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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
427/478

フランスが有名です

昨日、キーボードが逝きました・・

買い直しと接続で手間取り、投稿が間に合いませんでした。申し訳ありません。

これが、昨日分になります。今日の分は夜にアップする予定です。

 「何をやっておるんじゃ、あやつ等は!」

 青水晶の間で、コアルームの様子を聞いていたオババが声を荒らげた。


 「カタカタ(防衛にはセイコウしているようですが、ジゴショリは大赤字ですね・・)」

 無表情に23番が答えた。

 無論、骸骨に表情は浮かびづらいけれども・・


 「あれでは召喚したスロッグ共に、コアルームを蹂躙されるじゃろ!」

 「カタカタ(その前にクリプト・ガーディアンにセンリョウされなければ、ですが・・)」


 コアルームの戦いは激しさを増していた。

 1対1ならば、レッドスロッグの方がドラゴニアン・クリプトガーディアンよりも強い。

 しかし、ドラゴニアンは数が多い。しかも彼らに呪い殺された相手は、1分もしないうちに、クリプトガーディアンとして敵の軍勢に加担することになる。


 「こつらキリが無いゲロ」

 「もっと助っ人を呼ぶゲロロ!」

 危機感を持った前衛の声に、今、召喚されたばかりのレッドスロッグが声色を変えて鳴いた。


 「ここは地獄の玄関口ゲロ」


 すると、より巨大な空間の捻れが発生し、そこから青い表皮を持つ巨大なスロッグが出現した。


 「手ごわい敵が居ると聞いて、参上したゲロ」

 「血塗れの戦場にようこそゲロ」


 レッドスロッグと並ぶと、新たに出現した青いスロッグの巨大さがわかる。ほぼ2倍の身長と、8倍の体積を誇るその巨体は、青いトゲの生えた表皮に覆われ、その左右の腕には、凶悪な鈎爪が手の甲から、2本の剣の様に伸びていた。


 「軍曹殿、指揮をお願いするゲロ」

 「承知したゲロ」


 労働階級であるレッドスロッグに対して、ブルースロッグは戦士階級である。小さい戦場ではレッドスロッグを率いて戦い、広大な戦場では、より上位の階級に率いられて軍団を構成した。

 ブルースロッグは、仲間を呼び出すと、手近なレッドスロッグを率いて、戦場に飛び込んで行く。


 「フォーメーションは1-2-3だゲロ」

 「「らじゃーゲロ」」

 見違えるように組織立った動きで、スロッグ達の反撃が始まった。



 それらを援護しながら、キャスターとランサーは溜息をついていた。


 「カタカタ(とうとう、ブルースロッグまで登場して来た・・)」

 「カタ(あれは本来、高位の召喚呪文でしか呼べないはず・・)」

 所謂、バグ技になっていた・・


 通常の召喚呪文に比べて、プラナー・アレイ(異界の同盟者)などの知的生物を召喚・使役する呪文は、代償が必要であったり、交渉が失敗して、何もせずに帰還したり逆に襲ってきたりする危険があるが、成功すればメリットも大きい。

 特に、召喚した同盟者が持つスキルや呪文が、時として召喚者には届かない高LVの効果を持っている事が挙げられる。それにより、自らが唱えられない秘跡呪文でさえも発動する事が可能になったりする。

 無限に湧く混沌蛙軍団も、その類である。


 ただし、その運用は同盟者に任せる事になるので、想定外の結果をもたらすことも、ままあるのだが・・


 「カタカタ(ランサー・・魔力を温存しておいてくれ・・)」

 「カタ(了解した・・)」

 二人は、スロッグ達への援護を、そっと武器に切り替えた。

 あくまで魔力が尽きたので、武器に持ち替えたように見せかけながら・・


 「カタカタ(このままスロッグが、ドラゴニアンを押し切ったら、次の敵は・・)」

 「カタ(・・奴等ということになる・・)」


 悲壮な決意を秘めた二人であったが、幸か不幸か、現状の敵も予備戦力を隠し持っていた・・・



 「退去せよ!」

 

