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まさか猫種の私が聖女なんですか?  作者: まるねこ


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37 王宮への引っ越し

「ナーニョ嬢、ローニャ嬢、少し話があるんだ」


 暗い顔をしたエサイアス様からサロンで話そうと言われ、私たちは彼の後に続いて歩く。


 私たちにとって良くない知らせがなのだろうか。


 私とローニャはエサイアス様の表情を見て不安になる。


 サロンに入り、エサイアス様は暗い表情のまま、ソファにゆっくりと身を預けた。私とローニャは向かいに座り、ロキアさんがお茶を淹れてくれる。


「ロキアさん、いつも美味しいお茶をありがとうございます」

「美味しいと言っていただけて何よりです」


 そんな雑談をした後、彼は意を決したのか私たちに向き直り話をはじめた。


「二人ともよく聞いてほしい。先ほど王宮から連絡があった」

「私たちのことでしょうか……?」


 王宮からの連絡と聞いて緊張が一気に高まる。


 私はカップをテーブルに置いて真剣に話を聞く。ローニャは変わらずお茶を飲みながら耳を彼の方に向けている。


「君たち二人は、これから国王陛下の住む王宮で王女として暮らすことになった」

「……王女というのは陛下の娘ということですよね? 私たちは陛下の養女になるということでしょうか?」

「あぁ。君たちは陛下の娘になる。君たち二人を守るためだと了解してほしい」

「王女になって何か変わることはあるのですか?」

「特に変わることはないと思う。ただ、住まいが王宮になる。正直、君たちと離れるのは悲しいし寂しい。この邸は君たちのおかげ明るくなった」

「そう言ってもらえると嬉しいです。私もローニャもこの邸の方々にはとても良くしてもらって感謝しかありません。第二の我が家ですもの」


 エサイアス様はフッと笑顔になった。その様子を見て私もホッと胸を撫でおろした。


「君たち二人が王女になった時に皆にお披露目をする場が儲けられる予定だ。その時に獣人であることや、魔法を使えることが正式に発表される。


 普段は研究室でいつものように勉強しながら騎士たちの治療に当たってもらい、週に一度だけ王都の神殿で平民たちの治療を行ってもらうように決まったらしい。陛下も二人に無理をさせないために取り計らってくれたようだ」

「陛下には感謝をしなくてはなりませんね」


 私がそう話をしているとローニャは目を輝かせ、尻尾をぴこぴこと動かしながら口を開いた。


「私たちが王女様になるってことは舞踏会で踊るの? 綺麗なドレスを着てオシャレをするんだよね?」

「ローニャ、それは本当?」


「うん、マイアさんが貴族は舞踏会っていうものがあって皆参加するんだよって言っていたもん」

「そうなのね。私たち、この国の勉強を始めたばかりで作法もダンスも分からないわ」


「大丈夫だよね? エサイアス様。お姉ちゃんはエサイアス様とダンスを踊れば良いんだから。私はまだ小さいからダンスしなくていいみたいだし。なんとかなるよ、きっと!」


「ははっ、ローニャ嬢。そうだな。ナーニョ嬢と踊るのは私だ。それは誰にも譲らない。ダンスもマナーもこれから王宮で教えてもらえるし大丈夫だ」


 ローニャの言葉にエサイアス様の表情が和らいだ。


「エサイアス様が側に居てくれるなら安心ですね。良かった」

「ナーニョ嬢にそう言われると素直に嬉しい」


 住むところは変わるけれど、ローニャと離れる事もないし、今まで通りでいいのなら本当に良かったと思う。


 ロキアさん達と離れるのは少し寂しいけれど、こればかりはわがままを言えないのは分かっている。


「エサイアス様、私たちはいつから王宮へ住む事になるのでしょうか?」

「あぁ、君たちがいつ狙われるか分からない。急な話だが明日から住む事になる。心配しなくても着る服や欲しいものは陛下が全て用意してくれるから大丈夫だそうだ」

「……わかりました」


 急遽決まった養女の話。


 城の人たちや王様の家族は私たちを受け入れてくれるだろうか。


 心配になる。

 でもそんな不安を口にしてはいけない。


 口に出してしまったらきっとエサイアス様も、ローニャも心配で無理をさせてしまうから。


 私はぎゅっとテーブルの下で手を握り自分を叱咤激励する。


 大丈夫。

 きっと大丈夫。



 こうして今日一日はエサイアス様の邸でゆっくりと過ごしてロキアさんとマーサさんにこれまでの感謝を伝えた。


 二人がいなければ私たちは路頭に迷っていたに違いない。命の恩人なのだ。




 翌日、悲しい別れではないので私たちは笑顔で二人に別れを告げて王宮に向かった。


 私たちは従者に案内され、エサイアス様とともに王宮へと入った。いつも通る場所と違う方向へと歩いていく。


 すると、通路の先に警備の人が立っているのが見えた。どうやらここから先は二人だけで行くことになるようだ。


「ナーニョ様、ローニャ様、ここから王族の居住区になります」


 従者がそう言うと、居住区から別の従者が立っていて、ここからは彼に引き継ぐようだ。


 先ほどまで案内してくれていた従者は一礼した後、元の場所へ戻っていく。


「私、執事のロジャー・ジェイスと申します。カシュール様よりお二人をお連れするように仰せつかっております」

「ロジャーさん、これからよろしくお願いします」


「ナーニョ嬢、ローニャ嬢、ではまた。何かあれば必ず私に言って欲しい。何があっても君たちを迎えにいくから」

「エサイアス様、ありがとうございます。私たちもこれから一杯勉強して頑張りますね」

「エサイアス様、じゃぁね! また後で騎士団の詰所で会おうね~♪」


 私たちはロジャーさんに挨拶をした後、エサイアス様に手を振り、ロジャーさんの後ろを付いて歩き始めた。


 明るい廊下を歩いていると同じような扉がいくつかある。慣れるまでは迷ってしまいそう。


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