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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
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ただいま

 あの娘がダンジョンを去ってから1年後に、エルマが旅に出た・・・


 『ビビアンの様子を見てきます』

 その書き出しで始まった置手紙は、食事は毎日食べろだの、冬はちゃんと暖かくして寝ろだの、幾つもの注意事項が書き連ねてあった。


 『ふん・・職場放棄したメイドが、見放した主人の心配じゃと・・』


 私の強がりに答えるものは誰も居なかった・・・



 一人になった私は、さらに意固地になり、外界との接触を避けるようになった。

 たまに近所に新人のダンジョンマスターが出現したと聞きつけると、顔を見に出かけて行くぐらいだ・・

 それは途中で投げ出した、弟子達の安否を確認したかったから、かも知れない・・

 あの性格が直っていなければ、選ばれる事はないだろうけれども・・



 夜中にうなされる事が多くなった・・

 起こしてくれる者は居ない・・


 『スカーレット!コアルームに私を転送しろ!』

 『我が主の望みは、お前の消滅だ・・悪く思うなよ・・』

 『原因は不明です・・このままでは老化による衰弱が進行して、もって1ヶ月かと・・』

 『ばば・・ばば・・』

 『なんでアタシが、ここに居たらいけないのよ!ねえ!答えてよ!』

 『お暇をいただきます・・』


 『オババ・・ねえ・・オババ・・』


 今日は、妙にあの娘の夢を見る・・


 『起きなさいよ・・老人は目覚めが良いのが唯一の利点でしょ・・』


 誰に似たのか、口が悪くて、嫁に行くのも苦労するじゃろう・・


 『誰のせいよ!・・それに貰ってくれそうな人なら・・ゴニョゴニョ』


 「なんじゃと!!」

 あまりの驚きに目が覚めた。


 「どこの、どいつじゃ!その物好きな男は!!」


 気がつくと、そこは懐かしいダンジョンコアの内部であった。

 全周モニターには、死体の散乱するコアルームと、奇妙な一団が映し出されていた・・


 記憶の混乱を整理して、現状を把握する。私がまだ地上に居るということは、マスターは無事なはず・・

 「憑依していたボグハッグは死亡・・ダンジョンコアへ強制帰還・・ダンジョン内に侵入者が多数・・青水晶の間では戦闘が継続中・・なんじゃ、このカオスは!」


 「あ、やっと気がついたのね、ダンジョンコアが光っていたから、戻ってきてると思ったんだけど、返事が無いから死んじゃったのかと思った・・」

 目の前に、4年前に出て行った娘が立っていた・・


 「ビビアン・・お前・・ぜんぜん成長しておらんぞ・・」

 「ちょっと!追い出された娘が、親孝行に戻って来たっていうのに、最初に掛ける言葉がそれ?!」


 変わらぬ姿と毒舌を聞いて、言葉が詰まって出てこなかった。


 「・・それはともかく、横に居るのはなんじゃ?」

 ユニコーンとフェアリードラゴンはまだしも・・いや、十分におかしいが、まあ手懐けることが出来なくもないが・・レッサーデスとか有り得んじゃろう・・


 「ああ、大丈夫、皆、エトランジェ・デュ・ルージュ(真紅の外人部隊)のメンバーだから!」

 「お前、まだその病癖を患っておるようじゃの・・」


 「いいでしょ!別に・・それより仲間も一緒に来てるの・・ゲスト認定してあげて・・あとオークの丘のダンジョンマスターの眷属も来てるから、呼び込めば戦力になるわ!」

 確かに、各所の出入り口付近に、警告マークが点滅していた。クーリングタイムで侵入出来ないでいたらしい・・


 「じゃが、なんであ奴らが応援に来るのじゃ?・・」

 私を助ける理由が無かった・・


 「そんなの知らないわよ!お隣さんのよしみとかそんなのでしょ・・だいたい選り好みしてる場合じゃないんじゃないの?!」

 あのお人好しのダンジョンマスターなら、有り得るが、それにしても・・


 「もう・・理由は終わってから直接聞いてよね!それより、オババがここに戻ったっていうことはピンチなんでしょ?!」

 ビビアンの叫びで、思い出した。

 「そうじゃ!青水晶の間は・・」


 ダンジョンコアに帰還したことにより、全ての機能が開放されている。ダンジョン内の凍結していた防御機構を回復すると共に、青水晶の間を精査する・・・


 「棺は無事・・護ってくれたのは、3番と12番か・・」

 コントロールが完全に切れて、もう私の命令を聞く必要も無くなったはずなのに・・最後まで忠義立てしてくれている・・・


 「味方は、どれとどれじゃ・・」

 「えっと、ここにいるメンバーと・・冒険者3人組・・湖の畔の一団と・・あと水中から1部隊来てるって・・」

 ビビアンも、直接会った者以外の構成は分からなかった。


 「・・その死神も、エトランジェなんちゃらのメンバーなんじゃろうな・・」

 「どうも・・死神見習いのデスといいますデス・・『13番』さんからのご依頼がありましたので、誠心誠意働かせていただきますデス・・」

 死神と契約を結ぶという事は、そういう事だ・・


 「そうかい・・13番も逝ったのかい・・」

 魂さえあれば、守護者として復活する事も出来たかも知れないのに、その可能性を捨てて、死神を戦力として取り込む事を選んでくれたようだ・・


 「コアルームはアタシ達が護るから、他の重要拠点を取り戻さないと!」

 ビビアンが叫ぶ。


 「じゃが、間に合わん・・」

 封鎖していた鉄格子や、擬装していた岩を排除して、ゲストを招きいれたとしても、青水晶の間に到達するには時間が掛かる・・

 一番近い冒険者3人組でも辿り着くまでに数分はかかるだろう・・それまで3番と12番が耐え切れるとは思えなかった・・


 「何よ、味方がいなかったら呼べば良いでしょ!」

 「じゃが、DPが無いのじゃ・・」

 13番につけたグールと7番につけたシャドウの召喚が、最後のDPだった・・


 だが、ビビアンは、ドヤ顔で叫んだ。 

 「DPなら、そこら中に転がってるわよ!」


 そこには、黒コゲになったドラゴニアン・トゥーム・ガーディアンの死体が並んでいた・・・



 


 

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