 掠れたドラゴニアンの声が響いた。

 その途端、前線で戦っていたブルースロッグが、消え失せた・・

 唖然とする手下のレッドスロッグ達に、ドラゴニアンのブレスと槍が殺到した。


 「神官がいるゲロ」

 「バニッシュ(退去)の呪文持ちだゲロ」

 「まずいゲロロ」


 召喚された異界生物にとって、バニッシュの呪文は鬼門である。魔法抵抗に失敗すれば、即座に元の異界に強制退去されてしまう。

 折角、退屈な毎日から解放されて、これから異世界でバカンスを楽しもうと考えていたレッドスロッグ達が、ざわめき始めた。


 「怯えるな、我らの魔力抵抗は高い、そうそう殺られるものかよゲロ!」

 後方で、全体の指揮を取っていた、最初のブルースロッグが激を飛ばした。

 「そうだゲロ、軍曹を信じるゲロロ」

 レッドスロッグ達の戦意が戻った。


 「退去せよ!」


 しかし、ドラゴニアン・クリプトガーディアンの神官が呪文を解き放つと、その軍曹が消失してしまった。


 「軍曹殿が!ゲロ」

 「馬鹿な、軍曹の魔法抵抗は我らの1・5倍はあるはずゲロ」

 「何かズルしてるに違いないゲロロ」


 ざわめくレッドスロッグ達は、神官の持つ杖に気がついた。

 それは、真鍮で形造られた、コブラの姿を模した杖であった・・


 「スタッフ・オブ・サーペント(蛇竜の杖)ゲロ・・」

 「あんなの反則ゲロ」

 「睨んでるゲロロ」


 バニッシュの呪文は、その異界生物が苦手とする物を触媒にしたり、焦点具にすると、対象が抵抗し辛くなるという特性があった。

 アンデッド系に聖水を使ったり、悪魔系に聖書をかざしたりする事が多いのだが、混沌蛙には蛇の杖が効いたらしい。ナーガ族やリザードマンの神官が良く持ち歩いているが、その親玉ともいえるドラゴニアンの神官が持っていたのは、スロッグ達には不幸であった。


 「術者には術者ゲロ」

 「緑のあの方を呼ぶゲロ」

 「軍曹、お願いしますゲロ」


 さらに上位の眷属を呼び出せるのは、ブルースロッグだけである。

 しかし、この場に残っている者は、全て同族を呼び出しており、次の召喚までには1日のインターバルが必要であった・・


 「こうなれば、全軍でもってあの神官へ特攻す・・」

 「退去せよ!」


 最後のブルースロッグが異界へと退去された・・


 「もうダメだゲロ」

 「誰だ、美味しい職場だって誘った奴は、責任とるゲロ」

 「あいつはもう死んでるゲロ・・」

 最初にキャスターに召喚されたレッドスロッグは、虚ろな目をしながら、クリプトガーディアンの眷属の列に加わっていた・・


 お互いにアイコンタクトで状況を確認したレッドスロッグ達は、一斉に元の世界へ帰還していった。

 召喚の契約に縛られているのは、最初のレッドスロッグのみ。それが死亡して敵側に寝返ったのなら、他のレッドスロッグには、このまま戦いを続ける義理は無かった。

 勝てる戦いならば、まだしも、負け戦に拘る気は更々無かったのである・・


 

 突如として、戦場から半分の勢力が消え失せ、一瞬の空白が生まれた。

 そこに残されたものは、多数のドラゴニアンやリザードマンの眷属を失いながらも、新たにスロッグを戦力に加えたクリプトガーディアン。それと二人のボーン・ガーディアンだけであった・・・


 「カタカタ(最初に比べて、有利になったのか?・・)」

 「カタ(どちらかと言えば・・不利だろう・・)」


 鉄格子が壊され、魔力も半分以上消費している。敵の数は減ったが、戦力的には低下はしていない・・


 「カタカタ(これはマズくないか?・・)」

 「カタ(せめて前衛が居れば・・)」

 クリプトガーディアンに、こちらの二人は相性は悪くない。彼らの足を止められる盾役さえいれば、逆転の可能性もあった。


 しかし、それを呼び出す余裕も、増援を期待する時間も、二人には無かった。

 無言で動き出した死者の軍団を、1体でも多く道連れにする・・

 同時に詠唱に入った二人に、それを阻害するべく前衛のドラゴニアンが酸のブレスを吐いた・・・



 「吹き飛べ!ブラスト・オブ・フレア!!」

 突如として戦場に乱入して来た少女の放った炎のブレスが、ドラゴニアンのブレスを吹き返し、さらに強大な威力で、後方の部隊を纏めて巻き込んでいった。

 その威力は、フィアーボールの2倍以上、効果範囲はドラゴンブレスに匹敵した。


 巻き込まれたドラゴニアンクリプトガーディアンは、一瞬にして炭化し、残ったのは、神官と、スロッグの眷属だけであった。


 「カタカタ(味方か?!)」

 「カタ(いや、どうだろう・・)」


 呆気にとられたキャスターとランサーが見たものは、ユニコーンに跨り、フェアリードラゴンを頭に乗せて、死神を背負った、ハーフエルフの少女だった・・


 「エトランジェ・デュ・ルージュ(真紅の外人部隊)参上ね」


 ノリノリのビビアンであった・・・







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