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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
410/478

アバン終了

  コアルームにて


 「ギャギャギャ(私は反対だな。そもそもダンジョンの戦力は無闇に外部に侵攻して良いものではない)」

 「そんな後ろ向きな考えじゃあ、防げるものも防げないっすよ」

 「ギャギャ(だが、この異変がこちらに害があると決まったわけでもない)」

 「危険とわかってから対処するんじゃ、遅すぎるっす」

 「ギャギャ(では誰が責任を取るのかね・・)」

 「ギャ(それはやはり、リーダーかと)」

 「ギャギャ(私は勘弁してもらおう・・無謀な作戦の許可など出せんよ・・)」

 「もう頼まないっすよ!」


 

 「あれ、何やってんだい?ジャー」

 「ギャギャ(対策本部ごっこらしいです)」

 「これから出発なのに余裕あるな、ジャジャ」

 「ギャギャ(いつものことですよ・・)」

 「まあ、頼もしいってことだよな、ジャー」


 「不凍湖」の異変を探るために、二派に分かれて探索隊を派遣することにした。

 地上から湖に接近して、湖底へ潜る部隊と、地下水路を辿って、湖底の近くまで接近しようとする部隊である。

 フィッシュボーンの地底湖に終結した各部隊は、入念な装備のチエックを行っていた。中には飽きて寸劇を始める者もいたけれども・・・


 「ああいう知識はどこから湧いてでてるんだい?ジャー」

 ベニジャが長らく疑問に思っていた事を、アズサに尋ねてみた。

 「ギャギャ(大体はワタリさんの受け売りですね。マリアさんのとこで改造されたときに、ついでに覚えさせられたそうですよ)」

 「へーー、アタイはてっきりコアっぴが教えてるのかと思ってたよ、ジャジャ」

 「ギャギャ(あ、それもありますね)」

 「あるのかよ、ジャー」


 ワタリが呟く謎の言葉を、コアに聞くと意味を教えてくれる。ただし、ダンジョンコアの知識にもダンジョンマスター達の記憶が影響を及ぼしており、「使徒」という単語を尋ねても、その説明は現在も内容が更新されていた・・


 

 「ギャギャギャ(あたしはどちらかと言うと、ベニジャさん達の文化が謎ですよ。あれって任侠ですよね?)」

 「呼び方なんて知らないけどな、アタイらは生まれた時から、リザードマンならこう生きろと教わっただけだぜ、ジャー」

 「ギャギャ(でも、刺青とか博打とか、不思議に思わなかったんですか?)」

 「ぜんぜん、でもまあ、ずっと昔のご先祖様に、ダンジョンマスターに教育された人が居たのかもな、ジャー」

 ベニジャは、祖父のハクジャを見ながら、そう呟いた。



 そのハクジャは、本当の対策本部のメンバーとして、地下水路のルートを検討していた。

 「ワタシがオババ殿のダンジョンに居た頃は、大体、この辺りまでが勢力圏でした、ジャー」

 ハクジャの指したエリアは、北は凍結湖、南は不凍湖を境界線にした、かなり広い範囲であった。


 「ものすごく広くない?これ」

 「ですね、およそ30kmの直径をもつ円形と考えて差し支えないかと」

 カジャが、即座に目測してくれた。


 「とは言っても、それは最盛期であって、ダンジョンを離れる頃には半分以下に縮小していましたが、ジャジャ」

 「確かダンジョンマスターが病気で亡くなったんだよね?」

 「はい、それで維持が出来ないから、独立できるものは、はぐれとして生きていくようにと・・ジャー」

 その頃の苦難を思い出したのか、ハクジャの声が沈んでいた。


 「けれど、それが嘘だったみたい・・」

 「しかし、元のマスター様とリンクが切れたのは確かなのですが、ジャジャ」

 ダンジョンコアのオババとのリンクは残ったが、それは元のマスターが彼女にダンジョン機能の全権を委任していたからであって、直接の繋がりは途切れた事に間違いはなかったそうだ。


 「メイドとして仕えていたエルマの話だと、病気になったのは事実で、その治療の為に氷漬けにしたらしい・・」

 「なんと・・真ですか・・ジャジャー」

 

 正確には、治療方法を探すために、時間稼ぎをしているらしい。

 その為に、維持の必要な眷属は解放して、オババはひっそりと表舞台から姿を消した。

 付き従った従者達は、それぞれ各地に散らばって、その治療法を調べているという。

 

 「それで暗黒邪神教にすがっているようでは、メイド失格ですね」

 カジャが辛辣な意見を言った。

 「でも、それだけ必死だったってことなんじゃあ・・」

 「たとえ邪神の力を借りてマスターが元気になっても、その魂が堕ちてしまったのなら、待っているのは破滅です」


 結局はそうなるのかな・・もしくは他の信徒に生贄として狙われ続けるか・・


 しかし、オババほどのベテランコアが、治療法が分からない病気なんてあるのかな?

 普通ならキュア・ディスィーズ(病気治癒)で治るはずだし、難病でも高レベル呪文でなんとかなりそうだけれども・・


 「病気ではないのかも知れませんね・・」

 「というと?」

 「躰を蝕む呪いのようなものかと・・」

 

 なるほどね・・カース(呪い)か・・それも簡単なものであれば呪文で解除できるけれど、複雑な、もしくは命を賭けた呪いだとすると、厄介だね・・


 「ダンジョンバトルの結果、相手に恨まれたのでしょうか・・ジャジャ」

 ハクジャが同業者の逆恨みを心配したけれど、その当時の戦史には、それらしい戦いが無かった。

 元のマスターは穏健派だったらしく、ダンジョンバトルの戦績も穏やかなものだった。


 「ワタシも、今のマスター様の様に、こんなに激しく争っている方は、聞いたことがありませんでしたな・・ジャー」

 ・・反省してます。


 同業者ではないとすると、伝説級のモンスターとか、王家の秘宝とか・・


 「呪いと言うと、ライカンスローピー(人獣)の呪いとか、マミー(木乃伊)の呪いとかが有名だけど、こっちでも居るのかな・・」

 「後は、魔女の呪いですね・・・」


 「「それだ・・」」


 

 オババが「冥底湖の魔女」と間違えられていた、その理由が、ここで因果として巡ってきた・・・








 

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