の音が3度鳴り響く。
「あ!」
広花ちゃんがそう声を上げたのが聞こえた。
もちろん僕達も、広花ちゃんが声を上げた原因を、この目で確認する事が出来た。
結界の中にあるモヤに変化が起きたのを見る事が出来たのだ。
それは、結界内にあるモヤが、まるで息を吹きかけられたロウソクの火が揺らめくかのように、揺れ動いたのだ。
今まで、僕達が攻撃した時はモヤが集中してきて、僕達を排除しようとしてきたが、それ以外には殆ど変化を起こしていなかったモヤが、それ以外の変化を起こしてきたのだ。
「やった!効果があった!」
僕が喜んで、そう声を上げると、
「そうだな!」
本間君はそう答えながらも、真剣な表情で結界の中を見続けていた。
吉川さんは、そんな僕の声など聞こえないかのように、いまだに弓を構えて、弦を弾いていた。
本間君は、そんな吉川さんを止めるでもなく、真剣な顔で位牌とそれが形成している結界を睨むかのようにして、見続けている。
「山岸!合図したら、すぐに攻撃できるように構えていろ!」
本間君が鋭い声でそう言ってきた。
「あ、はい!」
広花ちゃんは本間君の言葉に慌てて、手に持っていた斧を右肩に担ぐような感じに持ち上げる。
それからも、吉川さんが弦を弾き続けていると、徐々に、徐々にとモヤの色が薄くなっていった。
そうしていると、変化が発生した。
色の薄くなっていたモヤが、基点となっている位牌に集中しようと動き出してきた。
つまり、一番前方にある、目の前にある位牌からモヤが拡散しようとしていたのだ。
その時だった。
「山岸!今だ!!」
本間君が鋭い声を響くように発した。
「はい!」
広花ちゃんは、一声そう答えると、肩に担ぐように持っていた斧を勢いよく振り下ろした。




