表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第3章 オーク編
63/478

帝国の逆襲

 ヘラジカの湖と呼ばれる湖の北西に永久凍土の大地があり、その一角に、温暖化にも関わらず融け残った氷河がある。

 そこにアイスオークの部族、「貪欲なる氷斧」が住み着いている。彼らは古代ハイランドオーク帝国の末裔と自称し、寒冷気候に順応した進化種族だと豪語していた。実際には知能は低下しており、脳筋になっただけだという話もあるが。

 それはさておき、その「貪欲なる氷斧」の族長ゴウ・ヨークが眷族を集めて号令した。


 「聞け!我が部族の精鋭達よ、ブヒィ。今朝、俺様の夢枕に我等が部族の祖であるドン・ヨーク様がお立ちになった、ブヒィ」

 「「ブブブーーーヒィ」」

 聴衆がざわめく。なにしろドン・ヨークと言えば、古代ハイランドオーク帝国で男爵位まで賜った伝説の豚物だ。

 「ドン・ヨーク様は、自らの墓所がエルフの女騎士に荒らされて冒涜されたことを嘆き悲しんでおられた」

 「「ブヒィブヒィブヒィイ」」

 聴衆が再度ざわめく。だがこれはエルフの女騎士に興奮した為のようだ。

 「我らは始祖の御霊の安らぎの為に、また女エルフの騎士に屈辱を与える為に出陣する!」

 「「オークッ!オークッ!オークッ!」」


 「先方はこの麦わらのブウが勤めるでブヒィ」

 「兄じゃが行く事もあるまい。この小枝のフウで十分かとブヒィ」

 「レンガのウウも準備万端だぜブヒィ」

 族長ゴウ・ヨークは部族が誇る戦士長達を満足げに見守っていた。

 「我が部族が誇る狼殺しの3兄弟が相手では、エルフどもも、ちと哀れだな、ブヒィ」

 「敵に情けは無用だぜ、族長ブヒィ」

 「わかっておるわ、だがやりすぎて殺してしまっては楽しみがなくなるからな、ブヒィ」

 「そこらへんはまかせてブヒィ」

 「エルフの女騎士は生かさす殺さずブヒィブヒィ」

 「「「オークックックッ」」」


 

 その頃、ダンジョンでは、

 「なんだ、急におぞましい寒気が」

 ロザリオが両腕で自分の胸を抱きしめるが、肉が付いていないので、傍から見ていてよけい寒そうに見える。

 「寒さも感じれるんすねー」

 「ギャギャ(ワタリさん!)」

 骸骨の身体に落ち込んでいたロザリオに対して、配慮のなさをアズサが咎めた。

 「かまわぬよ、もうあきらめがついた。仲間の皆も気味悪がったりしないしな」


 当初は、変わり果てた自分の姿に落ち込んでいたロザリオだったが、それを立ち直らせたのはまーぼーだった。自分の寝床にするはずだった藁束を、コアに頼んで、アズサ達に三編みに編んでもらったのだ。

 それを部屋の隅で体育座りしていたロザリオに運んでいった。

 「ギューギュー」

 「ん?私に何か用か?」

 「ギューギュー」

 「この紐をくれるのか?なぜ?」

 「ギュギュ」

 「そんなに私は暗かったか?」

 「ギュ」

 「そうか、それでプレゼントを?」

 「ギューギュー」

 「ありがとう、でもこれはどう使うのだ?」

 「ギュ」 「ん」 

 「頭に結んで後ろに下げる?ああ、なるほど、付け毛の代わりなのだな」

 細い縒り紐を鉢に巻くと、三つ編みが後ろに垂れ下がってポニーテイルに見えなくもない。

 「どうだ、似合うかな?」

 「ギュギュ」

 「ははは、ありがとう。お前様は優しいな」

 まーぼーを抱きかかえながら、久しぶりにロザリオが笑っていた。


 それからロザリオは平静を取り戻した。回りもそんなロザリオを喜んで、いろいろ世話を焼いた。

 今作っているのはお面だ。

 しゃれこうべだと、どうしても暗がりですれ違うとギョッとするので、お面をしたらいいんじゃないかという案がでたのだ。

 木彫りだとすごい時間がかかるので、土で形作って素焼きにすることにした。

 土面である。遺体があれば粘土で型がとれたのだが、骸骨だと復元の技能が必要そうだ。無い物ねだりはやめて、各自の想像でつくることにした。

 あまり薄いと焼いたときにひび割れしやすいので、注意する。顔にフィットするように、ロザリオの顔骨に沿った曲面を木型でつくり、そこに粘土をのせてから慎重にはずす。

 あとは目鼻を木のへらで微調整していく。目の場所には穴を開けるし、口元も穴を開ける。骸骨でも視界は遮られると見えないらしい。口元をあけるのは声がこもらないようにだ。


 「今度は負けないっす」

 食器作りでおいていかれたワタリがリベンジに燃えている。他の皆もかなり熱を入れている。

 できあがった物から順に、乾燥室でじっくり乾かしてから窯で焼く。

 なんとか全員の土面が割れずに完成した。


 そして発表会当日。

 自慢の土面を手にした参加者が、審査員の前で、順番を待っている。

 審査員は僕とコアとロザリオだ。

 審査員の二人以上が合格で採用になる。

 エントリーナンバー1番。 シナノの作品「ハニワ」

 「素朴な風合いと簡便な目口が印象的だね。でもちょと手抜きすぎ?」

 「ぽお」

 「悪くはないが、どこぞの魔王と被っているから却下だな」

 審査結果はx〇xで不採用です。

 「ギャギャ(がっくり)」


 エントリーナンバー2番。 アサマの作品「ハンニャ」

 「荒々しい表情がロザリオの本性を現しているのかな?」

 「ぶぅ」

 「私はこんなに怖くはないぞ」

 審査結果は〇xxで不採用です。

 「ギャギャ(自信あったんですが)」


 審査はまだまだ続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