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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第3章 オーク編
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騎士の誓い

 銀鎖の十字架を拾い上げて、首に掛けた。

 「さあ、戻ろう」

 なにか言いたげなアズサ達を急かして、隠し扉から牢獄を通って十字路までもどった。

 途中の部屋もすべてが土塊に戻っていて、石の壁と扉だけが、古びたまま残っているだけだった。

 

 階段を登ると、コア達が出迎えてくれた。

 「ただいま」 「さぃ」  「ギャギャ」

 探検の様子を聞きたがる皆を宥めながら、コアルームに集合した。

 コアに食事を変換してもらい、それを食べながらポツリ、ポツリと、さっき遭遇した不思議な物語を話して聞かせた。

 皆も探検隊の様子から何かを察して、神妙に耳を傾けていた。

 ワタリが扉の陰からクリティカルを出した所では、さすがに賞賛の声があがり、そのあと芸風が変わった話では、元に戻そう派とこのままの方が良くないか派に分かれて論議が巻き起こりそうになった。

 そして最後に、呪いが解けて全てが塵になった話をしたあと、銀鎖の十字架を見せた。


 しばらくは誰も何も話さなかった。ただ親方が蝗をかじる音だけが部屋に響いている。

 「千年でござるか」

 「ギャギャギャ(ずっと1人で)」

 「ん・・・」

 探索が終わったら眷属になってくれるか交渉しようと思ってたんだけど、その機会も失ったね。

 「そういえば、コア、アンデッドって眷属化できるの?」

 チュートリアルでスケルトンがいたから、ダンジョンマスターが使役できるのは間違いないにしても、あれが召喚なのか、創造なのか、実は単なる死霊術魔法なのかわからなかったし。

 「ん」

 コアが肯定とともにアンデッドの眷属化方法のデータを送ってくれた。


 方法その1:死霊術で造られたあとで、はぐれになったアンデッドを普通に眷属化する。

  スケルトンやゾンビなど。

 その2:他者に使役されているアンデッドを上書きして眷属化する。使役者とのランク差で成功率が上下する。 スケルトン、ゾンビ、グールなど。

 その3:自然発生したアンデッドを説得の上、眷属化する。

  ゴースト、デュラハン、バンシーなど。

 その4:上位アンデッドの眷族を眷属化する。祖となる上位アンデッドを倒さないと難しい。その後ははぐれとなるので、その1に順ずる。

  ワイト、レイス、ヴァンパイアなど。


 んー、この中で当てはまりそうなのは、その1か3なんだけど、本人がいないからなー。どこかに残留思念でも残ってないかな。そしたらゴースト扱いで呼び出せるかも知れないし。

 「コア、この十字架に眷属化試したらどうなるかな?」

 「ん~~、なぃ」

 「だめか」  「んん」

 「え?できない、じゃなくて足りないんだ」  「ん」

 そうか、もっとロザリオの思いが篭っている物があれば可能性はあるんだ。でも身体は全部、塵になってしまったし・・・


 あ、もしかしたら!

 「コア、遺跡を全域、領域化できる?」  「うん」

 「ワタリとアズサは金盥を持って淵にいって、ミコトを水に入れたまま遺跡の十字路まで運んで」

 「承知」 「ギャギャ(はい)」

 「アップルチームとコマンド二人はロープを持って先に十字路で待機」

 「ん」  「「ギャギャ(了解です)」」


 「アンギャアアーー」 バリバリバリ

 あ、ワタリの芸風が電気ショックで戻ったみたいだ。アズサ、企んだね。


 階段まで来ると、すでにコアの領域化は進行していて、淀んだ空気は換気され、誇りも床の隅に吹き寄せられている。僕らが歩く速度と同じテンポで領域化が進むので、まるで遺跡が命を取り戻しているように見える。

 十字路には木の板が渡しっぱなしになっていた。僕らの運び込んだものは時の巻き戻しによる影響は受けなかったようだ。

 しばらく待つと、髪の毛をチリチリにしたワタリと、満足げなアズサがミコトを抱えて降りてきた。

 「酷い目にあったっす」

 いつもの口調でワタリが愚痴を言う。

 「皆に心配かけた罰だよ」

 「とほほ」


 開きっぱなしの落とし穴は、もう罠としては機能していないけど、深くて曲がっているので下を窺うことができない。誰かが降りてみるしかないだろう。

 「誰かロープで補助するから降りて様子を調べてきて欲しいんだ」

 「ギャギャ(私が降ります)」

 「ギャギャギャ(ここは隊長の私が)」

 「おいらが降りるっすよ」

 「「ギャギャ(どうぞどうぞ)」」

 「はめられたっす!」


 ワタリの身体をロープで固定する。綱引きのように前後に引っ張るなら腰に回すだけですむけど、吊り下げて体重を支えるには多点支持しないと無理だ。両足の付け根と両脇、腰と肩をロープで繋いで体重を分散する。ワタリの行動がかなり制限されるけど、落下するよりはマシだと思いたい。

