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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第3章 オーク編
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準備万端仕上げを

 帝国の亡霊による危機は去った。だがダンジョンに押し寄せる危難はまだ続く。


 「豚男爵が剣呑な捨て台詞を残していったね」

 「悔し紛れの戯言なら良いのだがな」

 「この辺りに帝国の末裔って住んでるのか誰か知ってる?」

 「キュキュ?」 「ギュギュ?」 「グヒィ?」

 いや、君たちは知らないだろうけどね。


 「アイスオークのことじゃないかと思うっす」

 「ワタリは以前の部族で聞いたことあるの?」

 「遭遇する危険のある敵対部族として教えられたっす。確か名前が「貪欲なる氷斧」だったと」

 うわ、さすがオークだ。氷属性より欲望が先にきてるネーミングだ。

 「確かヨーク男爵家の跡取りがドン・ヨークという名だったはずだ」

 「え?あの豚男爵が家長じゃないの?」

 「ヨーク家はハイランドオーク帝国の中でも武断の家として名が知れていた。兄弟が全員戦死したので末弟の奴が継いだが、すぐに廃嫡、有能な若者を養子にとって家を継がせたはずだ」

 「じゃあ豚男爵は?」

 「正確には元男爵だな。幽閉された先で鬼畜の所業をしていたコン・ヨーク元男爵だ」

 「うわ、急にしょぼくなった」


 「奴自体は小物でも、そそのかされて動く部族がそうとは限らないぞ」

 確かに、アイスオークと聞くと、オークの変異種で氷属性を使う手強い印象が思い浮かぶね。

 「ワタリ、アイスオークまたは「貪欲なる氷斧」の情報は他にない?」

 「おいらが聞いたのは、氷河の奥に住んでいて、兵士がスノーゴブリンの部隊長並みの強さで、斧使いってことぐらいっすね」

 冷気耐性があって、一般兵がランク3で、主武器が斧かー。

 「部族の規模は?」

 「良くはわからないっす。でも祈祷師の爺様が「うちより数で3倍、戦力で6倍じゃ。戦う選択肢はないのじゃ」ってつぶやいてたっす」

 戦闘員の数で90-100、その大半がランク3で、部隊長達はさらに上ってことだね。

 「ありがとう、参考になったよ」

 豚男爵の遺言が、ただの嫌がらせなら問題ないんだけど、末裔達が「祖先のお告げ」を信じて襲ってきたとしたら・・・

 「コア、迎撃準備開始だ!」  「ん!」



 まずは遺跡の階段を地上に繋げる。大部隊をコアルームのあるエリアへ引き込みたくはないからね。

 「コア、遺跡の階段を地上へ拡張して。形状は階段1で」  「ん」

 「やんまー隊は地上開口部を外から掘って見つけたように偽装。新設された階段は土で薄く覆って年代をごまかして」 「ん」 「ギュギュー」

 「ケンチームは手分けして、3つの主要出口で警戒を。何かが接近してきたら、すみやかに隠れて報告して」 「ん」 「バウ」

 主戦場は遺跡の十字路とりんごの木の小部屋かな・・・あっ

 「ロザリオ、戻ってこれそう?」

 「いや面目ないが水牢から上に戻れないで困っている」

 「落とし穴を開いてロープをたらす?あれ?でも豚男爵は手下のスケルトンファイターをどうするつもりだったんだろう」

 「確かに妙だな。陽動にしても無視したら戦力外になるわけだし」

 「気絶したロザリオを引き上げたはずだし・・・どこかに秘密の通路でもあるのかな」

 僕は遺跡の全体像を思い浮かべる。

 「食堂側は狭すぎるし、あるとしたら牢屋側かな」

 「ロザリオ、牢屋側の水面すれすれの壁を調べてみて。あるとすれば真ん中辺りだと思う」

 「了解した」

 「ワタリとアサマは遺跡の牢の右手の壁を調べて」

 「ういっす」 「ギャギャ」

 「それとコアは骨巨人と黒魔道士の死体を吸収しておいて」 「ん」


 正式には骸骨食人鬼騎士スケルトンオーガーナイトというらしい骨巨人(クロコの印象によれば)はランク6、黒魔道士(やはりクロコにはそう見えた)もランク6だった。6体の骸骨戦士より、骸骨騎士を2体召喚した方が強かった気もするが、偵察には向いていないということなのだろう。

