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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
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思わぬ伏兵

 『オババ様、凍結湖西岸に巨大な召喚反応が出現しています!』

 「なんじゃと、蛙共が何か呼び出しよったのか?」

 『索敵のシャドウでは、何が出現したかまでは理解できません。とにかく大きいとしか・・』

 「四つ足か、羽が生えとるかぐらいは判別つくじゃろう、よく観察させるのじゃ」

 『はっ!』


 『オババ様、せめてコアルームと、青水晶の間に防衛戦力を増やして下さい!』

 「ああ、わかったよ、18番をそっちへ、ここには22番と27番を置くから心配するでない・・」

 『18番・・ああランサーですか、彼なら連携が取り易いですが・・』

 「だから、そのコードネームは誰がつけた・・」


 『オババ様、増援はまだかよ!斬っても斬ってもキリがねえぞ、こいつら!』

 「やかましい!一辺に喋るんじゃないわ!」


 オババのダンジョンコアとしての能力は、総じて高い。

 ダンジョン知識A、戦闘力B、コア容量Bである。ただし演算速度と親和度がCであった。

 判断すべき状況が1つであるなら、知識と経験に即した対応ができた。

 しかし、多方面に問題が起きると、演算処理が追いつかなくなる。そして判断ミスが出るようになる・・


 通常ならこのような場合は、ダンジョンマスターが報告を受け取り、判断を下して命令をする。それをダンジョンコアが伝達、処理し、不都合があればマスターに変更を進言する。

 ただし、オババにはそれを行なってくれるマスターが居なかった・・・


 本来、全てを自分で判断する様には、ダンジョンコアの機能は調整されていない。

 あくまでも主従の従である事を求められているからである。

 何か理由によって、マスターが不在になったときに、ダンジョンの管理を任されることはあっても、それは一時的なもので、期間が区切られているのが普通である。

 いつ戻るかわからないマスターを、何十年も待ち続けることは、ダンジョンコアには出来ない・・・


 普通ならば・・・



 ベテランのオババが忙しさに紛れて犯したミスは3つ。

 一つ目は、本来は盾であるべき7セイバーを、凍結湖の見張りに置いて遊兵にしてしまったこと。

 二つ目は、守護者の中でも信頼できる術者を二人とも、コアルーム及び宝物庫の護りに回してしまったこと。

 三つ目は、外部からの援軍を想定していなかった為に、侵入者は全て敵であると判断してしまったことであった・・・



  コアルーム(災害対策本部)にて


 『あんのうん』 

 「ご主人様、地下水道調査班が不明領域に侵入します」

 

