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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
444/478

盗賊の戦い方

今年最後の投稿になります。

 皆様、良いお年を。

  凍結湖、青水晶の間、死闘中


 「へへっ、強えと思っていたが、ここまで差があるなんてな・・」

 「諦めるな、まだ手はある・・」

 キャスターの言葉を聞いて、4番が嘲笑った。


 「4人いても何も出来なかったのに、二人でどうこう出来ると、本気で考えてるのかい?」

 その間も1番と9番は油断なくアーチャーとキャスターを牽制していた。


 「追い込まれたからこそ、腹を括れるという事もある・・」

 「へえ、自爆でもするつもりかい?でもそんな時間は与えないけどね!」

 4番が詠唱を始めると同時に、前衛の二人が間合いを詰める・・


 1番がキャスターを、9番がアーチャーを、その攻撃圏内に捉えたとき、オババが叫んだ。


 「こうするんじゃよ!」


 それを合図に、二人は床に飛びつくように伏せた。

 「何?!」

 1番は咄嗟に刀の軌道を変えて、キャスターを追撃したが、紙一重で背中を掠るに留まった。

 9番の斬撃は完全に虚を突かれ、空振りに終わる・・


 そして戒めを解かれたフロストワームが、怒り狂って、手近な4番の背後から襲いかかった。


 「ギャアアアア!!」


 如何にウォーメイジが鎧を着れると言っても、近接戦闘を学んでいるわけでも、体力が前衛並にあるわけでもない。フロストワームの巨大な大顎は、4番の胴体を挟み込むと軽々と持ち上げていった。


 「馬鹿な、フロストワームを野放しにするとか、正気じゃねえ!」

 「狼狽えるな、次はこちらに来るぞ!」

 床に伏せている二人と、洞窟の隅に身を寄せた老婆より、洞窟の中央で立っている自分たちが狙われるのは間違いない。フロストワームを放っておいて、一旦引くという手もあったが、それでワームを撃退されると、折角の奇襲が無駄になってしまう。

 1番は、ワームも老婆も切って捨てる選択をした。


 だが、オババ側の狙いはそれだけでは無かった・・


 「ガーディアン・リペア!3、7、12、18番」

 オババが叫ぶと、青水晶の間に柔らかな青い光が満ち溢れた。

 その光に包まれたキャスターとアーチャーの傷が、みるみる塞がっていく・・

 さらに、床に倒れていたセイバーとランサーの躰までもが、再構成されていった。


 「間に合ったようじゃな・・」

 オババの声に安堵の響きが混じっていた。

 完全に破壊されたボーン・ガーディアンを復活させることは、オババには出来なかった。この青水晶の間だったからこそ、修復機能でも瀕死の二人を回復する事が可能だったのだ・・


 「不覚をとりました・・」

 「・・次は勝つ・・」

 立ち上がったセイバーとランサーが、オババを護るように移動した。


 一瞬、二人を追撃しようとした1番だったが、背後で氷柱を砕くような音が聞えると、危険を察知してフロストワームを睨みつける・・


 その大顎から、二つに分断された4番の死体が落下してきた。

 その眼窩には既に光はともっていなかった・・


 「畜生・・あと一歩だったのによ・・」

 「コイツごと切り倒せば良いだけの事・・」

 1番は、新たな獲物として襲い掛かってきたフロストワームの大顎を、その刀で打ち返した。


 「秘技、後の先!(カウンター)」

 巨躯を振り下ろすように叩きつけてくる大顎を、跳ね返すと同時にダメージを負わせていく・・


 「相変わらず、無茶苦茶だぜ・・」

 9番は、刀術だけでワームをあしらう1番を見て呆れていた。


 業を煮やしたフロストワームが、鎌首を持ち上げて、1拍、溜めをつくった・・


 「やべえ、ブレスだ!」

 9番は咄嗟に範囲外に出ようと脇に転がったが、1番は、その場を動かず、ただ刀を鞘に納めて、ワームに正対した。


 フロストワームが、その最も恐れられる攻撃を繰り出した。

 「キシャアアアアーーー」


 「グハッ」

 避けたつもりの9番だったが、フロストワームのコールドブレスの範囲は広く、直撃を受けてしまった。即座に身体が凍りつき、次の瞬間にはパキパキと音をたてて氷の結晶の様に砕け散ってしまった。


 1番は、そのブレスに対して、腰溜めの姿勢から、抜き打ちで一閃した。


 「御留技、裂風!」


 すると、ブレスが1番の直前で二つに割れて、左右に通り過ぎていった。

 「奴の剣圧は、冷気までも斬るのかよ・・」

 巻きこまれない位置に避難していたアーチャーが、あきれたような声をだした。


 「ワームが居なくなれば、こちらが不利だ。今のうちに波状攻撃をかける!」

 キャスターの掛け声に、3人が答えた。

 「「「 おう! 」」」


 フロストワームに攻撃する1番の背後から、セイバーが切りかかった。

 

 「甘いわ!」

 1番は殺気感知でセイバーの攻撃を見切ると、カウンターを合わせてくる。


 「まだまだ!」

 セイバーは、カウンターでダメージを負いながらも次の一撃へと繋げて行く。

 「貴様では俺には勝てん!奥義、壁抜け!」

 再び、1番が奥義を放とうとした、その間合いに、キャスターが小盾を構えて割り込んできた。


 「ぬう・・」

 距離の狂った奥義は、ただの斬撃となり、セイバーの盾で防がれる。

 そこに背後から忍び寄ったアーチャーが無言で短剣を突き立てようとした。


 「奥義、後の先の旋風斬!!」

 背後のアーチャーのバックスタッブ、それにタイミングを合わせたセイバーの剣とキャスターのメイスの一斉攻撃を、1番は、旋風斬のカウンターで、全てを弾き返した。


 「「「 ランサー!! 」」」


 それら全てを囮にして、ランサーのブースト・ファイアーランスが解き放たれた。


 「・・くらえ!」



 しかし、それさえも1番は切り裂こうとした・・


 「御留技・・・何?!」


 裂風を放つ為に刀を鞘に戻そうとした、1番の手が止まった。

 刀が鞘に納まらない・・・


 見ると、鞘の鯉口に、いつの間にか銀色の破片が突き刺してあった。それが邪魔をして刀を戻すことが出来ない。


 「貴様!!」

 アーチャーを睨みつけたまま、1番はファイアー・ランスの直撃を受けた・・・



 「やったか!?」

 「・・削り切れていない・・」

 アーチャーのフラグに、ランサーが落ち着いて答える。


 その言葉通りに、炎の陰から、あちこち燻った1番が踏み出して来た・・

 ただし、その足取りは弱々しいものであった。


 「・・格下にここまで追い込まれるとはな・・俺も焼が回ったようだ・・」


 「個の力に溺れて、群れを侮ったお前の負けだ・・」

 キャスターを取り巻くように、他の3人が並んだ。


 「群れか・・俺の群れはあの時、滅んだ・・」

 1番は、どこか遠くを見つめているようであった・・その背後から、フロストワームが大顎を打ち鳴らしながら迫って来る・・


 「だが・・ただでは終わらん!!」

 振り向きざまにワームに必殺の一撃を叩き込んだ。


 「奥義、後の先の壁抜け!!」

 フロストワームの頭に、カウンターで、装甲を無視する一撃が突き抜けていった。


 その瞬間、絶命したフロストワームの全身が、氷のように砕け散って、洞窟中に飛散した。


 「まずい!避けろ!!」

 キャスターの叫びと、氷の破片が降り注ぐのは、ほぼ同時であった・・


 青水晶の間は、氷の結晶で埋もれた・・・



 



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