第46話
気がついたら、PVが30000アクセルを超えていました。
皆さん、読んでくれて有り難うございます。
改行を少し変えただけで、内容は変更していません。(5/14)
加藤が僕に斬りかかってきた。
あれは加藤の意志じゃないのは分かっているんだけど、かなり、いや、結構ショックを受けている。
何で加藤は彼女らに意識を乗っ取られる事になったのだろう?
アイツがこんな事に巻き込まれる事なんか無かった筈なのに、何でこんな事になってしまったんだろう?
これからも、加藤達は僕達の前に出てくるのだろう?
その時に、僕はしっかりとした対応が出来るのだろうか?
それから、何とか加藤を救い出す事は出来ないのだろうか?
そうすれば、もう少し冷静になれるんだろうか?
「・・・ん!」
何だろう?
「・・・さん!」
誰かの声が聞こえる?
「英奈さん!」
「え?」
広花ちゃんが僕を呼ぶ声が聞こえた。
「ちょっと英奈さん!フライパン!」
広花ちゃんが焦りながら、僕を呼んでいた。
声に驚いて、手に持っているフライパンを見た瞬間、
「え?きゃ!?」
僕は急いでフライパンの中の物をお皿に移す。
移されたお皿には、立派なスクランブルエッグが出来上がっていた。
「英奈さんが料理を失敗するなんて、珍しいですね」
広花ちゃんが、溜息をつきながら、そう言ってきた。
「ご、ごめんね・・・」
「どうせ、また考えがループしていたんでしょ?」
「う、うん・・・」
今日の夕飯では、オムレツを作るつもりだったのだ。
溶きほぐした卵液を、温めたフライパンに入れ、すぐさま菜箸で掻きまわす。
そうしていると、卵液が固まってくるが、掻き廻しているから、下が固まり、上が液状という状態ではなく、全体が半熟状になる。
そうしたら、半熟状卵を半分ほどに折り、それからフライパンの端っこに寄せ、形を整える。
形が整ったら、それをお皿に移して、オムレツの完成である。
ただし、菜箸で掻き混ぜ過ぎると、このようなスクランブルエッグもどきになってしまうのだ。
「この失敗したのは私が食べるね」
僕が広花ちゃんにそう言うと、また溜息を吐かれた。
「はぁ~、英奈さん!」
「う、うん・・・」
広花ちゃんがジト目で睨んでくる。
僕はその視線に少し引きそうになってしまう。
「お友達の事が心配なのは分かりますけど、あんまり思い詰めるのは良くないですよ」
広花ちゃんが、そう言ってきた。
「う、うん」
「それと、何でもかんでも背負い込もうとするのは止めた方が良いですよ」
「う、うん」
僕は広花ちゃんの言葉に頷く事しか出来なかった。
「だから、この卵は私が食べますね!」
突然、広花ちゃんがそんな事を言い出してきた。
「え?」
何を言っているの?
「英奈さん。何を驚いているの?」
「だって、その卵は私が失敗したんだから、私が食べるべきでしょ?」
私がそう言ったんだけど、
「失敗したからって、その人が責任を負わなくても、仲間がフォローすればいいじゃないですか」
そう言い返されてしまった。
「でも・・・」
「それにですね・・・」
広花ちゃんがニヤリと笑いながら、
「英奈さんの失敗作なんて、滅多に食べられないじゃないですか~」
広花ちゃんが失敗作の載ったお皿を奪い、それをテーブルの僕から離れた所に置く。
「でも・・・」
僕が尚も言おうとしたら、広花ちゃんがガシッ!と両肩を掴んできた。
「そこまで言うなら、私がお仕置きしちゃいますよ」
「え?」
僕がそう言うと共に、両肩を動かされ、クルッと後ろを向かされてしまう。
ムニュ!
「きゃっ!な、何!」
いきなり触られ、驚いていると、
「だから、お仕置きですよ!お仕置き!」
ムニムニムニムニムニ
「ちょ、ちょっと!止め・・・」
「ふふふふふ♪良いではないか♪良いではないか♪」
広花ちゃんが笑いながら、揉んでくる。
「や、止めて~!!」
「う~ん!揉み心地が良いわ~♪」
広花ちゃんがそんな事を言っている。
「ひ、広花ちゃんの方が、・・・大きいんだから、・・・自分のを揉めばいいでしょ!」
僕は何とかそう言ったんだけど、
「自分のを揉んでも、面白くも何ともないじゃないですか~!」
「そ、そっちが本音なの?」
「と~ぜんです!」
そう答えた後、広花ちゃんが悪ノリしてきた。
「うへへへ!ココか?ココが良いのか~?」
何か妙なテンションで、そんな事を言い出してきた。
「や~~~!」
凄く恥ずかしくて、そんな悲鳴を上げてしまった。
「何か悲鳴が聞こえたんだけど、どうしたんだ~?」
本間君と三井田の2人が、台所に顔を覗かせてきた。
「た、助けて!」
広花ちゃんが僕の後ろから鷲掴みにしている場面を目撃して、軽く膠着していた。
「2人とも、助けて!」
「山岸!一体、何をしているんだ?」
やっと再起動してきた本間君が、広花ちゃんにそう訊ねてきたんだけど、
「英奈さんが料理を失敗したから、そのお仕置きですよ~♪」
「だ、だからって~」
僕は、息も絶え絶えになりながらも反論する。
「あ~、中山が山岸を振りほどけば良いだろ?」
本間君が頬を掻きながら、そんな事を言ってきた。
「それは無理じゃないかな?中山はいつも、男たる者、女に暴力は振るえないって言っていたんだからな~」
怪我をした腕を包帯で巻いて、三角巾で吊るしている三井田が、本間君の言葉に反論する。
「え?」
僕は三井田の言葉に、呆気にとられて、そんな声を出してしまった。
「「「え?」」」
僕の言葉に反応して、3人がそんな声を出していた。
広花ちゃんは、揉む手を止めていた。
「え?中山?もしかして、忘れているのか?」
三井田が僕にそう問いかけてきた。
「え?わ、忘れているわけないじゃない・・・」
僕は慌てて、そう答えた。
う、うん!忘れている訳ないよ!