 コアルームの壁に投影された周辺地図は、今回は2重映しになっていた。

 地上と地下水路を重ねて投影してあるのだ。これによって、地上部隊と地下水路部隊の連携がとり易くなるはずである。


 今は、速度の関係で地下水路部隊の方が先に進んでいた。

 途中に、大鯰や骨水竜の様な、独立した領域主も存在していなかったので、侵攻が楽だった事もある。

 時々、通過する地下水路が、フロストリザードマンの領域である箇所があったが、侵入者への見張りも、警報もなかったので、黙って通過させてもらった。

 ただし、こちらの支配下には置けないので、ダンジョン領域としての接続は途切れている。なので、その先は遠話で情報をやりとりしていた。


 「コア、地下水路部隊に遠話を繋げて」

 『トゥットゥルー』


 『・・あいよ、ベニジャだぜ、ジャー』

 「そろそろ未確認領域に入るけど、何か障害がありそうかな?」

 『いまんとこ順調だぜ・・あ、ちょっと待った、斥侯のミコトが何か発見したって、ジャジャ・・』


 「オババの守護者なら、敵対せずに声を掛けてね。揉め事は勘弁だよ・・」

 『・・いや、あの婆さんと揉めないのは無理だと思うぜ、ジャジャ・・』

 確かに、素直に通してくれそうにないね・・


 『守護者とかじゃなく、地下水路が鉄の格子で塞がってるらしい・・通行止めってやつだな、ジャー』

 鉄格子か・・その先が凍結湖に通じているんだろうね・・

 「通り抜けは無理かな?」

 『ミコトでギリギリ、後は無理っぽいぜ、ジャジャ』


 ミコトだけ送り込んでも危険かな・・

 「側に誰か居ない?」

 『誰もいないぜ・・使われてないんじゃないかな、ジャジャ』


 排水路から大型の生物があがってこないようにしてあるだけかな・・

 「なら、いいか・・鉄格子はずれそう?」

 『壊していいなら、ジャジャ』

 「・・やっちゃって・・」


 ベニジャが騎乗していたクロコから降りると、鉄格子へ突進させた。

 『頼んだぜ、クロコ!』

 『シャーーーー』


 ズシンと音がして、鉄格子がひしゃげた。

 その途端、コアルームと現地にアラームが鳴り響いた。


 「え?何の警報?」

 『あうち』

 「ご主人様、館内ではなく、外部からの干渉の様です」

 『だめだってぇ』

 「ああ、委員会からの警報か」


 その推測はすぐに裏付けられた・・


 『てすてす、てすてす、皆さん~聞えますかあ~』

 あ、これ「ドジっ子」さんだ・・


 『あれ?返事がない・・どうしましょう・・こういうときは、慌てずに、一度、コンセントを抜いて~』

 「ストップ!それは危険だから!」

 『あ、なんだ、ちゃんと通じてるじゃないですかあ~』

 

 「ええ、聞えてますから、用件をどうぞ・・」

 『え?用件ですか?・・あ、そうでした、マイクのテストじゃなかったでした・・・』

 なにか凄い嫌な予感がしてきたよ・・


 『用件は、ダンジョンバトル委員会からの通達ですう・・えっと・・・あれ?メモどこ・・確かこっちのポッケに・・・』

 「あの・・急いでるんですけど・・」

 『あ、ゴメンなさい・・そうですよね、皆さん忙しいですよね・・あ、そうだ、お買い物リストの裏に書いたから、きっと休憩室に・・ちょっとお待ち下さいね・・ガチャ』

 「ガチャ??」


 ツー・ツー・ツー


 『きれたぁ』

 マジですか・・アラームだけ鳴らして放置とか、どんな嫌がらせ?


 『大頭、どうする?ジャー』

 「しばらく待機だね。どちらにしろ鉄格子を破るのは規則違反みたいだから、オババの許可がないと通過も侵入もできそうにないよ」

 『了解、こっちは他にわき道がないか調べておくぜ、ジャジャ』

 「うん、そうして、十分後にもう一度連絡するから」

 『がってんだぜ、ジャー』


 しかし、コールセンターからの返信は、なかなか降りてこなかった。


 「開けて下さい、中に忘れ物があるんです~」

 『駄目だ、あとちょっとで原稿があがるんだ。今、この部屋に危険人物を入れるわけにはいかない!』

 「でもでも、メモが~」

 『さっき無理に入ってきたときには、部屋を散らかして、インク瓶を倒しただけだ。何も持っていなかったぞ!』

 「でも、こっちの部屋には見当たらないんです・・きっと休憩室です、そうに違いないんです~」

 『もっと良く探したまえ!こちらは私がやっとのことで整頓したが、それらしきメモは無かったんだ。信じてくれ!』

 「え~、人は誰でも見落とす事がありますから~」

 『君に言われたくない!!』


 扉越しに「ドジっ子」と「貴腐人」が攻防を繰り広げていた。

 ドジっ子のエプロンドレスのお尻には、トーンの切り屑と一緒に、件のメモらしき紙片が張り付いていたが、唯一それに気がついている「管理人」には、それを指摘するつもりはなかった。


 「あらあら、あの様子だと、しばらくは時間がかかりそうね、うふふ」



 


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