表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まさか猫種の私が聖女なんですか?  作者: まるねこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/119

67 フォード伯爵視点

「足が戻ったのですね」

「あぁ、アンナ。ナーニョ様のおかげでこの通りすっかり良くなった」


 私は妻のアンナと抱き合い、怪我が治ったことを喜んだ。


 あとは息子の目が覚めるのを待つばかりだった。


 ナーニョ様が神殿に戻った後、医者にアンガスの容態を見てもらったが、医者も驚いていた。医者は神殿の話も聞いて噂は本当だったと言っていた。


 寝返りを打ちながら、何か寝言を言っている。


 私たち夫婦はその様子を見てまた涙が溢れた。


 医者の話では無理に起こしてはいけない。息子はもうすぐ目覚めるから、自分で起きるまで待つようにと言って帰っていった。


 私と息子が大怪我をしてから、我が家は火が消えたように暗く沈んでいた。我が家は街のために一生懸命魔獣と戦ってきた。


 そのことに悔いはない。だが、息子には苦労させたと思う。


 こんな辛い思いをさせるべきではなかった。後悔しかなかった。




 翌日、私たち夫婦でアンガスの様子を見に部屋に入った。


「今日も穏やかな顔をしているわ」

「あぁ、ナーニョ様のおかげだ。きっと痛みが取れたのだろう」


 そう話をしている時、息子の目が開いた。


「ここ、は? ん? 誰? もしかして、父さんと母さん?」


 何年ぶりに息子の声を聞いただろう。言葉にならない思いが溢れ出した。妻も涙で声が震えている。


「アンガス! 目覚めたのか! 良かったっ」

「どうしたんだ? 父さん、そんなに泣いて。少し老けた気がするんだけど?」

「アンガス、お前はずっと五年もの間眠りっぱなしだったんだ。良かった」

「? 五年間寝ていた? 嘘だよね?」


 息子は驚いてベッドから飛び起きようとしていたが、上手く起き上がれなかった。


 ナーニョ様が言っていたように、これからは身体が日常に戻れるように動かしていく必要があるようだ。


「嘘だろ!? 身体が重い。動かないよ!?」

「それは貴方がずっと寝ていたからよ。仕方がないわ。これからは一緒に元の生活に戻れるように練習していきましょうね」

「……そっか。俺、頑張るよ。一日でも早く父さんのようになりたいからさっ」


 私たちは息子の笑顔を見ることができて本当に良かった。



 あれから毎日、妻は息子に寄り添い、短時間の歩行訓練から始め、徐々に走ったり剣の練習をしたりするまでに回復した。


 ナーニョ様の言う通りだった。

 息子アンガスは、寝ていた期間だけでなく、さらに数年分の記憶が欠けていた。


 現在アンガスは二十五歳。討伐に出たのは五年前だが、記憶は十八歳までしかなかった。


 ナーニョ様は真剣な顔で『全く記憶がないかもしれない』と言われていたから覚悟はしていた。


 私たちはそれでも息子が元気でいてくれればそれだけで嬉しかった。


 記憶がそこまで残っていれば十分だ。


 息子にとっては衝撃だったようだ。精神年齢は十八で止まっているのだ。ショックは計り知れないだろう。だが、これからの人生は長い。


 私たちがしっかりとアンガスを支えていくつもりだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