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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
475/478

封じられた呼び名

少し短いので、夜に加筆する予定です。

 「ベニジャ、オババの眷属にコアルームの状況を聞いて」

 突入部隊を再編成しながら、出来るだけ内部の情報を集めようとしてみた。


 『でかいフロストワームに乗った、ミイラの親玉が攻め込んで来たらしいけど、それ以降は念話もないし、指示もこないって言ってるぜ、ジャー』

 こちらに情報を流す余裕が無いとみるべきか・・

 ミイラの親玉って、まさかマミー・キングじゃないよね・・・


 『ご主人様、デス様のおっしゃるには、キング級のアンデッドが側にいる気配がすると・・』

 転送を待つ幽霊メイドのエルマが、見習い死神のデスから、冥界通信で聞いた情報を伝えてくれた。


 「マジですか・・」

 本当にマミー・キングだとすると、ヴァンパイア・ロードに匹敵する上位種である。普通なら喧嘩を売るような相手ではない・・・


 「向こうから攻めてくるなら、撃退するしかないんだけどね・・」

 「こちらの領域でないのもマイナス要因ですね・・」

 隣でメイド長のカジャが、冷静な分析をしていた。

 

 「まあ、マミー・キングだとすると、殆どの罠が効かないだろうから、戦闘力的には同じかな・・」

 直接、戦闘領域に召喚ができないとか、変換で補給が出来ないとかの違いはあるけれど・・

 「データのスキャンが出来ないのも不利かと・・」

 ああ、それはあるかも・・出来れば戦闘データも欲しいとこだよね・・


 オババの眷属に、念話で尋ねてもらおうとしたとき、ヘラから連絡が来た。

 『ましゅたー、ボーン・ガーディアンだった二人が、たましぃいだけになって来たでしゅ・・』


 どうやら、本格的にオババのピンチのようだった・・・




 その頃、青水晶の間では・・


 『クリエイト・ガーディアン!』

 ヘラによる、ボーン・ガーディアンだった二人の魂の再守護者化が試みられていた。

 しかし、その結果は・・・


 「1体しかできなかったでしゅ・・」


 そう、キャスターとアーチャーの二人を再構築することは叶わなかったのである・・


 「「だからって、一つにまとめるのはどうかと思うぜ(のですが)」」

 

 クリスタル・ガーディアン用の水晶が不足していたのか、魔力が足りなかったのか、出来上がった守護者は、1体の躯体に二つの魂が同居していた。

 

 「お前達も仲が良すぎるだろう・・」

 「・・一心同体・・」

 セイバーとバーサーカーが、呆れたように見守る中、アーチャー/キャスターは、自分たちの最後を語った。


 「「たぶん、エイシャント・フロストワームは倒したと思うんだが、黄砂の王は微妙です(だな)」」

 「ねえ、本物の黄砂の王だったの?」

 ビビアンが横から口を挟んだ。


 「「そう名乗っていたし、オババ様もそう認識していたぜ(ようです)」」

 「だとしたら、マズいわね・・」

 「ビビアン、黄砂の王を知っているのか?」

 ハスキーの質問にビビアンが答えた。


 「アタシも伝説とか伝承で聞いただけだから、詳しくは知らないわ・・魔王の四天王の一人だとか、南の砂漠を統べる者だとか言われているみたい・・」

 「四天王ってあれだろ、最弱が一番強いって噂の・・」

 「なんでも四天王なのに、5人いるとか聞いたさね・・」

 色々、混ざって伝わっているらしい・・



 「「蟲を自在に操るし、蟲術も使ってくる・・本体も蜂の群体に変化するぜ(します)」」


 二人から可能な限りの情報を引き出して、とれる対策は全てとった・・

 後は、突入してから判断することにする。


 「で、そっちの二人で一つは、戦力になるの?」

 ビビアンが、アーチャー/キャスターに尋ねた。


 「「悔しいが、満足に歩く事も出来ない・・」」

 全身で二人三脚をしている様なものなので、立っているのが精一杯らしい・・

 「「あと、名前で呼んでくれ(下さい)」」


 「だってアーチャー/キャスターとか長すぎるわよ・・だったらアスターで良い?」

 ビビアンの発案に、セイバーが反応した。


 「ならばキャッチャーの方が・・」


 「「「 それはダメだ! 」」」

 周囲から、突っ込みの嵐が吹き荒れた。


 「迂闊に呼ばないで欲しいっすね」

 「それは禁忌の名前でしゅ」

 「素人さんの火遊びで、肝が冷えたぜ、ジャー」

 

