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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
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最後の決断

  凍結湖ダンジョンコアルームにて


 炎の幕を蹴散らして、黒い巨大蟲が鎌首を持ち上げた。


 『いかん!回避じゃ!』

 オババの叫びにキャスターとアーチャーは飛び退いたが、アイスゴーレム達は、再びスクラムを組んだ。


 「阿---」 「吽ーーー」

 巨大蟲の足元に立つ黄砂の王が、ニヤリと笑った・・


 「滅ぼせ・・コラプト・ブレス(腐敗の吐息)!」

 「ギャシャアアアアアーー」


 巨大蟲から異臭を放つ黒い霧が噴出された。

 それを正面から受けたアイスゴーレムが、みるみるうちに溶けて崩れ落ちる・・


 「ガアッ・・・」

 「チイッ・・・」

 避けたはずのキャスター達であったが、広範囲に広がるブレスの端に掛かっただけで、手足が溶け落ちてしまった。


 「右手が・・根こそぎか・・」

 「こっちは両足が踝まで持っていかれたぜ・・」

 台座の上のコアオーブは影響を受けなかったが、床に置かれた棺は、下半分が、黒く変色していた。


 「まずい・・次のブレスは棺がもちそうにもない・・」

 「とはいえ、俺らじゃ盾にもならねえだろ・・」

 アイスゴーレムの巨体があってこその壁である・・それも今は上半身が溶け落ちて、動かなくなっていた。コラプト・ブレスの威力は、一撃でアイスゴーレムを屠るほどであったのだ・・


 「くっくっくっ・・・今更、命乞いは認めぬぞ・・その目で、自分のマスターの最後を見届けろ・・そして、あちらの世界で、一生悔いるがよい・・ワシの誘いを断ったことを悔やみながらな!!」

 『待てっ!!』


 「遅いわ! アンデッド・エイシャントワームよ、愚かな魔女に思い知らせろ!」

 「ギャギャシャーー」

 再び持ち上げられる鎌首・・そこから放たれる死の吐息・・


 だが、オババの制止は、黄砂の王ではなく、二人のガーディアンに向けられたものであった。

 『隙を作ります・・オババ様はマスター様と撤退を・・』

 『こいつは返せないけど、怒らないでくれよ・・』


 念話でそう伝えると、キャスターが左腕で、歩けないアーチャーを抱えると、黄砂の王に突進した。

 「オオオオオオーー」

 半分、引きずられながら、アーチャーは床に落ちていた豪華な杖を拾うと両手で水平に構えた。


 「死に損ないが、悪足掻きを・・・」

 そう呟いた黄砂の王が、アーチャーの持った杖の放つ、尋常でない魔力に気が付いた。

 「まさか・・いかん・・奴らを止めろ!!」


 黄砂の王の叫びを聞いた巨大蟲が、ブレスの矛先を二人に変えて解き放つ・・

 「ギャシャアアアアーー」


 正面から腐敗の吐息を受けたキャスターの身体が、ボロボロと崩れ落ちた・・

 「カタカタ(ここまでのようだ・・)」


 一瞬遅れて、アーチャーの身体も崩れていく・・

 「カタカタ(俺もすぐに逝くぜ・・)」


 意識が途切れる前に、アーチャーはスタッフ・オブ・パワーの最終コマンドを起動させた・・


 「バ・ル・ス」


 閃光が全てを覆い尽した・・・




 『3番・・12番・・聞えるか・・聞えておったら返事せい・・・』

 オババは、眷属マーカーの全て消えたコアルームで、一人ぼっちで呟いていた・・


 床には、通路から突き出した上半身を吹き飛ばされて、半分に千切れたアンデッド・エイシャントワームの死体が転がっていた。

 ワームよりも爆心地に近かった黄砂の王は、粉々になったのか、黄色いローブの切れ端が床に散乱しているだけである・・・


 キャスターとアーチャーの痕跡も、骨の一欠けらも残っていなかった・・

 腐敗の吐息で崩れたところに、ファイナルストライクの爆発を受けた以上、仕方の無い結果である・・


 オババのコアオーブと白檀の棺は、計ったように影響範囲から外れており、巻き上げられた埃が、降りかかっただけで済んでいた・・・



 『馬鹿もんどもが・・自爆させる為に眷属にしたのではないわ・・大馬鹿もんどもが・・』


 その時・・巨大蟲の下半身が、もぞりと動き出した。


 『まだ動くのか・・』

 最後のDPを使って、新たな眷属を召喚するか、青水晶の間にいるオーガーリーダーを転送するか迷ったオババの目に、信じたくない光景が映った・・・


 巨大蟲の下半身から、もぞもぞと大量の黒い蜂が這い出してきたのである・・

 『まさか・・生きておるのか・・』


 這い出した黒い蜂は、みるみる集まって人型になると、どこからか舞い降りた包帯が巻きつき、1体の木乃伊が完成した・・


 「くっくっくっ・・ワシは不死身じゃよ・・・」

 そう呟いた黄砂の王が、巨大蟲の死体に片手を上げた。


 「目覚めよ・・」

 すると、吹き飛んだはずの上半身と、通路に横たわる下半身から、2体のアンデッド・ワームが造り出された。

 それらはウネウネと身体を揺らしながら、黄砂の王の両脇に並んだ・・


 「少し小さくなってしまったが、眷属のいなくなった魔女を折檻するには十分だろう・・くっくっくっ」


 

 『ここまでじゃな・・』

 残りのDPでは、現状を覆す術が無かった・・

 時間稼ぎをしたとしても、黄砂の王を倒す方法が無い・・もうこれ以上、眷属を犠牲にして逃げ惑うのは止めよう・・・

 ここまで執念深く追い詰めてきたのだから、今更、気が変わって立ち去ることもないだろう・・・


 最後のDPはマスターの転送に使う・・

 ビビアンの元へ送れば、悪いようにはしないはずだ・・


 目論見を外された黄砂の王は、怒りにまかせてコアオーブを破壊するに違いない・・・

 私が消滅すれば、それで済む・・・


 だから・・サヨウナラ・・・




 オババが、棺の中のマスターを転送しようとした、その時・・・


 懐かしい声が聞こえた・・・


 『・・俺を呼べ・・スカーレット・・』



 それは、待ち望んでいた、あの人の声・・

 それは、悔み続けた、あの時の記憶・・


 『ワシは・・ワタシは・・また同じ過ちを犯すところだった・・・』


 オババ、いやスカーレットは、張り裂けんばかりの声で叫んだ。


 『クラーク!!』



 安全地帯へ転送するはずだった、その人が、コアルームに出現した・・・





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