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霊器の想起  作者: 甘酒
47/74

第46話

気がついたら、PVが30000アクセルを超えていました。

皆さん、読んでくれて有り難うございます。


改行を少し変えただけで、内容は変更していません。(5/14)

 加藤が僕に斬りかかってきた。

 あれは加藤の意志じゃないのは分かっているんだけど、かなり、いや、結構ショックを受けている。


 何で加藤は彼女らに意識を乗っ取られる事になったのだろう?

 アイツがこんな事に巻き込まれる事なんか無かった筈なのに、何でこんな事になってしまったんだろう?

 これからも、加藤達は僕達の前に出てくるのだろう?

 その時に、僕はしっかりとした対応が出来るのだろうか?


 それから、何とか加藤を救い出す事は出来ないのだろうか?

 そうすれば、もう少し冷静になれるんだろうか?




「・・・ん!」

 何だろう?

「・・・さん!」

 誰かの声が聞こえる?

「英奈さん!」

「え?」

 広花ちゃんが僕を呼ぶ声が聞こえた。

「ちょっと英奈さん!フライパン!」

 広花ちゃんが焦りながら、僕を呼んでいた。

 声に驚いて、手に持っているフライパンを見た瞬間、

「え?きゃ!?」

 僕は急いでフライパンの中の物をお皿に移す。

 移されたお皿には、立派なスクランブルエッグが出来上がっていた。


「英奈さんが料理を失敗するなんて、珍しいですね」

 広花ちゃんが、溜息をつきながら、そう言ってきた。

「ご、ごめんね・・・」

「どうせ、また考えがループしていたんでしょ?」

「う、うん・・・」


 今日の夕飯では、オムレツを作るつもりだったのだ。

 溶きほぐした卵液を、温めたフライパンに入れ、すぐさま菜箸で掻きまわす。

 そうしていると、卵液が固まってくるが、掻き廻しているから、下が固まり、上が液状という状態ではなく、全体が半熟状になる。

 そうしたら、半熟状卵を半分ほどに折り、それからフライパンの端っこに寄せ、形を整える。

 形が整ったら、それをお皿に移して、オムレツの完成である。


 ただし、菜箸で掻き混ぜ過ぎると、このようなスクランブルエッグもどきになってしまうのだ。


「この失敗したのは私が食べるね」

 僕が広花ちゃんにそう言うと、また溜息を吐かれた。

「はぁ~、英奈さん!」

「う、うん・・・」

 広花ちゃんがジト目で睨んでくる。

 僕はその視線に少し引きそうになってしまう。


「お友達の事が心配なのは分かりますけど、あんまり思い詰めるのは良くないですよ」

 広花ちゃんが、そう言ってきた。

「う、うん」

「それと、何でもかんでも背負い込もうとするのは止めた方が良いですよ」

「う、うん」

 僕は広花ちゃんの言葉に頷く事しか出来なかった。


「だから、この卵は私が食べますね!」

 突然、広花ちゃんがそんな事を言い出してきた。

「え?」

 何を言っているの?

「英奈さん。何を驚いているの?」

「だって、その卵は私が失敗したんだから、私が食べるべきでしょ?」

 私がそう言ったんだけど、

「失敗したからって、その人が責任を負わなくても、仲間がフォローすればいいじゃないですか」

 そう言い返されてしまった。

「でも・・・」

「それにですね・・・」

 広花ちゃんがニヤリと笑いながら、

「英奈さんの失敗作なんて、滅多に食べられないじゃないですか~」

 広花ちゃんが失敗作の載ったお皿を奪い、それをテーブルの僕から離れた所に置く。


「でも・・・」

 僕が尚も言おうとしたら、広花ちゃんがガシッ!と両肩を掴んできた。

「そこまで言うなら、私がお仕置きしちゃいますよ」

「え?」

 僕がそう言うと共に、両肩を動かされ、クルッと後ろを向かされてしまう。


ムニュ!