 メンバーにとって、その名前は、黄砂の王よりも畏怖すべき対象であった・・・


 「そ、そうなのか・・すまん・・」

 どこか納得のいかないセイバーであった・・・



 そこにエルマが転送されてきた・・

 『皆様、準備の程は宜しいでしょうか?作戦の指示がご主人様よりあります、静聴願います・・』


 「あいよ、こっちはいけるぜ、ジャー」

 「「ケロケロ」」


 『先陣は大蛙4体、搭乗者はワタリ、ソニア、ビビアン、バーサーカーで』

 「ういっす」

 「アタシが乗って大丈夫さね?」 

 「当然よね、派手に燃やしてくるわ!」

 「・・了解した・・」

 「ケロケロ」x4


 『本隊がベニジャとクロコ、グレコ、騎乗者はゴブリンチーム3人とハスキー、スタッチで』

 「3人ずつでギリギリだぜ、ジャジャ」

 「「シャーシャー」」

 「ギャギャ(こちら3人だと重量バランスが悪そうですね)」

 「ギャ(俺が向こうにいく)」

 「ギャギャ(大蛙は楽だけど、揺れるからな・・)」

 「相棒、搭乗者と騎乗者の違いってあるのかよ?」

 「たぶんだが、騎乗者が背中で、搭乗者は口の中だな・・」


 ハスキーの指摘に、ビビアンとソニアの動きが止まった。

 ワタリ達は、気にせずに次々と大蛙に飲み込まれていく・・


 「えっと・・これ本気?・・」

 「アタシは体格的に無理さね・・」

 ビビる二人をベニジャが後押しした。


 「慣れれば快適だぜ、あのデカイのも入るんだから、大丈夫だって、ジャー」

 ベニジャが指した方には、既に準備が整って、大蛙の口から腕だけ出してサムズアップしているワタリと、縮こまりながらも、飲み込まれていくバーサーカーの姿があった・・


 「「とほほ・・」」

 二人は、肩を落しながら、恐々、大蛙の口に入り込んで行った・・



 『あ、ソニア様、お渡し忘れるところでした』

 エルマが、すすっと近寄ると、半透明のスカートの下から、長柄の武器を取り出した。


 『ドワーフのアイアン様からお預かりして参りました・・蛇矛でございます』

 それは、ボーン・サーペントの牙から造り出した、魔法の武器であった。


 「どこから取り出したのか気になるけど、この先に待つ敵の事を考えれば、心強いさね・・」

 ソニアは、光の加減で白く見えたり、碧く見えたりする蛇矛の刃を、頼もしげに見つめていた。


 「俺のは預かってないか?メイドの嬢ちゃん」

 『スタッチ様にも、これを・・』

 そう言って、エルマは灰褐色のラウンドシールドを取り出した。

 丸盾の縁には、自分の尾を飲み込む水竜の文様が、円を描くように刻まれていた。


 「こいつは・・上々の出来上がりだぜ・・」

 スタッチは、さっそく左腕に装備すると、バランスを確認する・・


 『ハスキー様には伝言を承っております・・「武具を優先したから、すまん」との事です』

 「ああ、それで問題ない・・アイアン爺さんに礼を言っておいて欲しい・・」

 『承りました・・』


 ハスキーとしても、このメンバーの面前で、ペアの指輪を持ち出されても困るところだった。

 ビビアンの安全度を上げる為なら、恥を忍んで、ここで手渡す気でいたが、物が無いなら、それは仕方がない・・

 そこまで考慮してくれたとしたなら、アイアン爺さんには、美味い酒を手土産に、改めてお礼に行こうと心に刻んだハスキーであった・・



 『後詰はグリコ、騎乗者はルカと、ヴォジャノーイ』

 「シャー」

 「え~、あの人と一緒ですか~」

 「よっしゃ、久しぶりの夫婦水いらずだぜ!」

 妻と夫との間に、すごいテンションの差があった・・


 『他のメンバーは、拠点防御しながら、その場で待機で』

 「了解でしゅ」

 「ヒヒィン」 

 「マスターの護衛は任せておいてくれ」

 「私もここで待っていますデス・・」


 「俺らはオババ様の救援に参加したい、ウガッ」

 「ウガウガッ」

 残されたオーガーリーダーとオーガーが、突入部隊を希望する・・


 『悪いけど、現状でオババの眷属を指揮下に入れる事が出来ないんだ・・はぐれになっていれば問題ないんだけど、そうもいかないでしょ・・』

 項垂れる2体に、ソニアが声を掛けた。


 「こっちは任せておくさね、その代わり、ここは頼んだよ・・」

 「姐御・・お任せします、ウガッ」



 そして準備が整った・・・


 『オペレーション・スプラッシュ・マウンテン・・開始!!』

 『ざっぱーーん』


 


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