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まさか猫種の私が聖女なんですか?  作者: まるねこ


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80 次の街へ

 次のカールカールの街までは馬車で一日半ほどかかる。神父様が言っていた通り、強い魔獣はあまりいないが、他の街に比べて魔獣が多く出てきている。


 魔獣の討伐が多ければそれだけ進むのに時間が掛かる。


 結局街に着いたのは三日後だった。


 街道を通るだけで、ゆうに二百は討伐しているのではないだろうか。


 回復魔法があるとはいえ、昼夜問わずに魔獣が出没していれば騎士たちの疲労は隠せない。エサイアス様も隊長たちもそのことを気にしていた。


 街に到着した日と翌日は、急遽騎士たちの休日にするしかなかった。



「ようこそカールカールの街へお越しくださいました」


 出迎えてくれたのはこの街の神官と街の商会長だった。この街は商人の街といってもいいほど様々な店が並んでいた。


 話を聞くと、ここは物流の中間地点になることが多く、沿岸地方の特産品などがこの街に一旦集められ、王都に繋がる街道を通って品物が送られていくらしい。


 魔獣が多く出没するためこの街には護衛する人も集まり、活気があるように思える。そして商人の街というだけあって魔獣が素材として売りに出されていた。


 毛皮や牙、不思議な玉のようなものまである。


 店主に聞いてみると、魔獣を倒して捌いている際にたまに出てくる代物らしい。


 人間の心臓みたいなものではないかと言っていた。だが、どの魔獣にもあるわけではないらしい。いくつか玉が売られていたのだが、どの玉も色が違い同じものは一つとしてなかった。


「おじさん、この毛皮を下さい。あと、この玉は全部欲しいわ」

「お、じょうちゃん。良いのに目がいったね! この玉は不思議な色をしているだろう?高いが全部買うのかい?」

「えぇ、買うわ」

「毎度あり!!」


 店主はホクホク顔で紙袋に入れて渡してくれた。因みに、買うと言って財布を出したのは護衛騎士だ。


 父は私にお財布を持たせてくれなかったの。財布を持てばそのまま摺られてしまうとか、狙われやすいとか色々言われて護衛騎士が管理している。

 心配性の家族だ。


 私がこの玉を買った理由は王都にはないから。

 研究所でローニャと共に研究の材料になれば良いかなと思っている。魔獣の骨でできたチャームは今もしっかり尻尾に付いている。


 骨が魔力と馴染みやすいのであればこの玉も魔力と馴染みやすいんじゃないかなと考えたの。


 そしてノダンの神父が言っていた言葉がすぐに分かった。この街の人たちは年寄りを中心に身体の一部を欠損している人が多い。


 強い魔獣は穴から出てこなかったのだろうが、平民にとってはやはり魔獣は怖い物だ。


 これだけの人数が怪我するほどこの街には魔獣が多くいたのだろう。


 私は買い物を終え、滞在先の神殿に向かった。


「ようこそナーニョ様。お待ちしておりました。私、カールカールの神殿の神官をしているワットです」


 ワット神官は義足を履いていたが、不便さを感じさせないほど颯爽と歩き、にこやかに出迎えてくれた。


 私たちは軽く挨拶をした後、滞在のお願いをする。


 この街の神殿もやはり宿泊所を兼ねているようでワット神官はすぐに部屋へと案内してくれた。


 この世界の神殿は旅人の宿泊場所を提供しているのが普通なのだろうか?


 全てを見て回ったわけではないけれど、安価で泊れるようだ。従業員は孤児院出身の人たち。中には子供も洗濯をしたり、食事を運んだりと大人と一緒に働いているようだ。




 私は部屋に荷物を置いたあと、ワット神官の執務室へと向かった。


 ワット神官の執務室前には聖騎士が立っている様子から、位の高い神官なのかもしれない。


「ナーニョ様、グリークス神官長から知らせを受け取っております」

「そうでしたか。滞在期間中怪我人を治療していく予定にしています。あの、ノダンの街の神官からこの街は肢体の何処かを失った人が多いので治療してほしいと言われました」


「あぁ、ノトか。彼は私の弟なんです。似てないでしょう? 異母兄弟なんですがね、母は先に亡くなってすぐに父に引き取られたが、父が亡くなり、ノトの母も間もなく亡くなった。


 私たちは引き取り手がなく孤児院で育ったんです。まあ、そのまま二人とも神官になった次第ですね。幼い頃にノトを庇い、足をなくしてしまったんです。ノトはずっと後悔しているようでよく義足を作って送ってくれるんです」


 ワット神官はどこか懐かしそうにフッと微笑みながら話をしてくれる。


「そうだったんですね。ワット神官、足を見せてもらっても?」

「えぇ、構いませんよ」


 私は神官の元まで歩いていき、そっと膝を見せてもらう。膝から下は義足で足の付け根は大きな傷跡が残っている。


「魔法を掛けますね」


 そう言ってから私は指輪を付けて魔法を唱えた。


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