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霊器の想起  作者: 甘酒
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第39話

 あれから、皆と普通に御飯を食べていたんだけど、吉川さんと広花ちゃんが顔を突き合わせて、何事かを話し合っている。


「・・・だと思わない?」

「ええ!そうですよね!」

 吉川さんが何か言っているのを、広花ちゃんが答えていた。


「吉川さん。それに広花ちゃん。何を話しているんですか?」

 僕は本間君から渡されたお茶碗に御飯を盛り、それを本間君に返しながら、2人に話しかけてみた。


「ん?英奈ちゃんがまだまだ女の子らしくないわねって、話をしていたのよ」

 吉川さんが、僕にそんな事を言ってきた。

「そ、そうですか?」

 僕は、思わず言葉がつっかえてしまう。

 だって、こういう風な事を言われる時って、大抵、何かがあるんだもん。

 警戒するなって言う方がオカシイよね。


「そうですよ!英奈さんはまだまだ女の子らしく出来るんですから、もっともっと頑張らなきゃ駄目ですよ!」

 広花ちゃんが妙に力説してきたよ。

「で、でも、私はこれ位でも良いと思っているんだけど・・・」

 恐る恐る主張してみるけど、

「まだまだです!」

 広花ちゃんに断言されてしまった。

「そ、そう?・・・」

 広花ちゃんの勢いに気圧されて、そう言ってしまった。

 そして、広花ちゃんの後ろに目が行ってしまった。


 広花ちゃんの足元。もっと正確に言うと、広花ちゃんと吉川さんの間にある床面。

 そこにはビール缶が転がっていたのだ。

 目線だけで数えてみると、


 1缶、2缶、・・3缶、・・・4缶、・・・・・5缶、そして、

 日本酒の1升瓶が1本転がっていた。


 それを見た瞬間、顔が引き攣ってしまった。

 だって、広花ちゃんのグラスに入っていた透明な水って、もしかしなくても、水では無くて、日本酒とかじゃないよね?


 僕がそんな事を思っている傍らで、広花ちゃんがグラスに入っている液体をグイッと、煽る様に飲んでしまった。

 そして、グラスをテーブルに置いた時の広花ちゃんの目が座っていた。


「さあ、英奈さん。私と特訓しましょう!」

 広花ちゃんが少しふらつく様にして、立ち上がってきた。


ひ、ひぃ!


 その座った目付きに恐怖を覚えて、椅子をガタッ!と音を立てながら、立ち上がってしまった。

 広花ちゃんが座った目で僕を睨むかのように、見てくる。

「ひ、広花ちゃん!よ、酔っているみたいだから、落ち着きましょ!ね!」

 僕は後ずさりながら、広花ちゃんにそう言うけど、

「私は酔ってないですよ!!」

 広花ちゃんがそう言ってきた。

「酔っ払いは、皆そう言うの!」

 思わずそう言ったんだけど、今それを言っても、多分、聞き入れられないよね?


 広花ちゃんがユラリユラリと、揺れながら近づいてくる。

 僕は更に後ずさり、テーブルから離れようとしてしまう。

 でも、それも直ぐに終わってしまった。

 背中に平らな固い感触を感じてしまう。

 後ろを振り返ると、壁にぶつかっていた。

 この狭い部屋では、あっという間に壁にぶつかってしまったのだ。

 広花ちゃんが目の前まで迫って来ていた。


ドン!


 壁を背にしている僕のすぐ近くに、広花ちゃんが叩くかの様に左手を当てる。

 血走っている様な、座っている様な目をした広花ちゃんが顔を近づけてきた。

 顔が近い!顔が近い!顔が近い!

 広花ちゃんの顔が、僕の顔に触れそうな程に近づいてきた。

「英奈さんって、大変な時とかに、女の子らしい悲鳴とかしていないですよね?」

「そ、そう?」

「はい!」

「そ、そうかな?」

「はい!!」

「きゃ、きゃあ」

 僕は悲鳴の声を真似て言ってみた。

「全然駄目ですね」

 広花ちゃんに駄目出しされてしまった。


むにゅっ!