「きゃっ!な、何!」

 いきなり触られ、驚いていると、

「だから、お仕置きですよ!お仕置き!」


ムニムニムニムニムニ


「ちょ、ちょっと!止め・・・」

「ふふふふふ♪良いではないか♪良いではないか♪」

 広花ちゃんが笑いながら、揉んでくる。

「や、止めて~!!」

「う~ん!揉み心地が良いわ~♪」

 広花ちゃんがそんな事を言っている。

「ひ、広花ちゃんの方が、・・・大きいんだから、・・・自分のを揉めばいいでしょ!」

 僕は何とかそう言ったんだけど、

「自分のを揉んでも、面白くも何ともないじゃないですか~!」

「そ、そっちが本音なの?」

「と~ぜんです!」

 そう答えた後、広花ちゃんが悪ノリしてきた。

「うへへへ!ココか?ココが良いのか~?」

 何か妙なテンションで、そんな事を言い出してきた。

「や~~~!」

 凄く恥ずかしくて、そんな悲鳴を上げてしまった。





「何か悲鳴が聞こえたんだけど、どうしたんだ~?」

 本間君と三井田の2人が、台所に顔を覗かせてきた。

「た、助けて!」

 広花ちゃんが僕の後ろから鷲掴みにしている場面を目撃して、軽く膠着していた。

「2人とも、助けて!」


「山岸!一体、何をしているんだ?」

 やっと再起動してきた本間君が、広花ちゃんにそう訊ねてきたんだけど、

「英奈さんが料理を失敗したから、そのお仕置きですよ~♪」

「だ、だからって~」

 僕は、息も絶え絶えになりながらも反論する。



「あ~、中山が山岸を振りほどけば良いだろ?」

 本間君が頬を掻きながら、そんな事を言ってきた。

「それは無理じゃないかな?中山はいつも、男たる者、女に暴力は振るえないって言っていたんだからな~」

 怪我をした腕を包帯で巻いて、三角巾さんかくきんで吊るしている三井田が、本間君の言葉に反論する。


「え?」

 僕は三井田の言葉に、呆気にとられて、そんな声を出してしまった。

「「「え?」」」

 僕の言葉に反応して、3人がそんな声を出していた。

 広花ちゃんは、揉む手を止めていた。


「え?中山?もしかして、忘れているのか?」

 三井田が僕にそう問いかけてきた。

「え?わ、忘れているわけないじゃない・・・」

 僕は慌てて、そう答えた。

 う、うん!忘れている訳ないよ!

 ただ、たった今まで、ど忘れしてしまっていただけだよ!

 うん!

 ただ、最近は意識していなかっただけだもん。


「な、何?」

 目の前の本間君と三井田、そして、広花ちゃんが後ろから、何かこっちを探るような目で見るのは止めて欲しいんだけど・・・。


「わ、私がそれを忘れているわけないじゃないの!男たる者、そんな事が出来るわけないじゃない!」

 3人の視線に晒されるのに、耐えきれなくなって、僕はそう宣言した。


「ふ~ん!英奈ちゃんてば、心の中では、そんな事を考えていたのね!」

 本間君と三井田の後ろ、台所の入口から、そんな声が聞こえてきた。

 本間君と三井田は勢いよく振り返り、僕と広花ちゃんは其方に顔を向けてしまった。


 其処にいたのは、吉川さんだった。

 その姿を認めた瞬間、僕は顔から血の気がサーッ!と引く音が聞こえた気がした。


 吉川さんが一歩踏み出してきた。

 それを見た本間君と三井田が、左右に分かれて、その歩みを妨げないようにしている。

 ゆらり、ゆらりと、僕に近づいてくる。

 そして、僕の目の前まで来てしまった。


 僕は振るえながら、吉川さんの顔を窺うと、吉川さんはニッコリと微笑んできた。

 ・・・何で微笑んでいるのに、ゴゴゴゴゴ!という擬音が似合いそうな気配がするの?


「英奈ちゃん!」

「は、はい!」

 吉川さんの一言に、僕は勢いよく返事を返してしまった。

「英奈ちゃんがそういう心構えでいるのは分かったわ!」

「・・・は、はい!」

「だからね、英奈ちゃんには、現在の状況を認識してもらおうと思っているのよ!」

「・・・は、はい!」

 何でだろう?冷や汗と、それ以外の言葉が出てこないよ。


「と言うわけで、広花ちゃん。英奈ちゃんを私の部屋に連れてきてね!」

 吉川さんが広花ちゃんにそう言ってきた。

「らじゃっ!」

 広花ちゃんが敬礼を真似て、けれども、柔らかい感じに腕を動かして、そう返事をした。

 そして、そのまま僕の胴体を羽交い絞めにするようにして、腕を回してきた。

「わ!?」

「さ!英奈さん。このまま連行しちゃいますね♪」

「ひ、広花ちゃん!何か楽しんでない?」

「と~ぜんです!」

 広花ちゃんは、そう答えると、そのまま僕を持ち上げてしまった。

 そして、そのまま台所から出ていこうと歩き出した。

「ちょ、ちょっと待って!」

「いや!」


「ふ、2人とも。助けて!」

 僕は傍にいた男性陣2人に声をかけた。


 本間君!両手を合わせながら、頭を下げなくていいから、早く助けて~!


 三井田!敬礼しながら、満面の笑顔で見送るな~!




「さ~!早くお披露目しましょう!」

 吉川さんが僕の背中を押しながら、そう言ってきた。

「や、やだ!こんな恰好は恥ずかしいですって~!」

 僕はそれを全力で抵抗しながら、吉川さんにそう言い返す。

「ほらほら!恥ずかしがらなくても良いから、早くこっちに来てくださいよ!」

 広花ちゃんが、そう言いながら、僕の両手を引っ張ってくる。

「や、やだやだやだ~!」

 そう言うが、広花ちゃんの力に抗う事が出来ずに、ズルズルと居間の方に引き摺られてしまう。


 居間には、本間君と三井田が大人しく座って待っている。

「さあ!2人ともお待たせ~!」

 広花ちゃんが、本間君と三井田に言っていた。

 僕は足を踏ん張って抵抗を続けていたのだが、吉川さんが僕の脇腹をくすぐってきた。

「わきゃっ!?」

 いきなりくすぐられて、力が抜けてしまった瞬間に居間に押し込まれてしまったのだ。


「「おお~!」」

 本間君と三井田がそんな歓声を上げてきた。

「うう~~~」

 2人の好奇の視線がかなり恥ずかしいよ。

 そんな2人が好奇心いっぱいに見ている僕の服はチャイナドレスなのだ。



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