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霊器の想起  作者: 甘酒
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第0話

初めまして。今までは、色んな方の小説を読むだけだったのですが、文才が無いのに、つい書きたくなってしまいました。

 僕の名前は、中山英樹なかやま・ひでき

 夕暮れ時に作戦行動があるので、それに備えている所である。

 ブラウスの上に防刃ベストを身に着ける。

 これから戦う相手の攻撃に対して、防刃ベストに効果が有るかは実証できていないらしいのだけれど、ただの衣服だけを着て、戦闘を行なうのも不用心過ぎると思うから、これはこれで仕方がないのだろう。

 防刃ベストを着けた後は、両の腕に手甲を付ける。

 この手甲も、そろそろ手に馴染む位には使い続けているなぁ。


コンコン


 ドアをノックする音がした。

「はい。なんですか?」

 僕が返事をすると、ドアが開いて吉川さんが顔を覗かせた。

「準備できた?」

「あ、はい。ちょうど今、終わった所ですよ」

 僕はそう答えながら、打ち刀を手にする。

「じゃあ、英奈ちゃん。そろそろ行きましょう」

「はい、分かりました」

 私は脇差も手にすると、吉川さんと一緒に部屋を出た。

 そう、私は今、中山英奈なかやま・えいなと名乗っている。


_________________________



 江戸時代には永岡城があったこの場所は、古くからの繁華街である。

 新幹線と在来線の接続駅である永岡駅。

 県内から集まる人には勿論、東京から来る人と待ち合わせをするのにも利用できる、便利な駅である。

 その永岡駅前の通りは、道路に沿って地下駐車場がある。

 その駐車場の入口に自動車を向ける。

 僕の名前は、中山英樹なかやま・ひでき。41歳。

 今は、遊ぶ約束をしていた友達と会う為に、永岡駅前の通りにある地下駐車場に自動車を入れている所である。

 ちなみに、独身である。

 別に好きで独りがいいからと言う訳ではなく、単に出会いが無いのである。

 今朝も親からは、


早く彼女を作れ!

早く結婚をしろ!

早く孫の顔を見せろ!


 と、催促されたのだが、出会いが無いのだから仕方がない。

 まあ、理由が分からないわけではないのだが。僕達の小学生時代や中学生時代は、


軟派な人間になるな!

男が女とお喋りするのは軟派な奴だ!

軟派な奴は仕事だけでなく、人生もいい加減になるぞ!


 等と、教師たちに叩き込まれたのである。

 今さら硬派だ軟派だに拘る気は無いが、子供時代に叩き込まれたものは中々抜けないから困っている。


「Dの2番か」

 地下駐車場の、自動車を停めた場所を確認する。

「さて、まだ少し時間はあるかな?」

 腕時計を見ていると、少し離れた所から声が聞こえてきた。



「止めてください」

「うるせぇな」

 声の聞こえてきた方向を見ると、男性の連れていた犬が近くの女性の服に前脚を引っかけていた。

 犬に絡まれていた女性は、本当に困っている様に見えた。

 それを見た僕は、女性達の方に向かった。


「ホントに止めてください」

 女性は半分泣きそうな顔で、男性に何度も言っていた。

 それを聞いていた男性は、赤い顔をして、酒臭い息を吐きながら、

「犬がじゃれているだけなんだから、そんなに嫌がるなよ。別に怪我する訳でもないんだから、ちょっと位いいだろ?」

「嫌です!」


「いい加減にしたらどうですか?」

「あぁ?」

 僕が言った言葉に、男性は機嫌が悪くなった様に睨んでくる。

「おい、兄ちゃん。あんたには関係ないだろ。余計な口をはさむなよ」

「面倒くさいとは思っているんだけど、困っている人は見過ごせない性分なんでね」

「邪魔なんだよ!」

 男は怒鳴ると同時に、殴り掛かってきた。

 僕は、自分の手首を相手の手首に絡ませるようにして、殴り掛かってきた拳の軌道を逸らすと同時に、身体を男の横に滑らせる。

 相手は僕の動きに釣られて態勢を崩す。そのまま、相手の後ろに回って男の腕を捻りあげる。

「いてててて」

「もう止めませんか?」

「痛いんだよ。手を離しやがれ」

 僕は素直に捻りあげていた手をはなした。

 男は大げさに痛がってみせた。

「手前ぇが来なけりゃ、何も問題ないんだよ!」

 この酔っ払い・・・、もとい、男はまだ言っている。

 僕は溜息が出てくる。

「はぁ、そんな事言っていると、ペットの犬が保健所に連れて行かれる事になりますよ?」

「何でそんな事になるんだよ。俺がそんな事させねえよ」

 男は、唾を飛ばす勢いで怒鳴ってくる。

「オジサンがどう思うかは関係ないよ」

「何ぃ!」

「このまま、その犬が女性に怪我をさせたなら、オジサンは飼い主として不適格だと判断されるし、その犬は危険と判断されて、殺処分になるはずだよ」

 ただでさえ赤かった顔が、更に赤くなって睨んできた。まるで茹でダコだ。

 酔っ払い男は、しばらくこっちを睨み続けている。

「ふざけんな!」

 そういうと犬の首輪のリードを引っ張り、犬を女性から引き剥がした。

 そして、そのまま女性に謝る事もなく、去っていく。


 本当は、男に女性に謝らせたかったけど、あの手の人間は謝る事がないと今までの経験的に分かっているので、そのまま行かせる事にした。

 男が駐車場から居なくなったのを確認してから、女性の方に向き直る。

「大丈夫ですか?」

「は、はい!」

 女性は少し顔を赤くしながら、頷いてくる。

「有り難うございました。あの人や犬に絡まれた時には、どうしたらいいのか分からなくて・・・、本当に助かりました」

 女性は、まだ顔が赤い。目も潤ませている。少し震えてもいる。

 無理も無いだろう。犬にとってはふざけていただけでも、下手に噛まれただけで怪我をしてしまうだろうし、酔っぱらった男が何をしてくるか分からないというのもあっただろう。

 酔っ払いと犬が居なくなっても、目の前には、見知らぬ男が居るのだから、緊張してしまうのは仕方ないだろう。

 女性がこれ以上緊張し続けるのも可哀相なので、この場を離れようと思った。

「もう大丈夫だとは思いますが、気を付けてくださいね」

「は、はい」

 僕は軽く頭を下げて、

「では、僕はこれで失礼します」

「あ・・・」

 僕は女性と別れて歩き出した。

 地上に出る階段まで来た時、もう一度、女性の方を向いたら、その女性は肩を落として、溜息をついていた。

 どうやら、緊張も解けたみたいだな。よかった。

 そのまま階段を上った。地上に出た瞬間に手を翳す事によって、太陽光が眼に刺さるのを防いだ。

 友達との待ち合わせ時間に余裕も無くなったし、少し走るとするか。

「ホント、出会いが無いなぁ」

 溜息を吐きながら、僕はつぶやいた。



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