「わ、わぁ!?」

 左胸に押し付けられる感触を感じたので、そんな声を出してしまった。

 顔を下に向けて、それを見てみると、広花ちゃんが右手を僕の左胸を掴んでいたのだ。

「ほら!全然駄目じゃないですか!」

 広花ちゃんはそう言ってきた。


むにゅっ!むにゅっ!


「ちょ、ちょっと!何やってるの!」

 広花ちゃんが調子に乗ってくるから、苦情を言う事にした。

「何って?」

 僕の苦情を聞いた広花ちゃんは、しれっと答えてきたよ。

「だから!何でそんな嬉しそうな顔で揉むの!!」

「柔らかくて気持ち良いから♪」

 嬉しそうな顔でそう答えないでほしいよ。


「それ!私の悲鳴と関係無いでしょ?」

 僕は再度、広花ちゃんに文句を言ったのだ。

「それなら、こうゆうのはどうです?」

 そう言うや、広花ちゃんは僕の胸から手を離すと同時に、僕の両手ごと抱きしめてきた。

「え?」

 事態の進展についていけなかった僕は、そんな間抜けな声を出してしまった。

 そして広花ちゃんは、僕の両手を動けない様にしたまま、少し足に力を入れた様にしたら、そのままの姿勢で僕を持ち上げてしまった。

 床から足が離れてしまった時、広花ちゃんはクルッ!と回転する。

 その時に、広花ちゃんのポニーテールと、僕のミント色のシフォンスカートがふわりと舞ってしまう。


「え?え?」

 そして、僕と広花ちゃんの位置が入れ替わってしまった。

 何でそんな事をしたのか分からなかったので、首を傾げていると、


ガバッ!


 僕の後ろで何かが舞った様に感じた。

 だから、後ろを振り向くと、その視界には柔らかそうな布地が落ちていく様が見えていた。


 ・・・今のって、まさか?


 そして、その奥には吉川さんがいた!

 何時の間に、そこに来ていたの?

「ちょ、ちょっと!吉川さん!何をしているんですか?」

 僕は慌ててそう声を上げるのだが、吉川さんはまるで自信満々の表情でいた。

「何って、英奈ちゃんの女子力特訓よ!」


「ちょっと!何を掴んでいるんですか?」

「何って、決まっているじゃない♪」

 何でそこでドヤ顔で答えるのかな?

 そして、僕のスカートを握るのを止めてほしい!


「さぁ!悲鳴の特訓をしましょ!」

「ちょ、ちょっと待って!」


ガバッ!


「わ、わぁ!」

 僕のスカートが思いっきり捲り上げられた。

 いきなり、何をするんだ~!

「ふぅ、・・・やっぱりまだまだね」

 そう言って、吉川さんがまたスカートを掴んできた。

 それを見た僕は、微かに動く手首を動かして、お尻を押さえた瞬間、またスカートが捲られてしまった。

「ちょ、ちょっと!」

 お尻を押さえたお陰で、スカートは捲られたけど、下着は何とか隠す事が出来た。


「ちょっと!吉川さん!いい加減にしてください!」

 恥ずかしさに顔を赤くしながら、吉川さんに文句を言うのだが、

「英奈ちゃんがちゃんとした悲鳴を上げる事が出来るようになったら、止めるからね!」

 全然気にしていない様な態度で、そんな事を言ってくる。

 そんな強制された事で悲鳴を変える事なんか出来るか!


「広花ちゃん!お願い!離して!」

 早々に、吉川さんの説得を諦めて、広花ちゃんに頼んでみたけど、

「ちゃんとした悲鳴を上げれば良いんですよ」

 そんな事を言われてしまった。

 誰か、この酔っ払い2人を止めて~!


