102 食糧問題
「エサイアス様、騎士団の食糧は足りそうですか?」
私は騎士団の駐屯所に行き、不安に思っていたことを口にした。
「そうだな。街で補給しようと考えていたけれど、街が復興途中では食糧が補給できないし、次の街に出るまでは厳しいが、魔獣を狩るか、食糧を少し減らしていくしかないな」
「なら、街の外にある荒れた畑を借りたらいいんじゃない? ローニャの魔法だったらすぐに育つよ?」
「ローニャ様、本当か? それは助かる」
「まっかせて! でも騎士の人たちに運んだりするのを手伝ってもらってもいいかな?」
「ああ、それはもちろんだ」
エサイアス様はすぐに隊長たちを呼び、街で育てている植物の種を貰い受けるのと、街の外で荒れた畑を使いたいと子爵に相談するように指示をした。
隊長たちは部下たちを数名引きつれて子爵の所へ行く人と、畑の様子を見に行く人を集めた。
「お待たせしてすみません」
しばらく待っていると、子爵の所へ行っていた隊長たちが子爵と共に戻ってきた。
「エサイアス様、申し訳ありません。私どもの街では食糧がギリギリであまりお譲りすることができないのです」
「あぁ、子爵。無理を言ってすまない」
するとさっきまで私の隣にいたローニャがぴょんと立ち上がり、子爵に言った。
「ヒェル子爵、大丈夫だよ! ローニャがちゃんと育てるから見てて!」
子爵が持っていた小袋に少しだけ入った穀物の種をローニャが受け取り、畑の方へ駆け出していった。
「ローニャ、そんなに走ったら危ないわ」
「大丈夫、大丈夫!」
エサイアス様や騎士たちはローニャのはしゃぐ姿にフッと笑顔となり、ローニャの後を追った。
放置された畑は荒れ果てて雑草が一面に生えて土は固くなっている。子爵はこの放置された畑を見て心を痛めていた。
「お姉ちゃん、やるよ!」
私はローニャと共にマーヴァの指輪を付け、魔法を唱えた。
指先から炎を出し、四方から囲うようにして内側に向かうように炎で雑草を焼いていく。これを四度ほど繰り返すと畑は土と灰だけになった。
「凄い。息子から聞いてはいましたが、魔法でこのようなことができるのですね」
子爵はそれ以上言葉が繋げられない様子だ。
「次は私ね!」
ローニャは自分の持つサーローの指輪で先ほど畑に戻した場所の土質を改善させていく。灰が土に混ざり、固かった地面は掘り返され柔らかい土になっていった。
「隊長さん、間隔を空けて均等に一粒ずつ蒔いていって欲しいな」
「分かりました。お前たち手伝え!」
隊長さんの掛け声で一人数粒ずつの種を植えていく。私は水魔法で蒔いた種に水を与えた。
「見ててね! ここからが凄いんだから!」
ローニャは指輪を変えて『サルン』と唱えた。すると、一斉に種は発芽し、双葉が生えてきた。
更にローニャは指輪を変えてサルードの魔法を唱えた。ニョキニョキと成長し始めた植物たちに子爵や騎士たちが感嘆の声をあげている。
「お花が咲いたら受粉させてちょうだい」
騎士たちは花が咲き始めた植物を揺らし、指で受粉させていく。こればかりは人の手が必要になる。時間があれば虫たちがしてくれるのだが、今は虫たちに頼ることは難しい。
「受粉を終わらせました!」
騎士たちが次々にローニャの元に戻ってくる。
「じゃあ、最後の仕上げね!」
サルードの魔法を再び唱えると、植物に実が付きはじめた。
「おぉぉ。実がなったぞ!」
「できたわ! 収穫をおねがいしまーす☆」
ローニャの言葉で隊長と騎士たちは穀物を収穫していく。
「凄い。こんなに短時間で穀物を収穫できるなんて。これなら飢えとは無縁になりそうですね」
子爵は笑顔で言った。
「確かに魔法を使えば短時間で収穫はできるのですが、成長を促す魔法『サルード』はあまり使わない方がいいのです」
「どうしてですか?」
「植物を無理やりに成長させると土が弱ってしまうのです。今回は荒れた畑を使ったので雑草が栄養となり収穫まで一気にできました。日を置かずに育てようとしても土の栄養が足りず、実が付かないこともあるんです」
「なるほど、そうでしたか」
子爵は納得したようだ。
「でも、この穀物の量では騎士団で賄うことはできるけれど、余裕はなさそうだ」
エサイアスが思ったことを口にした。
「えぇ、そうですね。今日の収穫はこれでおしまいです。明日、騎士の方々にはまたお手伝いをお願いしなければいけません」
「明日は何をするのかな?」
「巡視の途中で雑草を拾い集めて欲しいのです。今日の畑の雑草と同じで肥料を作るのです」
「なるほど。騎士にとっては簡単なことだ。お前ら、食糧のために頑張れ!」
「「「ハイ!」」」
今日収穫した種を基に明日は更に畑を広げて収穫する予定だ。
「それにしてもローニャの魔法はいつみても凄いわね。私ではここまで立派に成長させるのは難しいわ」
「でしょう? ずっと研究所の畑で練習してたんだ!」
私たちは増えた穀物を笑顔で抱えて今日の予定を終えた。
流行り病で高熱に魘されている間にストックが切れ、更新が止まってしまいました。
すみませんでした。汗




