第13話
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そして、いつのまにか、ブックマークが倍になっていました。
皆さん、有り難うございます。
今日は、僕と吉川さんと本間君の3人で、永岡市内を視察して回っている。
たまに、こういう風に皆で市内を回っている。
人の集まる場所には、人の想念が溜まり易いのだ。そして、そういう想念は、場合によっては、御霊に堕ちてしまうらしい。
それで、今来ているのは、永岡市内にある、あるゲームセンターである。
こういう所も、沢山の人が来る場所だから、やはり、しっかりと確認しておくべきだよね。うん!
「おい。中山も両替するんだろ?」
本間君が、視察そっちのけで遊ぶ気満々で、そう言ってきた。
これは、僕がしっかりと言っておくべきだろう!
「うん!私も両替するから、ちょっと待ってて!」
今の僕は、上はベージュ色のブラウスで、下は紫色をした、胴体部がコルセットのような感じのハイウエストスカートという、胸元を強調する装いなんだけど、そのスカートを翻しながら、本間君にそう答えた。
こ、これは、このような場に来て、何もしないで歩き回るのは、不自然な感じになってしまうので、注目を集めないで溶け込む為に必要な事なんだよ!
だから、足取りを軽く、本間君のいる両替機に向かうのは、周囲を誤魔化す為の偽装だよ。うん!
ほ、ほら、隣を一緒に歩いている吉川さんも、文句を言わないで笑顔でいるんだし。
「そうね。何をしようかしらねぇ」
吉川さんも、一緒になって、ゲームを楽しむ感じを装っているね。
3人で両替した後は、それぞれが思う所に散って行った。
僕は某ロボット・シリーズのメイン機体が使用できるゲームの台に来ていた。
ちょうど、空いていたので、椅子に座ろうとしていたら、対面の席に人が座る気配を感じた。
ふと、顔を上げてみると、その席に座ろうとしていたのは、本間君だった。
「あれ?本間君もコレやるの?」
僕がそう言うと
「ああ、たまには、こういうゲームをやってみたくなってな」
「ふうん、そうなんだ。じゃあ、本間君がよかったら、対戦しない?」
本間君は、顔をニヤリとしてくる。
「ああ、いいぜ。ボッコボコにしてやるよ」
「言ったな!その言葉、後悔させてやる!」
そう言って、僕は早速、台に硬貨を投入する。
僕の使用する機体は『翼零改』だ!
テレビ版では、機動用のウイングだったのに、劇場版になったら、天使のものをイメージするウイングになったという機体だ。
対する本間君の選んだ機体は、『天帝』だ。
シリーズ中では、ラスボスの乗っていた機体で、端末兵器が縦横無尽に主人公機体に攻撃していたのが、印象的だった。
結果から言うと、惨敗だった。
まぁ、久々にやったし、負けても、ゲームをプレイ出来ただけでも楽しかったよ。
うん、1勝4敗だったとしても気にしないよ。
・・・1勝4敗かぁ~。
・・・・・・1勝4敗。
・・・・・・・・・次は負けない!
その後、
吉川さんに連れられて、生まれて初めてプリクラに連れ込まれてしまった。
「あ、あの、吉川さん。私、プリクラなんて初めてなんですけど・・・、どうすればいいか分からないんですよ~」
僕は、勝手が分からないので、少し不安になって、そんな事を言ったんだけど、
「大丈夫よ。要は、只の写真なんだから、そんなに気負わないで、笑顔でいればいいんだからね」
そうは言われても、どうすればいいのか、不安だよ~。
「まぁまぁ、とりあえず、試しにやってみましょうよ」
吉川さんは、そう言いながら、撮影の準備を始める。
「じゃあ、やるわねぇ~!」
「え?ちょ、ちょっと、待ってくださ・・・」
パシャ!!