 さらに命綱は2本にして、3人ずつで支えながらゆっくり下に降ろす。

 「手を離しちゃダメっすよ、絶対っすよ」

 「ギャギャギャ(これは離せって言ってるのか?)」

 「ギャギャ(ワタリさんなら、ありえますね)」

 「ネタじゃないっす!」


 ワタリの報告によると、地下の水牢は9mx15mx6mの巨大な水槽の形をしているという。6mというのは水面から天井までの高さで、水は濁っておらず透明度は高いものの、底は暗くて深さは判別つかないらしい。

 領域化が済んで、側に浮いているコアに聞いてみた・

 「コア、水底まで管理できてる?」     「んん」

 僕らの誰かが水底まで潜らないと領域化の条件が成立しないみたいだ。

 「ミコト、頼んだよ、底に何か沈んでいたら拾い上げて」

 「ん」  「ピュイ」

 金盥をスロープまで降ろして、そこからミコトを放流した。


 すぐにミコトからコアに反応が返ってきたらしい。

 「った」

 何か発見したようだ。ミコトが咥えてサルベージして、吊り下がったワタリが受け取って、合図とともに

ロープを引き上げる。

 「鎖帷子っすね」

 水底から見つかったのは銀色の華奢な鎖帷子だった。

 「他にはない?」  「るぅ」

 ミコトがもうひとつ見つけたようだ。

 「今度は剣っすね」

 細身のロングソードで、柄に銀の装飾が施されている。


 ロザリオは罠に落ちたときに、鎧を脱いで泳いでいたといっていた。剣は失神したときに取り落としたんだろう。長い間、水に沈んでいたのに、どちらもさびついていない。これに賭けるしかない。


 久しぶりに広い場所で泳げて嬉しそうなミコトはそのままにしておいて、皆で男爵の寝室だった場所に移動する。少しでもロザリオの思念が残っていそうな場所だ。牢屋も考慮したけど、あそこには良い思いではないだろうから止めておく。

 ロザリオが最後に立っていた場所に鎖帷子を置き、側に剣を添えて、首のあたりに十字架を掛ける。

 祈るようにコアに願う。

 「コア、眷属化を」  「うん」

 遺品から白い光の柱が立ち上り、うっすらと白い靄のようなものが人型に浮き上がった。

 

 でも、それだけだった。

 「ダメか」

 この遺品だけじゃ足りないのか・・・


 「ギャギャギャ(剣を捧げたかったって・・・)」

 「アズにゃん、何かいったっすか?」

 「ギャギャギョギャ(ロザリオさん、マスターの騎士になりたかったって)」

 僕の騎士か・・・


 そっと剣を手に取ると鞘から引き抜いた。煌く刃にコアの光が反射する。

 白い靄の肩の辺りに剣の刃を添えて、古い言い回しを思い出しながら話かけた。

 「汝、悠久の時をまどろみし者よ、そなたの捧げし剣を我は受けよう。

   これからは我が剣となりて敵を滅ぼし、

    我が盾となりて国を護り、

     我が騎士となりて永遠に仕えよ。

      汝の名は「騎士ロザリオ」なり!」


 その瞬間、白い靄が急速に実体化し、鎖帷子を纏い、剣を携えた騎士の姿に変化した。


 「我が永遠の忠誠を!ミ・ロード」


 そういって流麗な騎士の礼をしたロザリオは骸骨の姿をしていた・・・


 「やっちまった」

 「2度目っすね」

 「たぁ」


 僕らのロザリオのイメージは白骨死体だったので、そのまま構成されてしまったらしい。

 つまりエルフのイメージを強く持てばエルヴンナイトに戻れたということだ。


 「なんじゃこりゃあ!!」

 水面に映した自分の姿を見て、ロザリオが絶叫していた。

 ごめん・・・




インターネット接続障害で投稿ができませんでした。もうしわけありません。

これが12/4 23時分です。

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