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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第11章 湖底の棺編
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温泉物語

ちょっと仕事が押していまして、更新が夜になります。

300字ないと前書きも乗せられませんので、さわりだけ・・・

20:15頃に完成投稿しました。

  第4階層、桃の湯、女湯にて


 『かぽーん』


 湯気が立ち込め、天井に水滴をつくり、それが滴り落ちてくる・・

 天然の温泉、しかも源泉かけ流しである。

 主に大陸の北方に生息し、耐寒や冷気耐性を備える種族であっても、お湯は心地よいものらしい。

 桃の湯が開放されて、物は試しと温泉に浸かり、その魔力にすっかり虜になった女性陣がいた・・


 「ああーー、祖父さんには聞いてたけど、温泉って良いもんだったぜ、ジャー」

 まずは、凍結蜥蜴人なのに、湯船でだらしなく浮かんでいるベニジャ。


 「ギャギャ(ですね、冬になるともっと有難いかも)」

 アズサは何故か手馴れた様子で、髪を麻の手拭いでまとめて、お湯に浸かっていた。後ろ向きに肩だけ見せるのが作法なのだそうだ。


 「王都には公衆浴場もありますが、この地方では贅沢品でしょうね」

 旅慣れたカジャが、木桶で掬ったお湯で、背中を流している。蜥蜴人にしては白い肌に、薄らと牡丹の刺青が浮かび上がって、同性から見ても、うっとりするような色香が漂っていた・・


 『ぴちょ~ん』

 天井から滴り落ちた水滴が、頭に当たったのが嬉しいのか、コアはくるくると回転しながら、お湯の上をオーブで滑っている。

 ちなみに素肌にバスタオルを巻いていた。



 「しかし、カジャの姐御の背中の刺青は見事だね、ジャジャ」

 「ギャギャ(お湯を被る前は、何も無かったですよね)」

 「あれは、化粧彫りって言って、墨を入れずに彫るんだぜ。体温が上がると、薄っすらと紅色に浮かび上がってくるって寸法だぜ、ジャー」


 「若気の至りですよ・・お嬢は真似しちゃいけませんよ」

 「アタイは痛いのはダメなんだよ、見てるだけで、ウワーってなるぜ、ジャー」


 「ギャギャギャ(ベニジャさんも、いつも防水皮鎧を着ているからわからないけど、肌は綺麗ですよね)」

 「アタイ達は、3年に一度、脱皮するからね、多少鱗が傷ついていようが、脱げば新品同様なんだぜ、ジャジャ」

 「ギャギャ(いいなー、私なんかあちこち傷だらけです)」

 「アズサさんも乙女なんですから、もう少し肌を労わった方が良いですね・・できれば、皮鎧の全身をカバーできるタイプを特注するとか・・」


 「ギャギャ(そう言えば、カジャさんの着ている服も珍しいですよね。メイド服とか言ってましたけど・・)」

 「王都では、それなりに流行しているんですよ。まあ、上流階級に仕えるメイドのステータスシンボルみたいなものですが・・」


 「それ、それだよ姐御、なんで『冥途のカジャ』ほどの賭博師が、あんな『凍結湖の鮫』みたいな下衆野郎に雇われてたんだよ?ジャー」

 「話せば長くなるのですが・・突き詰めれば、『鳴きのリュウジャ』と勝負が出来ると誘われたからですね・・」

 「「ああ、なるほど・・」」


 王都でも名うての賭博師達との勝負に勝ち続けていた、カジャは、好敵手を求めて大陸を旅していたという。その時に、北に凄腕がいると聞きつけて、この地に足を向けたのだった。

 しかし来て見れば、伝説の男は、賭博の世界から足を洗い、クランの頭に納まっていた。


 いくらカジャでも、賭博師を辞めた相手に、勝負を挑むことは出来なかった。

 途方に暮れている彼女に声を掛けたのが、今は亡き「凍結湖の鮫」の頭だった。


 「予想以上に早くその機会が訪れたと思ったのですが、ワタシの相手はリュウジャではなく、テオ様でした・・後は、皆さんがご承知の通りです・・」

 カジャは湯船に浸かりながら、そう語った。


 「なるほどねー、アタイにはエルフの好さはわからないけどな、ジャジャ」

 「ギャギャ(ケモナーですしね・・カジャさんも苦労するかも・・)」

 「も、って、アズサも苦労してんのかよ、ジャジャー」

 「ギャギャ(私の事は良いんです!)」


 「あの方も、もう少しシャキッとしてくれないと・・」

 「ギャギャギャ(ワタリさんは、やる時は殺るんです!)」

 「おや、私は誰とは言っていませんが?」

 「ギャ(あう)」

 左右からニヤニヤと見つめられて、アズサは顔を真っ赤にしてお湯の中に沈んでいった・・・


 『ぷはーー』


 一足早く、お湯から上がったコアは、更衣室に設置されたエールサーバー(でかい瓶をコールドブレスで冷やして、底に栓付きの注ぎ穴を開けたもの)から、湯上りの一杯を堪能していた。

 ちなみに半分以上は、温泉の順番待ちをしているアエン達に飲まれてしまっていたけれども・・・


 「お風呂の順番待ちの間も、飲めるなんて最高ですよね♪」

 『うぃっく♪』



 そして、男湯では、楽しみにしていたエールが、アイアン爺さん他のドワーフ達に、予備の瓶も含めて空にされていた事に激怒したワタリが、女湯の更衣室に乱入して、フルボッコにあっていた・・・


 「・・オイラは、ただ、湯上りの一杯が欲しかっただけっす・・」


 「「「湯上りのおっぱいが欲しいとか言うなーー」」」




  閑話休題


 「ギャギャ(そういえば、コアさんが言ってた『かぽーん』て何の音ですか?)」

 「あれはですね、一説によれば木桶が床にぶつかってたてる音だそうです・・」

 「いや、それなら『ガコッ』とか『ボコッ』とかだろ、ジャー」


 カジャは、洗い椅子に木桶を伏せて立てかけると、別の桶に汲んだお湯を、ざあーっと流した。

 すると、浮力で摩擦を失った木桶が、滑って床に打ち付けられた。


 「カコーン」


 澄んだ音色が、浴室の中に反響した・・


 「「なるほどー」」

 感心していた二人だったが、アズサは、ある事実に気がついた。


 「ギャギャ(でも、それだと『かぽーん』でなくて『かこーん』ですよね?)」

 「それにも諸説あるのですが、王都では公衆浴場が流行ると、自分用の洗い桶を持参する方が増えまして・・」

 「ほうほう」

 「出来るだけ持ち運び易いように、軽い素材で桶が作られたのです・・」


 その中でも、軽さと防水性で人気が高かったのが、大蛙の皮でつくった洗面桶だった。

 伏せた形が呼び鈴に似ていたところから、「蛙鈴けろりん」と呼ばれたその桶は、床にぶつかった時に、木桶よりも軽い音がしたそうである・・・


 『かぽーん』


 


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