「ほらほら、簡単でしょ!」
出てきた写真には、慌てて横を向いた姿と、僕の横で、笑顔でピースをしている吉川さんの姿が写っていた。
「ああ~!せっかくの初プリクラがぁ~!!」
僕は、出てきた写真を掴みながら、叫んでしまった。
「まあまあ、もう1回やりましょうよ」
僕は吉川さんに向かって、真剣な顔で、
「はい!次を撮りましょう!!」
そう言って、次の撮影の準備を開始する。
その後、2人とも気が済むまで、色んなポーズでプリクラを楽しんだのだった。
余談だが、2人のしていたポーズが、80年代から90年代のアイドルのポーズという、少し所か、かなり古臭いものだったのだが、誰も気付いていなかったので、割愛しておく。
・・・2人の年齢がバレるしね。
それから、
「ねえ、英奈ちゃん。ここに本間君を呼んでみない?」
吉川さんの言葉に、僕は首を傾けてしまう。
「どういう事ですか?」
「どういう事かしらねぇ~」
そこで、吉川さんは顔をニヤリとしながら、言ってきた。
「撮影する直前に、本間君を私達2人でね・・・」
そこまで言われて、僕は、やっと分かってきた。
「成程、撮影する瞬間に2人で挟んで、本間君の慌てている顔を撮ろうと言うんですね?」
僕がそう言うと、吉川さんは嬉しそうにしながら、
「それに気が付くとは、お主もワルよの~!」
吉川さんがそう言ってくるので、
「いえいえ、考え付いた御代官様には敵いませんよ」
吉川さんに、僕はニヤリと笑いながら答えた。
「じゃあ、さっそく本間君を迎えに行きましょうか」
「はい!!」
自販機の前でジュースを飲んでいる本間君を見つけた僕は、できるだけ自然な態度で、本間君の所に行った。
「ねぇ、本間君」
声をかけた僕に、飲み終えた缶をゴミ箱に捨ててから、本間君は振り向いてきた。
「お~!吉川さんにプリクラに連れ去られたようだったけど、どうだった?」
・・・見てたのか?
僕が困っていたのに、助けなかったんだ。
・・・ふ~ん。
よし、これは良心の呵責は感じなくて良いかな?
「うん。思っていたよりも、楽しかったよ」
「そっか、良かったな」
本間君が微笑んでいた。
「うん!」
僕も微笑んでおく事にした。
「ねぇ、本間君。ちょっとこっちに来てくれないかな?」
「ん?いいけど、何だ?」
よしよし、本間君は何も警戒していないようだな?
「うん、ちょっと頼みたい事があってね~」
本間君は頷きながら、
「ああ、いいよ。何をするんだ?」
「実はね、ちょっとこっちに来てほしいんだ」
そう言って、僕は本間君の手を引いて、歩き出した。
本間君は訝しむ事をなく、素直についてきてくれた。
よし、獲物は釣り針に掛かったぞ!
「本間君、よく来てくれたわね!」
吉川さんは満面の笑みで、本間君を迎えていた。
そして、本間君の腕を掴み、そのまま引っぱりだした。
吉川さんが引っ張っていく先には、プリクラの設置スペースがある。
「ちょ、ちょっと待て!ここは・・・」
ここに来て、本間君が慌てだしてきたな。
でも、もう遅い!
ここまで来たら、吉川さんの魔の手から逃れる事など出来ないのだから。
僕は、本間君の背中を押して、吉川さんの手助けをする。
「ちょ、ちょっと、中山も何を押しているんだよ?待てって・・・」
そんな苦情等、聞く耳など持たず、僕達2人は、本間君を目的地に連れ込んだ。
「お、おい。何で俺をこんな所に連れてきたんだ?」
本間君は、少しオドオドしながら、そんな事を言ってきた。
その言葉で、吉川さんは目的を言った。
「それは勿論、本間君とプリクラを撮りたかったからよ!」
本間君は一瞬、唖然とした顔をしたが、気を取り直したのか、また言い出してきた。
「男がプリクラなんかやらないだろ!」
そんな言葉で揺らぐ吉川さんではない。
「それが何か?」
「だから、俺がする事じゃないだろ?」
本間君は焦っているようだね。
「そんな事ないわよ。それに本間君が一緒にプリクラを撮ってくれない限り、ここから、出さないわよ」
その言葉で、本間君は諦めたようだった。
そうだよね。いつのまにか、吉川さんが本間君の腕に、関節技を極めているんだから。
今は平然と話しているけど、下手に逃げようとする素振りを見せた瞬間、激痛を与えられる様にしているし、実際、やりかねないもん。
「はぁ~。ちょっとだけだぞ」
よし、墜ちた!
