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まさか猫種の私が聖女なんですか?  作者: まるねこ


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96 エサイアスの怒り

「ナーニョ! 魔法が使えるんだろ? 俺に教えてくれよ!」


 カシュール君は私の使う魔法に興味があるようで、私と話がしたくてうずうずしている。


「それ以上、近づくな!」


 私の護衛が近づいてきた彼を止めに入った。

 先ほど魔法で攻撃してきた事もあり、護衛たちはかなり警戒している。


 私はどうしようかと考えあぐねていると、エサイアス様たちが戻ってきた。


「ナーニョ様、ご無事ですか? 先ほど子爵子息に魔法をぶつけられたと聞きました」

「エサイアス様、私はこの通り無事です。この程度であれば問題ないです」

「おい! この程度ってなんだっ! 俺はもっと強い魔法が出せるんだぞ!」


 カシュール君は興奮し、自分は凄いのだと私たちに向かって反論している。


 彼は気の向くままに魔法を使ってきたのだろうか。

 子爵は止めてこなかったのだろうか。


 先ほどの態度もそうだが、自分本意で魔法を使っていると遠からず彼は死を選択することになる。魔法が使えることはとても素晴らしい。


 この世界で誰にでもできることではない。だが、その分責任も重い。


 魔法使いはか弱い。


 自覚しなければ魔力剥奪することも視野に入れなければならない。


 護衛騎士が「止めろ」と命令をしているが、カシュール君は更に興奮して魔法を繰り出そうとしている。


「いいわ、下がって。私が相手をします」


 私はそっと指輪を付けて『スールン』と呟く。すると、木のように太い蔦がヒェル子爵と夫人に纏わりついて締め上げていく。


 突然のことに子爵も夫人も驚いているが、徐々に苦しそうに声を上げ始めた。


「ち、父上と母上を攻撃するなんて卑怯だぞ!」

「なら、貴方が助けなさい」


 カシュール君は水の玉を出して投げつけるが蔦には効かない。何度も何度も投げつけるが、蔦は水を吸い太く更に伸びていくだけだ。風魔法も出すが蔦を切ることができない上に、子爵たちにぶつかり、傷を負っている。


「くっそぉ! これでどうだ!」


 ハァハァと息を切らし、大きな火の玉を作り蔦に向かって投げた。


 ……このままでは両親が彼の火で焼け死ぬだろう。


 火の玉が大きな炎となり、蔦をパチパチと焼け始めると同時に、両親の悲鳴にカシュール君はようやく我に返ったようだ。


「父上! 母上!」


 彼は急いで水の玉を出そうとするが、魔力が切れたようで火を消すことができなかった。私はすぐに呪文を唱えて水を掛ける。そしてすぐにヒエストロを二人に掛けた。


 子爵と夫人はどういう状況かすぐに判断したようだ。私に向かって跪き動かない。


 私はそのままカシュール君の前に立ち、頬を強く叩いた。


「いてぇ! お前! 可愛い顔した獣だと思ってたが魔獣だ! お前は魔獣女だ!」


 彼は癇癪を起こして叫んでいる。その様子を見ていたエサイアス様が口を出す。


「カシュールと言ったか。お前は何を見ているんだ? 魔法が使えることがそんなに偉いのか?」

「俺は偉いんだ! 俺がこの街で一番強いんだぞ!」

「先ほど父親たちを殺し掛けたんだぞ? お前のその短慮で、だ」

「……あれは、たまたまだ!」


 エサイアス様の言葉にカシュール君はぐっと言葉に詰まった。視線を下に向け、一生懸命に言い訳を探そうとしている。


「お前はただの騎士だろう!」


 その言葉に子爵は止めに入るが、エサイアス様は子爵に手で制する。


「俺は騎士だが、王宮騎士団でずっと魔獣を討伐してきた。君よりもっと小さい頃からだ。お前はその使える魔法で何故街を取り戻さないんだ? 現に俺たち騎士団は魔法を使わずに街にいた魔獣を討伐している。それ以上のことがあるか?」


「お前だってあの魔獣女の植物と戦ったことがないだろう!」

「……ならやってみよう。ナーニョ様、先ほどの魔法をシャローに掛けて下さい」

「わかりました」


 エサイアス様が合図すると、シャロー隊長は一歩前に出て先ほどの子爵と同じように蔦に囚われる。


 エサイアス様の剣はシャロー隊長に向けている。彼は試しに一本切ってみるが、次々に蔦はシャロー隊長を逃がさないように生えてくる。


「では、いくぞ」


 エサイアスが隊長に声を掛けると、隊長はうなずいた。すると目にも止まらぬ早さで蔦を何度も斬りつけていき、蔦が伸びる勢いよりも剣の動きが早く、隊長をすぐに助けた。もちろん傷一つない。


「……カシュール子爵子息、お前は見てどう思った? 我々は常に魔獣と向き合ってきた。多くの仲間を失い、それでもこうして国や人々の命を守るために巡視をしている。命の覚悟は皆できている。


 お前はどうだ? 癇癪で両親を殺しかけた。魔法が使えることはとても素晴らしい。だがお前は尊大な態度ばかりで何の役にも立っていない。


 ナーニョ様は一人女性の身でありながら巡視に同行してくれている。何千人もの人たちを癒し、私たちと共に何百もの魔獣と戦っている。


 ナーニョ様は落ち人でありながらこの世界を救うために尽力してくれている。魔獣女という侮辱は許さない。


 それにナーニョ様はこの国の王女殿下でもある。王族を馬鹿にするなどもっての外だ。不敬罪に値する。死をもって償え」


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