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まさか猫種の私が聖女なんですか?  作者: まるねこ


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115/119

115 王都に一時帰還

「お姉ちゃんっ!!!」


 私が転移するとすぐにローニャは飛びついてきた。


「ローニャ、ただいま」

「お帰りなさい。待っていたのっ」


 ギュウギュウ抱きしめてくるローニャを横目に訓練場に父とケイルート兄様が出迎えにきてくれていた。父たちの姿を見て私以外が騎士の礼を取っている。


「ウィンワーズの太陽と星であらせられる国王陛下とケイルート王太子殿下の前に再び立てた事を嬉しく思います。第十二騎士団、ただいま一時帰還いたしました」


 父は手を挙げて応える。


「エサイアスよ、よく戻った。ナーニョ、無事でよかった。心配しておったぞ。この度の帰還、ご苦労であった。王都で少しの間、羽根を伸ばすといい」

「有難き幸せに存じます」

「エサイアス、おかえり。無事で何よりだ。心配していたんだぞ? 後で詳しく話を聞かせてくれ」


「畏まりました。後でケイルート王太子殿下の執務室へと向かわせていただきます」

「ナーニョも疲れただろう? ゆっくり休んでくれ」

「ケイルート兄様、ありがとうございます」


 その後、私はローニャに手を引かれてすぐに王宮に戻った。エサイアス様は騎士たちに話をした後、解散となった。


 彼は騎士団の詰所に行って報告してから邸に戻ったようだ。


「お姉ちゃん、おかえりっ。あのね、あのね……」


 ローニャはいっぱい話をしたかったようだ。


 私たちは部屋に入り、今日は一日ローニャの話を聞くことに決めた。


「そうだ、ローニャ。お土産があるわ。ガーナントの街は工業が盛んだって言っていたでしょう?」


 私は鞄からゴソゴソと箱を取り出してローニャに渡した。ローニャは目を輝かせながらリボンを解いて箱を開けた。


「わぁ! 綺麗!」


 箱から取り出したのは宝石箱。精巧に作られていて箱を開けるとオルゴールが鳴るようになっている。


 流れる音にローニャの耳はピンと宝石箱に向けられ、尻尾はフリフリしている。とても嬉しいようだ。


「大事にするね!」


 ゴロゴロと喉を鳴らしそうな勢いで宝石箱を顔に近づけてはじっくり眺めている。


 ―コンコンコンコン


「ナーニョはいるか?」

「ケイルート兄様!!」


 ソファから立ち上がり、兄を迎え入れるた。


「ケイルート兄様、こっちに座って」

「ローニャ、そんなに引っ付いていたらナーニョが動けないだろう」

「いいもん! お姉ちゃんと離れたくないんだもん」

「ケイルート兄様、時間は大丈夫ですか?」

「なぁに。少しくらい大丈夫だ」


 王太子となった兄は今までとは比較にならないほど忙しいようだ。


 ナーヴァル兄様が手伝ってはいるけれど、私が巡視で回ったおかげで各地の農作物は豊作が予想されており、街道を通る魔獣の脅威も減ったことで一気に物流が大きく動いたのだ。


 そして魔獣という素材の活用。魔力を持つ人間の発見など目まぐるしく情勢が変わり、王宮で働く人たちは本当に忙しいらしい。


「ナーニョ、お帰り。お前のおかげでこの世界の人間は救われた」

「でも、兄様。数年後にはまた異次元の空間が開いてしまいます」


「大丈夫だ。魔法を使える者の教育もしっかりとしているし、指輪だってまだまだ研究の余地がある。この国にはナーニョもローニャもいる」


「そうだよ! 今、カシュール君だって頑張っているんだよっ。ノーヨゥルの人たちから定期的に連絡が来ていて治療魔法を使える人が出てきたみたい。私たちが地域を回らなくても魔法を使う人たちが増えれば負担も違ってくるでしょう?」


「……そうね。少し心配しすぎていたかも」

「そうだぞ? ナーニョは心配ばかりしている。大丈夫だ。ナーニョとローニャのおかげでこの国、この世界はどんどんと希望に満ち溢れている。


 これからはナーニョたちがいた世界のように平和で安定した国になっていくと思う。心配するな」

「はい。兄様」


「そうだ、ナーニョたちが帰還した理由は知っているよな?」

「ケイルート兄様の立太子の儀をするからですよね?」


「それもあるが、今回世界ではじめて異次元の空間を閉じることができたことを公表し、国を挙げて祝うことになっているんだ。俺のことよりナーニョたちのことがメインだ」


 私はケイルート兄様から聞かされて目を見開いた。


 詳しく聞くと、私とナーニョの魔法や研究所の人たちの指輪開発、エサイアス様たちの巡視、異次元の空間を閉じたことが発表されるようだ。そして魔力を持つ者の紹介。


 私も勲章や褒美がもらえるのだとか。


 嬉しい。

 何を買おうかなと話の途中でウキウキして気持ちが夢の世界に旅立ってしまったのは仕方がない。


 兄様は苦笑していたわ。


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