その言葉に、僕と吉川さんは2人でハイタッチをしながら喜んだ。
「「やったね!」」
それから、本間君の気が変わらない内に、早速、吉川さんは撮影の準備を始める。
その間に、僕は本間君を真ん中に立たせる。
そして、準備が出来たので、僕と吉川さんは本間君の両側に立ち、それぞれ、撮影の為のポーズを取った。
本間君も、いかにも仕方なくと言う顔でポーズを取っていた。
しかし、機械が動き出した時、僕と吉川さんはアイコンタクトで確認しあうと、行動に移った。
お互いに取っていたポーズを止めると同時に、2人同時に、本間君の腕に其々しがみついた。
ムニュッ!
「なっ!!」
本間君が慌てた様な顔で、一瞬膠着した。
「お、おい!何やっているんだよ!」
慌てた顔のまま、もぞもぞと動き出したけど、僕達2人は、勿論逃がさない!
「お、おい!離せって!」
「「やだ!」」
本間君が顔を赤くしながら、テンパっている。
「は、離せって!その・・・、当たっているんだよ!」
そう言えば、離すと思っていたんだろうけど、甘いな!!
「「当ててんのよ!」」
「な・・・」
カシャッ!
出てきた写真を見たら、僕達の予想通りに、腕を絡まれて、焦りまくっている本間君の顔が写っていた。
「ほらほら、英奈ちゃん!予想通り、イイ絵が取れたわよ。」
「ホントだ!慌てた顔が面白~い!」
僕達2人がプリクラを見ながら、盛り上がっている隣で、本間君は妙に疲れ切った顔になっていた。
僕は、一休みがてら、自販機のジュースを飲んでいた。
そうやって、のんびりしていると、視界の先に見知った人が見えた。
何と、加藤と三井田の2人だったのだ。
僕は懐かしくなり、思わず2人に手を上げて呼ぼうとしたが、上げようとした手を下げて、思い止まってしまった。
加藤と三井田に声をかけて、どうする?
僕が、2人の知っている中山英樹だと言うのか?
そんな事を言って、信じてもらえるのか?
40過ぎの男だったけど、15歳の女の子になったと言うのか?
例え、言ったとしても、それを信じてもらえるのか?
信じてもらえないだけで無く、変人だとか、怪しい人だと思われないのか?
普通に考えて、不審人物だと思われて、避けられてしまうのではないのか?
そんな事を考えている内に、加藤と三井田は、こっちに歩いて来ていた。
2人は、僕の事には気づいてはいないようだった。
その様子は、2人で冗談でも言っているのか、とても楽しそうだった。
そう、僕など居なくても、2人とも問題無いようだった。
逆に僕が居ない方が、自然に楽しんでいるんじゃないのかと思われる程だ。
その様子を見ていた僕は、動けずにいた。
そして、ついに2人が僕の前まで来てしまった。
声をかけて、2人と話がしたかった。
けど、どう言って話しかけて良いのか、わからなかった。
そんな僕の目の前を、2人が通り過ぎていってしまった。
僕の存在など、全く気付いてなどいなかったかのように。
その様子が、僕にとっては、今までの40年間と、今現在の僕との関係のように感じられてしまった。
僕は、振り返る事も出来ずに、目から涙が溢れてきた。




