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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
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蟲の王との決戦・表

 ソニアによって切り落とされた、黄砂の王の右肩口からは、黒い何かが血のように流れ落ちていた・・

 それは良く見ると、小さな黄金虫に似た蟲の塊であった。

 それが、傷口から、ポツリポツリと滴り落ちているのである・・


 「おいおい、幾らアンデッドの親玉と言っても、流れる血まで蟲とか、在り得ねえだろうが・・」

 「元々、死んでるんだから、血とか関係ないじゃない」

 「切り落とせるなら、それでいいさね」


 奇襲で一撃を入れる事に成功したビビアン達であったが、追撃はほとんど効果が無かった。

 ソニアの蛇矛を脅威と見た黄砂の王は、距離を取りながらネガティブ・レイを放とうとした。

 それを阻害する為に、背後からスタッチが斬りかかるが、通常の黒鋼の長剣ではダメージを与える事が出来なかった。

 唯一、速度優先で放った、ビビアンのファイアーアローが、右の肩に命中し、その衝撃で呪文をキャンセルすることに成功した。


 「やっぱり、包帯が無い部分には、火炎呪文が効くみたいね・・スタッチ、あれ全部剥いできてよ」

 「無茶言うな!ミイラの包帯なんざ、皮膚と同じだろうが」

 「骨は拾ってやるさね・・」


 軽口を叩きながら、前後から攻撃してくる冒険者3人組に、苛立った黄砂の王が叫んだ。

 「ええい、煩い奴等め! 蠅のベルゼブブの眷属みたいに集りよって・・許さぬぞ・・」

 そう言い放った黄砂の王の雰囲気が変わった。

 

 「あ、なんかヤバそう」

 「ビビアン、下がれ!」

 「させるもんかね!!」


 ビビアンを護りながら、距離をとるスタッチとは真逆に、ソニアは突撃をかけた。

 しかし、黄砂の王は呪文を放つのではなく、スキルを発動させた・・


 「・・巨大化せよ!ギガント・インセクト!!」


 その瞬間、右肩の切断面から滴り落ちていた、黒い黄金虫もどきが、全長3m以上もある巨大昆虫に変身した。

 それらは、あっという間に黄砂の王の周囲を、黒い盾となって埋め尽くす・・

 巨大化して判るのは、それらが黄金虫ではなく、スカラベと呼ばれる甲虫であったことだ。俗に言う、糞転がしのことで、砂漠地方では再生を司る神の使いとして、それなりに大事にされているらしい・・

 だが、その艶消しの黒い巨体からは、神聖さよりも禍々しさが感じられた・・


 「邪魔さね!」

 ソニアが、目の前に出現した巨大スカラベを切り払うが、その硬い外骨格と頑健な巨体は、蛇矛の一撃では倒しきれない。逆に甲虫にしては器用な動きで、両前足を鉈の様に振るってきた。

 

 「ちいっ!」

 片方を蛇矛で払い、もう片方をバックステップでかわすと、ソニアは一旦、距離を取るしか出来なかった。


 「・・ファイアー・ランス!」

 隙を窺っていたバーサーカーの得意呪文も、黄砂の王に届く前に、身代わりになった巨大スカラベに防がれてしまった。直撃したスカラベは焼け焦げて動かなくなったが、その死体を踏み越えるように、次が湧いて出てくる・・



