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霊器の想起  作者: 甘酒
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第48話

 本間君と三井田が、飛んだ煮汁に触れてしまったので、急いで水道の所まで連れて行く。

 それから、蛇口を回して水を出して、本間君と三井田の2人には煮汁の触れてしまった額を冷やす為に冷水で顔を洗ってもらった。

 そうしたら、新しく出したタオルを冷水で冷やし、2人には5分くらい火傷をした箇所に濡れタオルを押さえていてもらっている。


「ごめんね。火傷なんかさせてしまって・・・」

 僕はぬるくなってしまったタオルを冷水で冷やし直し、それを本間君に返しながら、そう謝っておく。


「いや。これくらい、大した事じゃないから、別に良いけど・・・」

 タオルを受け取った本間君は、それを額に当て直しながら、そう答えていた。


「中山~。俺には何か言う事はないのか?」

 三井田が温くなったタオルを差し出してきながら、そう言ってきた。

「三井田は、もう少しデリカシーを持ってね!」

 差し出してきたタオルを冷水で冷やし直しながら、僕はそう答える。

「本間君と俺への対応が違い過ぎるぞ!」

 三井田が何か苦情を言ってきたけど、

「自業自得でしょ!」

 僕は冷やしたタオルを三井田の額に押し付けながら、言い返す。


「それにしても、甲斐甲斐しいよな~」

 三井田が感心したような声でそんな事を言ってきた。

「そう?」

 僕は、つい首を傾けてしまう。

「そうだよ」

 三井田はそんな事を言ってきた。


 僕は救急箱から軟膏の入った容器を取り出し、その蓋を開ける。

「そろそろ冷やすのはいいかな?これを塗るから、ちょっとタオルを除けて」

 そう言うと、本間君は額を押さえていたタオルを離す。

「うん、これなら跡は残らないんじゃないかな?」

 そう言いながら、痛く感じないように、本間君の額に軟膏を塗っていく。


「何か旦那様に尽くす新妻みたいだよな~」

 三井田がそんな事を呟いていた。


 新妻?

 誰が?

 ・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・

 何か恥ずかしくなってきた。


「いきなり何を言っているの!」

 何をバカな事を言っているんだか・・・。

 顔が熱くなってきたじゃないか!


「いやいやいや~!ホントにそう見えるって!」

 三井田が僕の言葉に、そう答えてくる。

「一度、目医者に行って来たら?」

 三井田を睨みながら、そう言ったんだけど、

「大丈夫だ!俺の視力は両目とも1.5だから」

 そう返してきた。

「なら、寝惚けているんじゃない?」

「生憎と、怪我をしたおかげで、睡眠はバッチリ取ってあるんだよ」


「それにしても、そんなに甲斐甲斐しいと・・・」

 三井田がそんな思わせぶりな言い方をしてきた。

「・・・何?」

 僕は思わず、聞き返してしまった。

「いやいや!そうか~!そうなんだ~!」

 また、そんな言葉を繰り返してきたよ。

「だから何?」

「いやいや~!中山って、そうなんだ~!」

 ・・・また何か、良からぬ事でも考えているの?


「それで、いつからだ?」

 三井田が意味不明な事を言ってきた。

「何が?」

 だから、そう返した。

「だから、甲斐甲斐しくしようと思った原因は、だよ!」

「言っている意味が分からないよ!」

 ここは、相手にしないようにしよう。


「本間君の居る此処でそれをハッキリ言っても良いのか?」

 尚もそう言ってくるよ。


「ならハッキリと聞くけど、何時からお慕いしだしたのかな?」

 そう言って、三井田がニヤニヤと笑っていた。


 ・・・成程、バカは死ななきゃ治らないって言われているけど、ホントなんだな!

 よし!ころしてやろう!!


 僕は、ユラリと立ち上がり、三井田に近寄ろうとした。

「中山、ちょっと待て!お前、何をしようとしているんだ?」

 殺気に気付いた本間君が、僕の両腕ごと、腰をガシッ!と押さえつけてきた。


「本間君!離して!コイツ殺せない!」

「殺しちゃ駄目だろ!!」

 僕の叫びを、本間君は律義に答えていた。

「離して!」

 僕は身体を捩じりながら、叫ぶ!

「離さない!」

 本間君も負けじと叫んでいる。

 その時だった。



「何だか騒がしいけど、何か有っ・・・」

 吉川さんが、部屋を覗きながら、声をかけている途中で動きが止まっていた。

「きゃ~~~!」

 その横で、広花ちゃんが手を口に近づけながら、悲鳴を上げていた。

 その悲鳴で僕達は動きが止まってしまった。


「本間さんってば、英奈さんの腰に腕を回すなんて、なんて大胆なの~!」

 広花ちゃんが、何か嬉しそうに、そんな事を言い出してきた。

「ち、ちがっ・・・」

 本間君が、慌てて否定の言葉を言っていた。

「英奈ちゃんも、頬を染めて、満更じゃないみたい」

 吉川さんも笑顔でそんな事を言っていた。

「ち、違います!」

 僕は赤い顔のまま、否定の声を上げた。


「そうやって、2人揃って否定する所がアヤシイ!」

「ですよね~!」

 吉川さんと広花ちゃんが意気投合しながら、笑顔でいる。

「「違います!」」

 僕と本間君は否定しようとする。

「ほら、息が合っている♪」

「ですよね~♪」

 吉川さんと広花ちゃんは、人の話を聞いてくれないよ・・・。


「やっぱり、チャイナドレスが効いたのかしら?」

「きっと、そうですよ!」

 2人はなおも話を続けるつもりのようだ。

「と言う事はやっぱり!」

「きっと、スリットから見えた生脚に、さしもの本間さんもタガが外れて、抱きついたんじゃないですか?」

「しかも、抱きついたまま、お前を離さない!って叫ぶんだから、聞いていた私達の方まで顔が赤くなっちゃいそうよね~」

「ですよね~!」

 吉川さんと広花ちゃんは、キャーキャー言いながらの話が止まらないよ。


「ちょっと待て!俺はそんな事を言っていないぞ!」

 聞き捨てならなかったのか、本間君が話に割り込んできた。

 僕も、本間君の言葉に同調するように、首を上下させる。

「言っていたじゃない!」

「言っていましたよ!」

 吉川さんと広花ちゃんが言い返していた。

「だから、そんな意味で言ったんじゃ・・・」

「往生際が悪いわよ!」

 本間君の反論を全部言い終わる前に、言い返してきた。

「そうですよ!そんなの男らしく無いですよ!」

 広花ちゃんまで、吉川さんに加勢してきたよ。


 その後も、色々と反論をしてみたのだが、女性2人に言葉で敵う訳も無かった。



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