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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第4章 リザードマン編
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誰か呼んだかい?

 リザードマンは水辺に本拠地を作る。

 河の土手や、湖畔、中洲、浮島などに天井の抜けたトンネルというか、塹壕みたいな通路を張り巡らす。

その上に葦や小枝で屋根を葺いて、そこで暮らすのだという。

 「下弦の弓月」の本拠地も、三日月湖の北端の湖畔に作られていた。

 入り口は湖に面した一つだけで、入ってすぐに三角形の広間がある。そこで客を出迎えたり、部族の会議をしたりするそうだ。

 その広間から、真っ直ぐに太い通路が伸びていて、その途中途中に左右に分かれて、通路や細長い部屋が並んでいる。突き当たりに少し小さい三角形の部屋があり、そこが族長の部屋になっていた。地底湖に降りる階段は、族長の部屋の手前の通路を右に行った先にある。

 湖畔から陸に向かって緩斜面を掘り進んだ形なので、階段の通路と族長の部屋は、屋根ではなく、地下トンネルになっている。

 全体を大まかな形で表現すれば、魚の骨だ。

 

 「このフィッシュボーンを領域化します」

 「あい」

 領域化は地底湖だけに止めておこうとも考えたんだけど、外敵を発見するにも迎撃するにも地上部からダンジョン化した方が、有利というわけで、飛び地に地上開口部ができました。

 さて、領域化したはいいけど、ここの守りはどうしようか。

 「主殿、どうせならここを占拠したことを近隣の勢力に通告したらどうだ?」

 ロザリオは強気の外交を提案してきた。

 「ダンジョンマスターの存在が抑止力になると思う?」

 「はぐれの集団だったワシらはともかく、他の部族ですと、恐れて近づかないか、徹底抗戦してつぶしにくるか半々ぐらいでしょうか、ジャー」

 へたに連合でも組まれるとやっかいなんだよね。できれば不可侵地域だけど、たまに無謀なのがちょっかいを掛けてくるぐらいが望ましいんだけど。

 「そしたら呪われた土地ってのはどうすか?水竜神の怒りをかって、魚が住めなくなった系っす」

 「そんな伝説があるんだ」

 「アタいが聞いたのは、どこかに悪魔と契約して生きる肉塊になったオークが、女エルフの奴隷と一緒に生き埋めになっている話だったけど、ジャー」

 それは実話です。


 「この近辺でよく噂されるのは、黄泉返りの魔女でしょうな。戦で倒れた戦士の魂を湖の底に引き寄せると言われております、ジャー」

 「あー、それも祖父さんからよく聞かされたっけ。魚の骨を食べ残すと、黄泉返りの魔女が来て、魚の骨をスケルトンにしちゃう話だ、ジャジャ」

 それ怖いかな?


 なんにせよ、しばらくは近づきたくないと思わせる演出は必要か。

 「キャッチャーでも置こうか」

 「いや、それはさすがに自重した方がよくないか?主殿」

 「おいらも、そう思うっす」

 「キュキュキュ」

 一斉に反対の声があがった。眷属には無害なんだから怖がることはないと思うんだけど、寝覚めが悪いらしい。

 「コア、幻覚、混乱、呪い系の設置リストを出してみて。コスト500以下で」

 「らじゃ」


 設置リスト:幻覚、混乱、呪い

触れると罠(確率低):幻覚 50DP、混乱 100DP、呪い 150DP

ガスの罠(確率低)3mx3mx3m:幻覚 100DP、混乱 150DP、

壁模様の罠(確率中)9mx9mx3m:幻覚150DP、混乱250DP、呪い500DP

鏡の罠(確率高):幻覚200DP、混乱300DP、呪い500DP

壊すと罠(確率高)1回のみ:幻覚100DP、混乱150DP、呪い200DP


 ホラー系ダンジョンに付き物の精神系罠なだけあって、かなりのラインナップだね。これを今回のコンセプトにあわせて配置すればいいかも。

 「テーマはなんすか?」

 「朝、目が覚めると、うちの隣に魔女が引っ越してきてた件」

 「ネタスレっす、誰も釣れないっすよ」

 

 「祖父ちゃんどうしよう、魔女が来ちまったらしいぜ、ジャジャ」

 「「釣れた」」

 「くまー」



  「三日月の槍」本拠地


 豪勢な宴会で「凍結湖の鮫」の若頭とその配下をもてなしたトロンジャは、翌朝、残りの手下を全て引き連れて、再度の侵攻作戦を開始した。

 「おいおい、本拠地空にして大丈夫なのか?ジャー」

 さすがに気になった若頭がトロンジャに尋ねた。

 「いいんですよ、これでダメならアタシの運勢もそれまでだってこと」

 そう言いつつも、トロンジャはこれで終わりにする気はなかった。自分1人ならいくらでもやり直す自信があった。この若頭の愛人に納まってもいいし、もっと上の親分の中にも、自分にいやらしい目を向けてくる者もいた。

 ただ、男に媚びて生き延びるには、手下達は邪魔だった。

 彼らにとって、先代の妾から女族長にのし上がったトロンジャが、他の部族の親分の妾になるのは我慢できないことだろう。男の誇りとやらは、女のそれとは微妙に違う。

 誇りの為に潔く死ぬなんて、まっぴら御免だ。

 だから今回は全員で行く。勝てれば問題ないし、負けたら後腐れが無くなって動きやすくなる。それがトロンジャの計算だった。


 若頭は迷っていた。

 勝ち戦に乗って、上前を撥ねようかと思って出張ってきたら、なんだか雲行きが怪しくなっていた。

 確かに「下弦の弓月」はもう部族としてはやっていけないだろう。どこかの有力部族に吸収されるのは間違いない。だが、「三日月の槍」を撃退した助っ人が気にかかる。

 藪をつついて蛇を出すより、この女を見限って、空になった「三日月の槍」の本拠地を占領した方が利口なような気がする。

 だが、それをすれば他の部族からは総すかんをくらう事になる。せめて「下弦の弓月」と繋がりが残っていれば、最初から寝返るつもりの増援だったと言い張っても良いが、その手もききそうにない。

 適当に戦って、「三日月の槍」の勢力をすり潰してもらって、手打ちにする。

 「そこらが落としどこかな、ジャー」

 「もう勝った後の算段ですかえ?」

 はははは  うふふふ

 2人の空虚な笑い声が、三日月湖の湖面に響き渡った。

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