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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
435/478

その時、激震が走った

遅くなりました、申し訳ございません。

 局地的な地震と、オババの緊急念話は、ダンジョンの各地に喧騒をもたらしていた。


 「え?揺れてる?」

 「地震みたいデスね」

 「・・&・・」

 ボーン・ガーディアン達に、事情を説明した後で、今後の方針を検討していたビビアン達を、小さめの揺れが襲った。


 それと同時にキャスターとランサーにはオババからの叫びの様な念話が届いた。

 「・・こんな奴まで呼び出して来おった!敵は本気でここを潰すつもりじゃ!」

 「カタカタ!(オババ様!大丈夫ですか?!)」

 「カタ(反応がない・・)」


 二人は顔を見合わせて、オババの元に駆けつけようとしたが、ビビアンに止められた。

 「ちょっと、ここの守りはどうするのよ!」


 はたと足を止めて振り返ると、

 「「カタ!(頼んだ!)」」

 

 「馬鹿じゃない?!眷属以外にコアルームの防備任せるとか、ありえないし!」

 

 いくらダンジョンコアが不在とはいえ、この部屋を破壊されたらその間は、殆ど全ての機能が使用出来なくなる。ゲスト認定もされていない不審者に、丸投げして良いはずがなかった・・


 「カタカタ(泣き虫ビビアンなら信用出来ます)」

 「カタ(霊獣が居るなら悪さはしないはず・・)」

 そう言い残して、ボーン・ガーディアン二人は、青水晶の間へと走って行った。


 「ちょっと待ちなさいよ!今、悪口言ったでしょ!!」

 ビビアンの声は、虚しくコアルームに木霊した・・


 「何よアイツら、人の好意に付け込んで・・」

 そう言いつつも律儀にコアルームを守ろうとするビビアンであった。


 「無事だといいデスけどね・・」

 「あら、死神なのに優しいのね?・・」

 「私の見えない場所で、魂が彷徨うかと思うと、心配デス・・」

 かきいれ時を逃したくない、デスであった・・・



 凍結湖調査班、地下水路部隊もまた、地震を感じていた。

 バトル委員会の警告により足止めを余儀なくされたメンバーは、周囲の迂回路の探索を終えると、空気だまりのある地下洞窟で休息をとっていた。


 「こっちはハズレだったすね・・3にヒットっす」

 暇を持て余したワタリが、ボヤきながら、棒手裏剣を岩の的に目掛けて投げていた。


 「ギャギャ(まだわかりませんよ、大物が残っているかも・・7にヒットです、ビンゴ)」

 メンバーの士気を維持しようと、自分でも信じていない予想をのべるアズサである。ちなみに3x3の的あてビンゴもアズサの方が上手かった・・


 「どっちでもいいけど、待たされるのが一番苦痛だぜ、ジャー・・あ、5に命中した、ダブルリーチ」

 ベニジャは、退屈が天敵らしく、何でも良いから暇潰しをしようとゴネた。そこで始まったのが的当てである。ちなみにベニジャは、大蛙の舌で参戦している・・


 「みなさん~、少しダラけ過ぎでは、ないでしょうかあ~」

 水中呼吸の呪文付与の為に、ゲスト参加しているルサールカのルカが、のんびりした雰囲気に釘を刺した。そう言う本人も、大蛙の腹をソファにして、一番寛いでいた。


 「とは言え、オババがゲスト認定でもしてくれないと、手助けも出来ないっす・・・外したっす・・」

 「ギャギャ(こちらに構えないほど、危機的状況なんでしょうか?・・・9にヒット、2ビンゴ目です)」

 「ルカだけなら鉄格子の隙間から入れねえかな?ジャジャ・・・また、5かよジャー」


 全員の視線がだらけ切ったルカに集まった。

 「おや?私ですか~、そうですねえ~・・出来るかも知れませんねえ~」

 しかしルカは、ポニョポニョしたお腹から降りようとはしなかった。


 「私一人で潜入しても、何も出来ないですし~」

 そう言って、暗に単独潜入を拒否した。


 地震が起きたのはそんなタイミングであった。


 「あ、今のハズレは無しっす。誰かに押されたっす」

 「ギャギャ(そんな事、誰もしませんよ、手元がすべったからって・・)」

 「いやいや、揺らされたっすよ、ほら今も・・」

 「おいおい、これって地震じゃないか・・ジャジャー」

 

 地鳴りの様な音と共に、地下水路が揺れていた。


 「水の流れが変わった?・・ここも直ぐに水没するかも~」

 水の精霊であるルカの言葉に、メンバーは慌てて集まってきた。


 「ウォーター・ブレス!」

 ルカに水中呼吸の呪文を付与してもらうと、ワタリ達は、次々に大蛙の口の中に潜り込んだ。


 「激流に流されるなよ、逸れたら鉄格子に集合だぜ、ジャー」

 「「シャーシャー」」

 「「ケロケロ」」

 「ピュイピュイ」

 水棲・半水棲のメンバーが、次々に地下水路の流れに飛び込んで行った。

 それを見届けて、ベニジャはクロコに指示を出した。

 

 「よし、アタイ達も行くよ、ジャー」

 「シャー!」

 走り出したクロコの後ろから、悲しげな女の声が聞こえてきた・・・


 

 「置いてかないでぇ~」


 すっかり忘れ去られていた、おっとり主婦のルカであった・・


 

 

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