ただ、たった今まで、ど忘れしてしまっていただけだよ!
うん!
ただ、最近は意識していなかっただけだもん。
「な、何?」
目の前の本間君と三井田、そして、広花ちゃんが後ろから、何かこっちを探るような目で見るのは止めて欲しいんだけど・・・。
「わ、私がそれを忘れているわけないじゃないの!男たる者、そんな事が出来るわけないじゃない!」
3人の視線に晒されるのに、耐えきれなくなって、僕はそう宣言した。
「ふ~ん!英奈ちゃんてば、心の中では、そんな事を考えていたのね!」
本間君と三井田の後ろ、台所の入口から、そんな声が聞こえてきた。
本間君と三井田は勢いよく振り返り、僕と広花ちゃんは其方に顔を向けてしまった。
其処にいたのは、吉川さんだった。
その姿を認めた瞬間、僕は顔から血の気がサーッ!と引く音が聞こえた気がした。
吉川さんが一歩踏み出してきた。
それを見た本間君と三井田が、左右に分かれて、その歩みを妨げないようにしている。
ゆらり、ゆらりと、僕に近づいてくる。
そして、僕の目の前まで来てしまった。
僕は振るえながら、吉川さんの顔を窺うと、吉川さんはニッコリと微笑んできた。
・・・何で微笑んでいるのに、ゴゴゴゴゴ!という擬音が似合いそうな気配がするの?
「英奈ちゃん!」
「は、はい!」
吉川さんの一言に、僕は勢いよく返事を返してしまった。
「英奈ちゃんがそういう心構えでいるのは分かったわ!」
「・・・は、はい!」
「だからね、英奈ちゃんには、現在の状況を認識してもらおうと思っているのよ!」
「・・・は、はい!」
何でだろう?冷や汗と、それ以外の言葉が出てこないよ。
「と言うわけで、広花ちゃん。英奈ちゃんを私の部屋に連れてきてね!」
吉川さんが広花ちゃんにそう言ってきた。
「らじゃっ!」
広花ちゃんが敬礼を真似て、けれども、柔らかい感じに腕を動かして、そう返事をした。
そして、そのまま僕の胴体を羽交い絞めにするようにして、腕を回してきた。
「わ!?」
「さ!英奈さん。このまま連行しちゃいますね♪」
「ひ、広花ちゃん!何か楽しんでない?」
「と~ぜんです!」
広花ちゃんは、そう答えると、そのまま僕を持ち上げてしまった。
そして、そのまま台所から出ていこうと歩き出した。
「ちょ、ちょっと待って!」
「いや!」
「ふ、2人とも。助けて!」
僕は傍にいた男性陣2人に声をかけた。
本間君!両手を合わせながら、頭を下げなくていいから、早く助けて~!
三井田!敬礼しながら、満面の笑顔で見送るな~!
「さ~!早くお披露目しましょう!」
吉川さんが僕の背中を押しながら、そう言ってきた。
「や、やだ!こんな恰好は恥ずかしいですって~!」
僕はそれを全力で抵抗しながら、吉川さんにそう言い返す。
「ほらほら!恥ずかしがらなくても良いから、早くこっちに来てくださいよ!」
広花ちゃんが、そう言いながら、僕の両手を引っ張ってくる。
「や、やだやだやだ~!」
そう言うが、広花ちゃんの力に抗う事が出来ずに、ズルズルと居間の方に引き摺られてしまう。
居間には、本間君と三井田が大人しく座って待っている。
「さあ!2人ともお待たせ~!」
広花ちゃんが、本間君と三井田に言っていた。
僕は足を踏ん張って抵抗を続けていたのだが、吉川さんが僕の脇腹をくすぐってきた。
「わきゃっ!?」
いきなりくすぐられて、力が抜けてしまった瞬間に居間に押し込まれてしまったのだ。
「「おお~!」」
本間君と三井田がそんな歓声を上げてきた。
「うう~~~」
2人の好奇の視線がかなり恥ずかしいよ。
そんな2人が好奇心いっぱいに見ている僕の服はチャイナドレスなのだ。




