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まさか猫種の私が聖女なんですか?  作者: まるねこ


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19 異次元の空間研究所長官

 帽子を被ったままこの部屋に居た私達をとても怒っているようだ。


 私達はどうすれば良いか分からず目を泳がせていると、陛下から声が掛る。


「マートス長官、そう言うってやるな。これには深い理由があるのだから」

「……理由ですか?」

「ナーニョ、ローニャ、帽子を取ってくれるかい?」


 陛下の言葉に私達は頷き帽子と隠していた尻尾を見せた。


「……!? どういうことでしょうか??」


 長官の驚いた声にローニャはすっかり怖くなってぎゅっと私にしがみつき耳が下がっている。


「彼女達はマナーを知らない以前にこの国、いやこの世界の人間ではないのだ」

「なんと! 本当なのですか!? 私が呼ばれたということは、異次元の空間からやってきたという事ですか?」

「あぁ、そうなんだ。彼女達は猫種の獣人だそうだ。驚く事に短期の空間の方からやってきたんだ」


 マートス長官は驚いて私達を凝視している。


「そ、そうか。この、容姿では確かに目立ってしまう、な。それに異世界から来たのならマナー以前の問題だ。ナーニョ嬢、ローニャ嬢すまなかった」

「いえ、こればかりは信じられない事ですから」

「可愛い娘達だろう? この子たちはこんなに可愛いのに魔法も使えるのだ。凄いだろう?」


 陛下は自分のことのように笑顔でマートス長官に話をする。


 私たちは少しくすぐったい気持ちになりながら黙って二人の話を聞いている。ローニャも少しずつ落ち着いてきたようだ。宰相は相槌を打つように頷いている。


「二人は回復魔法を使用する事が出来るのだ。少し聞いたのだが、指輪の種類により異次元の空間が開く前に予防できるというのだ。凄いだろう?」

「もし、可能であるのならこの世界は魔獣達からの侵略が減るという事ですね。それは凄い! ナーニョ嬢、ローニャ嬢、是非、私達に協力していただけないだろうか?」


 マートス長官の言葉に一瞬躊躇った。


 でもこの場ではっきりと言わなければいけないと思う。私はギュッと手に力を入れて陛下達に話をしようと口を開いた時。


「私の名前はローニャじょうじゃないの! ローニャって呼んで」

「わかりました。ローニャさま、よろしくお願いします」

「まぁ、いいよ! よろしくね!」


 ローニャの言葉に部屋の空気が和やかになった。

 改めて私は口を開いた。


「陛下、私達姉妹は幼い頃、異界の穴から出てきた魔物により、私達以外の村人が全て亡くなりました。そこから私達姉妹は二人協力して生きてきました」

「そうだよ! ナーニョお姉ちゃんはずっと私を守ってきたの。お父さんとお母さんの代わりに。この世界に来たのもお姉ちゃんは私を魔物から庇ったからなの」


 ローニャは魔物に襲われそうになった時の事を思い出したのかぐすぐすと泣き始めた。


「私としては妹の命や生活を保証していただけるなら喜んで協力します。妹はもう少しすれば成長し、大人と変わりなく自立した一人の女性になりますが今はまだ幼い。身体の成長に合わせ、魔力もまだ安定しておらず誰かの庇護が必要なのです」


 陛下たちは私の言葉に納得するように頷いている。


「そうかそうか。ローニャ達は幼い頃から苦労してきたのだな。大丈夫。儂としても二人の生活を保証する。君達二人はこの世界にとって居なくてはならない存在なのだから。今はエサイアスの元で生活しておるし、更に警備を増やして君達を狙う者が出ても大丈夫だ。なんなら儂の孫に迎えても良い」


 陛下はローニャの事が大層気に入っているようだ。


「陛下、流石に孫は、いけません。私の養子という事なら皆も納得するでしょう。いや、我が妻も喜んで迎えてくれます」

「宰相、誰も反対せんだろう。お前がナーニョ嬢達を猫可愛がりしたいだけだろう」


 陛下たちのやりとりを見て抱いていた不安が少し晴れた気がする。


 ……良かった。


 陛下も宰相も私たちのことを悪いようにはしないと思う。これもローニャのおかげね。


「まあ、ともかく。当面はエサイアスの邸で生活されよ。これからは英雄エサイアスと共に城に来て異世界の話をマートス長官に教えてほしい」


 宰相の言葉に私もローニャもうなずく。


「わかりました。私からもこの世界に住む以上出来る範囲の協力いたします。マートス長官、これから宜しくお願いします」

「ナーニョ様、こちらこそ宜しく頼む。ローニャ様も宜しく」

「マートス長官、宜しくお願いします」


 ローニャはペコリと頭を下げると、陛下はニコニコ満面の笑みを浮かべている。


 本当にローニャの事を気に入ったのだろう。猫可愛がりしたくて仕方がない様子だ。


 ローニャは世渡り上手だなと思う。


「では陛下、執務も押しているようですから。後は私がナーニョ様とローニャ様を研究所へ連れて行きます」

「……あぁ。マートス長官、頼んだ。ローニャ、また木の実を食べにいつでもおいで」

「うん! 陛下が用意してくれた木の実はとても美味しかったの。また来るね!」


 こうして陛下と宰相に礼をした後、ナーニョとローニャはまた帽子を深く被りマートス長官の後に付いていく。


「ナーニョ様、ローニャ様、これから研究所に向かうが、きっと研究員達は二人に失礼な事をいうかもしれない。先に私から謝っておく。そして嫌なことはすぐに私に言ってくれ」

「わかりました」


 そして騎士団の詰所を通り抜け、医務室、薬師棟を過ぎ、異次元空間研究所に着いた。


 ここの世界の言葉を読むことは出来ないため、看板がそう書かれているのかは理解出来ない。


「マートン長官お帰りなさい!」


 三十代に見えるくらいの白い服を着ていた男性が長官へ声をかけてきた。


 ここの部屋には五名の研究員がいて、私達が入ってきたのは第一研究室という部屋のようだ。


 部屋には様々な物が置かれていてローニャは目を丸くして眺めている。


 ここの研究施設には第五研究室まであるのだとか。何を研究しているのかといえば、異次元の空間を主に研究しており、対魔獣用の武器や薬品の開発を行っているらしい。


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