 「ちょ、ちょっと、押さないでよ、これ以上下がれないってば・・」

 「いいから、下がれ!あいつら、まだ増えるぞ!」

 続々と沸き続ける巨大スカラベに押されるように、スタッチとビビアンは部屋の隅に追い込まれていた。


 「範囲呪文で、まとめて焼き払えないのかい?」

 「・・味方を巻き込む・・」

 同じ様に部屋の反対側で押しこまれているソニアが、バーサーカーに尋ねたが、闇雲に範囲呪文を撃てば、ビビアン達を巻き込む可能性があった・・


 「スタッチだけなら、構わず撃ってもらうとこさね」

 「・・そうなのか?・・」

 「アタシらは、慣れてるからね」

 「・・なるほど・・」

 バーサーカーは納得した。

 それは、セイバーも偶に「私に構わず撃て」と叫んでいたからでもあるし、ソニア達が、あのビビアンと組んでいるのを思いだしたからでもある。


 「・・なら撃つか・・」

 「いやいや、ビビアンは巻き込むと怒られるから、駄目さね」

 「・・ビビアンが怒るのか?・・」

 「いや、手出し出来なくて、イライラしてる奴がいるさね・・」

 「・・ふむ・・」


 ソニアの言葉に首を傾げたバーサーカーであったが、なんとなく誰かは想像出来た。

 そしてその誰かは、通路の外から介入するタイミングを見計らっていたのである・・・



 通路の方から、3本のクロスボウ・ボルトが飛来すると、カカカッと小気味良い音を立てて、巨大スカラベに突き立った。


 「ふむ、まだ通路に潜んでいる奴らもおるのか・・ならば、そちらから・・」

 黄砂の王が、高位呪文を唱えようとすると、さらに2本の矢が飛来して、先程のスカラベに止めを刺した。

 だが、無理矢理こじ開けた穴は、直に他のスカラベに埋められて、黄砂の王へと射線を通すことは難しい・・


 「その様な攻撃で、我が僕の守りを崩す事など出来ぬぞ!」

 勝ち誇る黄砂の王を無視して、さらなるクロスボウの一矢が飛来した。

 それは、狙い澄ましたかのように巨大スカラベの眉間に突き刺さり、一撃で射殺した。


 「ほう、それなりの射手が居るようだが、焼け石に水という言葉を知っておるか・・」

 そう、呟いた黄砂の王だったが、その次の瞬間、部屋の隅に追い詰められていた、4人が一斉に叫んだ。


 「「「「 ゼロ! 」」」」



 ボルトとアローの本数でカウントを数えていたメンバーが、一斉に反応した。


 部屋の中の4人は、大蛙の口の中に飛び込むように避難すると、そのまま床ギリギリまで潜水した。

 それと同時に、通路から3体のアイスドレイクが乱入し、巨大スカラベの集団にコールドブレスを撒き散らした。

 「「「 シャアアアアアーー 」」」


 コアルームの大半を覆い尽す様な氷の嵐は、巨大スカラベも水面も、まとめて氷結させた。

 スカラベを盾に出来た黄砂の王のみが、動かなくなった黒い蟲壁の中で喚いていた・・


 「おのれ、死骸が邪魔で奴等が見えん!」


 氷結した巨大スカラベの死骸は、黄砂の王にとっても視線と射線の障害になっていた。自分の意思に反応して有利な位置に動いていた時と違い、死骸となって氷漬けになった今は、盾から壁になってしまっていた。

 「ならば、壁ごと吹き飛ばすまでよな!」


 黄砂の王は、今までにない量の魔力を一つの呪文に込め始めた。

 それを阻害しようと、通路からボルトや矢が矢継ぎ早に飛んで来るが、氷塊となった巨大スカラベが邪魔して黄砂の王に届かない・・・


 「・・・己の策に溺れて、ワシに詠唱を許したことを後悔せよ! エンラージド(領域拡大)・デザート・デゾリューション!!」


 黄砂の王の放った、拡大された高位枯渇呪文は、その猛威をコアルーム全体に及ぼした・・・




 その瞬間、コアルームに満ちていた湖水は全て蒸発し、部屋に居た全ての生物の体内水分が吸い出されて、ミイラ化する・・・

 氷漬けになった巨大スカラベの死骸も、周囲の氷が融解して蒸発した影響で、ボロボロになりながら崩れ去っていった・・・


 コアルームには、宙に浮かぶ黄砂の王、ただ一人が佇んでいるだけであった・・・


 「ふうっはっはっはっ、煩い蠅どもを一掃してやったぞ・・魔女もダンジョンマスターも綺麗サッパリとな! ふうっはっはっはっ・・・」


 

 高笑いを続ける黄砂の王であったが、徐々に疑問が湧き出してきた。

 「なぜ、ダンジョンが機能を停止しない?・・」


 ダンジョンマスターもダンジョンコアも死亡したならば、ダンジョンはその殆どの機能を失い、廃墟と化して行く。その変化は、目に見えるほどであるはずであった・・


 そしてもう一つ・・


 「冒険者や大蛙は干からびたとしても、水晶のガーディアンが痕跡も残さず消え失せるのは・・・さては奴等、謀りおったか!!」


 その答えは、通路から噴き出した、炎の奔流であった・・・


 



 


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― 新着の感想 ―
[一言] 久しぶりに読み直したぜ! オイラも待ってるっす!
[良い点] 大好きな作品です。 [一言] 待ちます。
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