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まさか猫種の私が聖女なんですか?  作者: まるねこ


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71 次の地へ

 私は移動時間は食事時間といわんばかりに小袋に詰めたナッツを取り出し、モグモグと食べはじめた。


 たまにポイの実が食べたくなるけれど、この世界にポイの実をまた見たことがないので諦めるしかない。


「皆様、お待たせいたしました。では治療に入りますね」

「ナーニョ様!!よろしくお願いします!!」


 既に怪我人を治療する部屋には、大勢の人が座っている。


 入院が必要な怪我人の治療は終わったけれど、入院するほどでもない怪我人はまだたくさん残っているようだ。


 大勢の人たちを範囲魔法で治療するため効果は落ちるが、それでも『治してくれる』と噂を聞いて、連日人々が神殿に詰めかけているらしい。


 神官との話でこの部屋の座席が埋まるまでの人数を一日の上限として受け入れているのだ。


 私はいつものように大勢の怪我人に向けて『ヒエストロ』と唱えた。


 ゆっくりと淡い光が波紋のように広がり怪我人を包んでいく。そして歓声が上がる。


 魔法で治るのと光を見て治ったと信じる気持ちも治療に大きく効果が出るのだと研究者たちは言っていた。


 気の持ちようは確かに大事だと思う。


 気持ちが魔法の効果を上げているのなら喜ばしい。軽く頭を下げてから部屋を出ると、これでようやく今日の公務は終わった。


 ナッツをもぐもぐと頬張りながら自分の部屋へ戻る。


「ナーニョ様、お疲れ様でした」

「護衛の方々も無理させてしまってごめんなさい。休める時は休んで下さいね」

「お気遣いありがとうございます。神殿では聖騎士の方がナーニョ様の護衛を申し出があり、私たちもローテーションを組み、休んでいるので大丈夫です」

「それは良かった」

「神官からすぐに食事を持ってくると言っておりました」

「わかりました。では部屋で待っておきますね」


 部屋に入ってすぐに靴を脱いでベッドへゴロリと横になる。


 今日も一日が終わった!

 今から湯浴みがしたい!

 でもご飯も食べたい!


 毎日いっぱい動いていっぱい食事をして湯浴みして眠りにつく。王宮の暮らしとは全く違う。


 魔獣の怖さや街の人たちの悲しみを肌で感じるけれど、必死に身体を動かしているせいかな、何がしたいか分からないなんて迷うことはなくなった。


 なんとなくこの旅で自分に答えが出せそうな気がする。



 こうして滞在最終日まで問題なく過ごすことができた。


 畑や街で使われている水も魔法を掛けることができた。なんとなくだが、木々もいきいきとしている気がする。


「王宮騎士団の皆様、ナーニョ様、本当にありがとうございました。またいつでもこの街にお越しください」

「フォード伯爵、食事と場所の提供ありがとう。また立ち寄らせていただきます。では出立!」


 私は馬車に乗り込み騎士たちの後を付いていく。沿道には街の人たちがたくさんいて手を振ってくれている。


 この街に来た時よりもずっと街の人たちは元気になっていて活気が溢れている。良かった。


 そういえば王都も最初はどことなく暗い雰囲気だった。私はこの街で少しでも役に立ったのだろうか。


 少し寂しく思いながらも離れる街に手を振り返す。


「次の街はサイカの街です。ロダンの街から一日ほど進んだ場所にあります」

「そんなに遠くはないのですね。サイカの街はどんな街なのですか?」


「サイカの街は小さな街です。農業が盛んでこの街で作られた農産品が王都の食事を賄うほどです」

「そこが魔獣の被害に遭うと大変ですね」


「そうですね。どの街も自分たちの食糧を賄う最低限の畑や家畜を育てていますが、この街が潰れると王都に住む人々は飢えるでしょうね。幸いな事にこの街の周辺に異次元の空間は空いたことがないので大きな被害は出ていないです」


「今後出る可能性もあるから気にして浄化を掛けたほうが良いかもしれませんね」

「それが良いと思います」


 護衛と雑談しながらサイカの街を目指す。途中、村に立ち寄り休憩する。


 この村でも小さな魔獣は度々出ては悪さをしているようだった。


 私は騎士たちが村の周りを巡視している間、井戸と畑に魔法を流し、村の人の怪我を治していく。大きな怪我をしている人はあまりいなかったが、老人が多く魔法で治療を行うとみんなとても喜んでいた。


 おじいさんやおばあさんたちの喜ぶ姿を見てとても懐かしく思う。


 巡視を行った騎士たちの話では小さな魔獣で倒すのは難しくなかったけれど、遭遇頻度は多いので気を付けた方がいいらしい。


 この日は巡視に時間がかかったので、このまま村で一泊することになった。この村はとても小さな村なのでもちろん泊る部屋はない。


 村の広場で各自テントを張り、早々に休む準備をしていく。


 もちろん私も結界を村に張り、警戒を怠らないようにする。


 ロダンの街では結界を張っていなかったので忘れるところだった。野宿同様気を引き締めていかないと。



 翌日は早朝からテントをたたみ、出発した。


 夜中は一度結界が壊れる騒ぎがあった。魔獣が一匹村の畑に入り込もうとしていたようだ。


 結界の割れる音で気づいた騎士が駆けつけると魔獣は村を走り抜け、畑の野菜を盗って逃げて行ったらしい。


 村の人はよくあることだと言っていた。そして村の人たちは驚いたことに魔獣を普通の獣と変わらず畑に侵入してきた魔獣を捕らえて殺し、その皮を剥いで利用しているという。


 今まで通って来た村や街では捨てることしかしていなかったので利用法があるのなら利用した方がいい。


 馬車で移動中、マートス長官に手紙を送ったらすぐにローニャから返事があった。


 最近、魔獣の研究が進んでいるらしい。


 マートス長官は魔獣が利用できるかどうかも調査すると言っていた。


 実際村の人たちは利用しているからこのことが広まっていけばよいと思う。


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