 僕と吉川さん、広花ちゃんのやり取りを見ていた本間君と三井田は、我関せずみたいな感じで話し合っていた。

「白と水色だったな」

「な、何を言っているんですか?」

 三井田の言葉に、本間君がそんな返答をしていた。

「またまた!君だって、ちゃんと見ていたんだろ?」

「俺は見てませんよ!」

「素直になりなよ!健全な男子がそういう事に興味が無いなんて、有り得ないんだしさ!」

 三井田はそう言いながら、本間君に軽く肘打ちをしている。

「ちょ、ちょっと!止めてくださいよ!」


「ちょっと!そこの男子2人!ふざけてないで、助けてよ!」

 動けない僕は、お喋りしている本間君と三井田に助けを求めた。

「いや。俺は男子って言う様な年齢としじゃないし~!」

 三井田がそんな事を言ってきた。

「今はそんな事を言っている余裕無いんだから、・・・ちょっ!?吉川さん!そこ止め!待って!お願い!」

 吉川さんが何を考えたのか、スカートの両横を捲りだした。

 それに対応しようと、手首を動かして横を押さえようとした瞬間、後ろの方を捲られてしまった。

 それから、太腿を這い回るかのように、撫で回してくる。

「ああ!?」

 僕の悲鳴を聞いていた吉川さんは、

「う~ん。駄目ね」

 凄く残念そうにそんな事を呟いていた。


「三井田さん。離してください!いくらなんでも、あの2人はやり過ぎだ!」

「まぁまぁ!面白そうだから、このまま、放っておこう!」

 椅子から立ち上がろうとしていた本間君の肩を、三井田が押さえて、立ち上がれない様にしていた。


「三井田!後で覚えていなさいよ!」

 僕はスカートを守りながら、三井田に文句を言うが、

「酒の席の事だから、覚えてないな~♪」

 全く悪びれる事もなく、そう返された。


「広花ちゃん!お願い!いい加減に離して!」

「・・・」

 僕は広花ちゃんの拘束を解こうと、身体をくねらせながら、そんな懇願をするが、全く返事が返ってこなかった。


「広花ちゃん?」

 広花ちゃんから、返事が無い事に違和感を感じて呼びかけた時、広花ちゃんの身体がグラッと傾いた。

「え?」

 広花ちゃんは、そのまま倒れ込んできた。

「わ!?」

 腕から抜け出せなかった僕は、そのまま巻き込まれて、倒れてしまった。

「痛ったぁ~~~!」

 倒れた拍子にお尻を打ってしまったよ。


「え?広花ちゃん?」

 顔を上げると、目の前にいる広花ちゃんは、僕のスカートを握り締めながら、なかなか顔を上げないでいた。

 倒れた時に何処かぶつけてしまったのだろうか?

 そう思い、広花ちゃんの顔を覗いてみたら、物凄く青い顔をしていた。

「きぼぢわりゅい・・・」

 そんな言葉を、広花ちゃんが言っているのが聞こえてきたよ。


 一瞬遅れて、その言葉を脳内で変換する事が出来た。

 その言葉を理解すると共に、今度は僕の方が、顔が青くなってしまった。

「ちょ、ちょっと待って!今、ビニール袋を持ってくるから、それに・・・」


 広花ちゃんの様子がおかしい事に気付いた吉川さんと三井田が、急いでビニール袋を持って来ようと、動き出す所が見えた。

 早く持って来て!


 一番近くにいた僕も、広花ちゃんの看病しようと動こうとしたんだけど、その場から動くことが出来なかった。

 広花ちゃんが青い顔をしながら、僕のスカートを離そうとしないのだ。


「ちょ、ちょっと!広花ちゃん。スカートを離して!私が動けないから。ね。」

 僕はそう言って、広花ちゃんに手を離してもらおうとしたんだけど、返事をする余裕も無いようだった。

 しかも、しっかりと握っていて離してくれそうに無いよ。


 吉川さんも三井田もまだ戻ってこないよ。

 ビニール袋を取りに行くだけで、どんだけ時間をかけているんだか!

 そう思いながら広花ちゃんを見ていると、咽をせり上がってくるのが見えてしまった。

 このまま、僕がこの場にいるとどうなるか、とても嫌な事態を想像してしまった。


「ひ、広花ちゃん!ま、待って!ここでは出さないで!直ぐに吉川さん達がビニール袋を持ってくるから、それにして・・・」

 広花ちゃんの手をスカートから外そうと、手を広げようとするんだけど、力が凄くて全然引き剥がす事が出来ないよ。


 待って!待って!待って!

 ここでは止めて!

 お願いだから!

 だから待って!

 もう少し我慢して!

 だけど、僕のその願いは叶えられなかった。


「※※※※※※!」

 自主規制!

 自主規制!

 自主規制!


「キャアーーーーーーーー!!」

 僕のスカートに襲い掛かる大惨事を眼前で見てしまい、思わず悲鳴を上げてしまった!



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