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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
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どうやらお困りのご様子で

  凍結湖、青水晶の間、決着のとき・・


 「ビビアン!」

 スタッチが、後ろを振り返りながら、叫んだ。


 「お待たせ、アタシが来たからには、もう大丈夫なんだから」

 「逆だ!こっちを巻き込むのは止めろって、言っただろうが!」

 スタッチの鎧は、ビビアンの範囲火炎呪文で、あちこちが焼け焦げていた・・


 「何よ、せっかく援護したのに、感謝ぐらいしなさいよね」


 そこへ、湖から浮かび上がったソニアが、水を滴らせながら歩み寄ってきた。

 「あーー、死ぬかと思ったさね・・」


 「ソニアお帰り、危うく骸骨ワームに食われるとこだったものね・・」


 「いやいや、死にそうだったのは、ビビアンの呪文さね・・目の前に炎の槍が刺さったときは、流石のアタシも、もう駄目かと・・」

 ソニアの言葉に、スタッチも大きく頷いていた。


 「ちょっと、助けてくれてありがとう、ぐらい言いなさいよね!」

 叫ぶビビアンに、ソニアとスタッチは肩を竦めながら答えた。


 「「それより、あいつらに謝る方が先なんじゃ・・」」

 二人が顔を向けた方には、爆風で吹き飛んだ、オーガーリーダーとオーガーが目を回しているのが見えた・・




 「ごめんなさい、ごめんなさい・・」

 ユニコーンのニコが、片っ端から治癒して回るのに合わせて、ビビアンは頭を下げ続けていた。

 ゲスト同士ならまだしも、眷属を巻き込んだとなると、下手をするとダンジョンへの敵対行為と認定されてしまう。

 新しく召喚されたオーガー達は、ビビアンの素性など知らないわけで、敵意を持たれると大変に拙い・・

 ハスキーが事情を説明し、ソニアが仲介することで、事なきを得た。


 「・・ねえ、なんであのオーガー達は、ソニアの言う事なら、ハイハイ聞くの?・・」

 ハスキーの説明には納得しかねていたオーガー達も、ソニアの仲介はあっさり聞き入れてのを見て、ビビアンがこっそり尋ねてきた。


 「・・あれだ・・筋肉は筋肉を知る、って奴だよ・・」

 「・・良くわかんない・・」



 やがてオーガー達の傷も癒えて、戦力が整ったが、やはりこちらから攻め込む方法が無かった。


 「もう潜って叩くしかねえんじゃないのか?」

 「だけど水中だと、斧も剣も威力が落ちるさね・・」

 「棍棒だともっと駄目だな、ウガッ」

 やはり水中戦では、水の抵抗の少ない槍などの武器でないと、思うように戦えないようだ。


 「ビビアンの呪文はどうだ?・・」

 「無理ね・・あの水深だと、さすがに届かない・・と思う・・」

 いつになく慎重な物言いのビビアンに、スタッチが軽口を叩いた。


 「なんだ、真紅のビビアン様にしては弱気じゃねえか、ここは『任せときなさい』って言うとこだろう」

 「水蒸気爆発で、洞窟ごと吹き飛んで良いなら撃つけど?その時は、スタッチだけ居残りで見張り番ね」


 「すいませんでした、無しでお願いします・・」



 不気味に静まり返った湖底を監視しながら、ハスキーが呟いた。

 「このままだと、また巨大なガーディアンを作り出される可能性が高いな・・なんとか奴を引きずり出さないと・・」


 そこへ、後ろの通路から声が掛かった。

 「どうやら俺の出番らしいな・・」


 「「「 誰だ! 」」」

 全員が後ろを振り返ると、そこには・・

 鎖で簀巻きにされたまま、死神に引きずられている半魚人の姿があった・・・


 「「「 誰だ? 」」」




 その頃、湖底ではボーン・ガーディアンの15番が、破壊された巨大ワーム型ガーディアンの修復を試みていた。

 『・・ワーム型スペア・ガーディアンの損壊率99%・・修復不能により破棄・・』


 やはり形状を真似ただけのワーム型では、本来のフロストワームの強さを発揮することは出来なかった。ブレスや死亡時の爆散なども再現できず、ただ巨体で押し潰して、大顎で挟むだけのスケルトンである。

 敵に術者が合流した以上、力任せに排除するのが難しくなった・・


 『・・適合率・・47%・・』

 その敵対する術者のデータは、過去のバンクに保存されており、それなりの適合率を有している個体であると認識された。

 システムマスターに選ぶには、中途半端な数字ではあるが、最悪の場合は・・・


 そこまで思考して、15番はシステムからの警報に気付いた。

 『・・水位の急激な減少?!・・』


 見上げると、地底湖の水面に巨大な渦潮が出現していた・・・




 「どうだい!俺のコントロール・ウォーター(水流操作)の威力は!」

 湖に向かって両手を掲げ、巨大な渦を維持しているのは、ヴォジャノーイのノヴォであった。

 あの後、必死の説得で名誉挽回の機会を与えられたノヴォは、得意の水系呪文で渦を作り出す事により、湖の底を露出させるのに成功した。 

 未だに下半身は鎖で簀巻きにされていたけれども・・


 半信半疑で待機していた前衛陣も、湖底が目視できるようになると、果敢に突撃して行った。

 「よっしゃ、いけるぜ!」

 「渦の中心までジャンプするさね!」

 「姐さんに遅れるな、ウガッ!」

 「ウガッ!(へいっ!)」


 『・・迎撃せよ・・』

 15番は、自分の周囲に護衛として配置していた3体のスペア・ガーディアンを向かわせると、さらに増援を呼び出そうとした。


 『・・立て・・』

 しかし、湖底に散乱していた予備のパーツは、ノヴォの作り出した渦に巻きこまれて、その殆どが使用不能にされていた。


 『・・立て!!・・』

 苛立つ15番だったが、その命令に、従うしもべは現れなかった・・

 そして・・


 「「「 パワーアタック!! 」」」  

 頭上から舞い降りるように飛び込んできた、スタッチとオーガー2体が、全体重を掛けた一撃で、護衛のスペア・ガーディアンを打ち砕いた。


 「うおおお」 「ウガッ」 「ウガガッ」

 勢い余って転がってくる3人を避けながら、15番は呪文を詠唱しようとする・・


 『・・剣には剣を、魔法には・・』

 この渦を消せば、再びこの場は水中に戻り、呼吸の必要のない自分が優位に立てる・・

 だが、その判断は間違いであった・・


 「これで決めるさね!ボーンクラッシュ!!」

 『・・リアクティブ・シールド!』

 時間差で降ってきたソニアの一撃に、咄嗟に詠唱を取りやめて割り込み呪文を唱えた15番であったが、それは効果を表すことは無かった。


 『・・何故だ!』

 驚愕する15番が、最後に目にした物は、頭上に振り下ろされる戦斧の刃と、それを振るう女戦士の頭上に止まる黄色い何かであった・・・





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