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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
452/478

戦時中につき民間から雇用

  凍結湖、コアルーム、戦時司令部


 「領域内の索敵を終了、眷属8、ゲスト13、敵対多数、味方2、不明2ってとこね」

 ビビアンが、勝手に引っ張り出した椅子に腰掛けながら、オババの投影したダンジョン内のマップの光点を数え終わった。

 ちなみに、お気に入りのロッキングチェアである。


 「コアルームの守備要員は召喚後に配置についたデス」

 コアルームにある二つの出口に、それぞれ2体ずつのオーガーが門衛の様に立っていた。

 オーガーは、ランク4のモンスターにしては体力と攻撃力が高いので、オババが昔は好んで眷属に使っていた。ただし食費がかかるので、一番最初にリストラされたのも彼らである。

 死神見習いのデスも、ビビアンの横で、何故かオペレーターの真似事をしていた。本来なら、オババの片腕であるエルマが、二人の代わりをするはずだが、ここには居ない・・

 新たに眷属を呼んでも、ダンジョン内の地理の把握や、アンデッドとの通信機能を考慮すると、まだ、この二人の方がマシという結論が出たのではあるが・・


 「ちょっと、そこに立つとアタシがマップ見れないでしょ!」

 「少し椅子を動かせば良いではないデスか・・」

 「嫌よ、ここが一番楽なんだから」


 かなり不安がある配置ではあった・・・


 ちなみに、ユニコーンのニコは、衛生兵としてオーガーの回復役、フェアリードラゴンのラムダは、対空防御砲兵として、遠距離からの範囲攻撃魔法の迎撃役を与えられていた。

 こちらは順当な配置だが、彼らに戦意は見られなかった。


 ニコは、ビビアンの指示がなければ、オーガーを癒す気にもならないし、ラムダが何を考えているのかは、誰にもわからない・・


 『大丈夫じゃろうか、こ奴らにダンジョンの命運を賭けてしまっても・・』


 少しだけ、後悔するオババであった・・・



 「・・皆も無事みたいね・・」

 青水晶の間に移動した3つのゲストマーカーを見ながら、ビビアンは小さな声で呟いていた。

 どんなに小さくても、コアルームの中で囁かれた言葉ならばオババが聞き漏らすわけもないが、あえてそこには触れないようだ。

 根掘り葉掘り聞き出すのは、全てが終わってからで良い・・

 できればエルマが側にいればもっと良い・・きっと詳しい情報を提供してくれるに違いなかった・・


 『・・まあ、ユニコーンが従ってるようじゃし、いつもの妄想王子の可能性も高いがの・・』

 オババは心の中でそう思ったが、口には出さなかった・・


 「青水晶の間の戦いは、膠着したようデス。敵対勢力は湖底に集結、今なら退避できそうデス」

 『3番と12番はコアルームに退避じゃ、もう限界じゃろう・・オーガー2体で棺を運ばせるから、それの護送も兼ねさせる・・オーガーリーダーと残り1体はスペア・ガーディアンの警戒を継続じゃな・・冒険者3人組には、その後詰を頼みたい・・特に15番の動向に注意していて欲しい・・』

 オババは棺を、一旦コアルームに運び込むことにした。

 秘薬の劣化が気になるが、あの場所に置いておくのは危険過ぎたからだ・・


 「この所属不明の1体は、敵味方どっちなの?」

 ビビアンが、23番と思しき光点を見ながら尋ねた。3人の側に、不安要素があるのが気に喰わないようだ。

 『あれは・・どっちじゃろう・・ワシにも良く分からんが、今は中立扱いじゃな・・』

 電波系オラクルが何を考えているかは、ラムダ以上にわからなかった・・

 

 「あっと・・祠方面出口から、敵対勢力が6体離脱したわ。状況から判断して人狼傭兵団の残党ね、きっと」

 『逃げ出す奴は、放っておいて構わんよ、どうせ金か義理で雇われた連中じゃろうて・・』

 「いいの?DPはあるだけ有利になるわよ?」

 『倒す為の手駒が足りぬよ・・逃げを打った人狼を捕獲できるほどの眷属を呼ぶDPはない』


 リーダーを含むオーガー8体で、1370DPを消費していた。ドラゴニアン・トゥーム・ガーディアンの死体を吸収して得られたDPのうち、ほぼ半分を使い切った計算になる。

 呪いに感染してトゥーム・ガーディアンの僕になっていたスロッグの死体は、倒すと同時に次元界のリンボ(冥府)へ還っていってしまった。

 あれが吸収できていれば、もっとDPが手に入っていたはずであった。


 「ビビアンが燃やしすぎたのも原因デス・・」

 「仕方ないじゃない、咄嗟だったし、危機一髪だったんだし・・」

 木乃伊ミイラは乾燥していて燃え易いので、ビビアンのブーストされた火炎攻撃によって、体重の1割以上を消失している死体も多かった。それらは吸収してもDPには変換されない。


 「でも、召喚リストには載ってるんでしょ?なら召喚したら?食費かからないし」

 トゥーム・ガーディアンは、火炎系の攻撃方法を持っていない相手にはかなり強い。ダンジョンの防御には、コスト面を考えればオーガーよりも適しているかも知れなかった。


 『叛乱分子の鎮圧には役に立たんじゃろうな・・スペア・ガーディアンには病気も呪いも効かんじゃろう・・』

 「厄介よね・・アンデッドでもないからターンも効かないし・・」

 「私の話にも耳を貸してくれないのデスよ・・」

 魂が無いのだから、死神の交渉術が効くわけもなかった。


 「ドラゴニアンの魂は腐るほど彷徨ってるんじゃないの?」

 「彼らは墓場の守護者として、墓所に縛られているデス・・どこで死んでも魂はすぐに戻って、次の器を探しているデス・・」

 彼らは、その忠誠心が磨耗して、守護者としての務めが果たせなくなるまで、永久に守り人として墓所を護り続けるのである・・


 「はあーー、それも難儀な話ね・・って、所属不明の光点の一つが動き出したわ」

 『不明の光点のうち、青水晶の間に居るのは23番じゃから・・もう一つは凍結湖の入り口から入ってきて、うろついている、こ奴か・・ゲスト申請を蹴ったという事は、敵対勢力じゃと思うが、1体で何をする気じゃ?・・』

 「例のフロストワームとかじゃないんでしょうね?」

 『大きさは中型、2足歩行じゃからワームではない・・映像を出すぞ・・』


 空中に立体映像が映し出された。ダンジョン内の監視システムもまた、オババがコアルームに戻った事により、その機能を完全に回復していたのだ。

 そしてそこには、挙動不審な半魚人が映し出されていた・・


 『「「ヴォジャノーイ」」』 「ね・・」 「デス」 『じゃな・・』


 

 諦めの悪い、水棲精霊がそこに居た・・・





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