 黒魔道士は正式名称はホーンテッド・ワイト・ネクロマンサーという長い名前だった。スキャンできなかったから詳細は不明のままだ。屍霊ワイト死霊術士ネクロマンサーまではわかるが、たたられたのはどちらだったのか。

 とにかく2体で360DP入った。この2体は戦闘地域がこちらの領域ではなかったので撃退ポイントは残念ながらない。先に撃退した骸骨戦士12体分のポイントは、豚男爵を追い払った時に一括して入って来たので、さらに240DPが加算される。このDPで防衛力を増強しよう。


 「主殿、指定された壁に何か違和感があるのまではわかったが、開け方がわからない」

 「了解、そこで待機してて」

 「できれば早く頼む。私を乗せているクロコとグレコが辛そうでな」

 「「シャー」」

 「ワタリの方はどう?」

 「今、隠し扉を見つけたところっす。牢屋の右側の二つ目の壁にあったっす」

 「了解、急いでロザリオを引き上げて」

 「ういっす」


 「コア、十字路の槍衾も復帰させて」 「ん」

 「同じく触れたら鉄格子を玄関ホールの入り口に設置」 「ん」

 「その鉄格子に触れたら範囲属性(旋風)弱を玄関ホールの床中央に設置」 「ん」

 あとは・・・

 「五郎〇チームは遺跡の兵士待機部屋で待機。アップルチームは反対側の部屋で待機」

 「ん」 「グヒィ」 「ギャギャ」

 「コマンド部隊AASは、小部屋改めリンゴ部屋を奇襲できる位置にそれぞれ隠れて。ワタリはそっちが済んだらリンゴ部屋で待機」

 「ん」 「ギャギャ(了解しました)」 「了解っす。おいらは隠れてなくていいんすか?」

 「ワタリにはお願いすることがあるから、それがすんだら適当な場所に隠れて」

 「らじゃーっす」

 作業場からこっちに進んでくるのは少数だと思うけど、ワタリ達だけだと損害がでそうだね。見張りのケン達を回すか、増援を召喚するか・・・

 「主殿、私はどこに居ればよいのかな」

 「ロザリオは中央ホールで休んでいて。ボロボロでしょ」

 「なに、私は疲労しないからまだ戦えるさ」

 「皆の見せ場を取らないようにね」

 「ギャギャ」 「グヒィ」

 「ああ、悪かった。皆の力を疑ったわけではないのだよ。では、ここで高みの見物としゃれこもう」



 その時、チョビの吼え声が響いた

 「バウバウ」

 「きた」

 「本当に来たんだ。しかも早い」 「ん」

 敵のデータが送られてくる。

 亜人15~20体、接近方向は北西から、侵入想定経路は遺跡の開口部か。

 「やんまー隊は巣穴に退避。チョビは下がってリンゴ部屋でワタリに合流。ケン達は他に別働隊がいるかもしれないので、出口警戒を継続して」

 「ん」 「ギュー」 「「バウ」」


 アイスオークが最大で20体、ほぼ僕らの戦力と同等か。地の利はこちらにあるけど、アイスオークの種としての強さが未知数だから、戦ってみないと結果はわからない。


 「さあ、アイスオーク御一行様、奈落の底にご招待だ」

 「だぁ」


DPの推移

現在値: 63 DP

撃退:スケルトンファイターx12 +240

吸収:骸骨食人鬼騎士 +180

吸収:屍霊術士 +180

拡張:階段1 -15

設置(復帰):触れると両側から槍衾 -20

設置:触れると落とし格子 -50

設置:触れると範囲属性(弱) -100

残り 478 DP

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