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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
349/478

開墾より焼畑が楽な理由

後半1000文字ほど、保存ミスで電子の狭間に消えましたTT

打ち直しが出来上がり次第、再アップしますが、少し時間がかかりそうです。申し訳ございません。


再アップしました。

文字数が大幅に増えているのは、怒りに任せてタイピングした所為ではありません・・きっと・・


 6台に数を減らしたキャラバンは、速度を緩めずに南下を続ける。

 先頭の1号車に追いついたワタリは、団長に状況を伝えた。


 「4号車が喰われたっす」

 『・・だらからあれほど荷物を捨てろと言ったのに・・』

 「蜘蛛の追撃は一時的に止まってるっすね」

 『先行部隊と合流するまでは、このまま進もう』

 「それがいいっすね」


 前方から出現して、進路を塞ごうという蜘蛛もめっきり数が減ってきた。どうやら蜘蛛の集団の主力は、後方に引き離すことに成功したようだ。

 ただし、速度を緩めれば、やがて追いつかれることになる。

 疲れた牽引アルマジロを、励ましながら、沼杉の林へと向っていった・・・



 沼杉の林から立ち上っていた黒い煙も、今は、少し収まってきていた。

 森林火災でもあったかのように、沼杉の葉が燃え落ちていたが、杉の幹は、燻ぶっているだけで、燃え残っていた。

 ストームタスカーに同乗したエルフのソーサラーが、通行の邪魔になりそうな杉を、片っ端から呪文で切り倒していた。


 「ウィンド・カッター!」「ウィンド・カッター!!」「ウィンド・カッター!!!」


 根元にザックリと切れ目の入った沼杉に、他の1頭が圧し掛かり、倒れた幹を脇へ寄せている。

 未だに燻ぶっている幹は熱くてやっかいなのだが、火を放ったのが自分達である以上、文句も言えなかった。

 ドワーフ二人も、タスカーから降りて、得意の斧で、小さな木を伐採していた。

 

 やがて中州にある沼杉の林を通り抜けられるぐらいの道が切り拓けた頃、南東の方角に散っていった蜘蛛を警戒していた、アップルリーダーが戻ってきた。

 「ギャギャ(蜘蛛は完全に散ったみたいだ。もうこの付近にはいない)」

 「それは良かったです。こちらも粗方終わりました」


 すでに魔力が底を尽きそうなソーサラーが、蜘蛛の姿が見えないことに素直に喜んだ。

 「風呪文での伐採は、効率が悪くて・・」

 「ギャギャ(焼き払ったのも無駄ではなかったか・・)」

 周囲が湿地帯なので、中州から延焼することもなかった。鎮火するまで少し時間がかかったが、その後は燃えて脆くなった沼杉は、逆に切り倒し易くなったのだ。


 「ギャギャ(どうやら間に合ったようだな)」


 アップルリーダーの見つめる先には、アイスドレイクの部隊に先導されて、中洲に走りこんでくるキャラバンの姿があった・・・



 ストームタスカー部隊が、再合流したキャラバンは、速度をやや緩めながら南下を続けた。

 本当ならば、どこかで野営をして、牽引アルマジロを休ませたいところなのだが、後方に蜘蛛の大集団を抱えている以上、停車するのは危険すぎた。


 「湿地帯の真ん中で休憩はしたくないっすけど、このまま移動を続けても大丈夫っすか?」

 ワタリの問いかけに、1号車の車中から団長が答えた。

 『牽引アルマジロなら、この速度を維持していれば問題ないはずだ。こいつらは瞬発力はないが、持久力は大したものなんだ。水も餌も出発前にたっぷり飲み食いさせたので、2日間は十分もつぞ』


 先行部隊に混ざったドワーフ二人は、そのままタスカーに乗せて移動することにした。

 7号車に戻すと、重量オーバーになりそうだったからである。

 二人の代わりにエルフの小隊長を移してもよかったのだが、それだと7号車の戦闘指揮能力が低下してしまう。さらに今や、7号車の守護聖獣に祭り上げられたピョン太を、降車させようという意見はどこからも出なかった。


 アイス・ドレイクの持久力も心配されたが、湿地帯では水に浸かる事が多いために、岩場を走り回るより元気であった。

 ストームタスカーも、まったく問題はなく、どちらかというと暴れ足りない様子である。


 「なら、予定通り、第二補給拠点を目指すっす」


 だがその前に、次の難所が待ち構えていた。

 浮き草に隠された、深い縦穴が林立する、天然の落とし穴群である・・・


 「今朝の遠話では、司令部がなんとかするって言ってたっすけど・・なんとかなるもんすかね?・・」

 一抹の不安を抱きながら、ワタリは前方を見据えていた。


 次の難所まで約3時間、司令部を信じて、突き進む事しか出来そうになかった・・・




 その頃、ダンジョンコアルーム(司令部)は、ボーン・サーペントと激闘を繰り広げていた。


 「こんなのが居るって、聞いてないよ!」

 「申し訳ございません、これは私にも予想外でございました」

 僕の横で、リザードマンなのにメイド服を着たカジャが、素直に頭を下げていた。


 事の発端は、部隊を北に迅速に送り込む方法を、カジャが進言してきたことから始まった。


 「この地下水道を使います」

 カジャがコアの投影した地域マップに描かれた点線を指差す。

 「例の北の山脈まで続いているという地下水道だよね。でもミコト達に牽いてもらっても、そんなに速くは移動できないよね」

 確かに地上を、障害物を避けて、警戒もしながら進むよりは速いかもだけど、それほど劇的に短縮できるわけでもなさそうだった。


 「そこで転送します」

 カジャの説明で、点線が途中まで色が変わっていく。

 「ドワーフの沈没脱出艇を探しに行くために、眷属の皆さんがこのラインまで索敵を終了しています。コア殿なら即座に領域化できるはずです。その最先端まで地上部隊を転送するのです」


 なるほど、転送先は水中になってしまうけど、それは事前に水中呼吸の呪文を付与しておけば良いのか・・しかし最北湖まででも60kmは離れているのに、領域の維持なんてできるのかな?

 「負担になるようであれば、手放しても構わないと思います。あくまで今回のみの非常手段と考えて頂ければ・・」


 転送魔法陣の魔力ラインを繋ぐ為にトンネルを掘ったと考えれば良いか・・不要になったら破棄する方向なら維持費もいらなさそうだしね。

 「よし、まずヘラジカの湖までやってみよう。ダメだったら他の手を考えれば良いや」

 『れっといっとびー』



 「それで、ワタシが呼ばれたんですね~」

 この作戦には水中呼吸を付与できる、水精霊のルカの協力が不可欠だからね。


 「はいはーい、順番に並んで下さいね~、横入りする悪い子は、呪文の対象から外しちゃいますよ~」

 地上部隊に選ばれようと、揉み合いをしていた親方率いるハリモグラチームと、穴熊チームが、ピタリと動きを止めると、大人しく並び始めた。

 「キュキュ」 「ギュギュ」

 地下水道から地上に出るには、彼らに通路を掘ってもらう。もちろん、水中で呼吸のできる凍結電撃ウナギのミコト達や、呼吸の必要のないスケルトン部隊は、制圧した拠点の防衛力の主力として準備してもらっている。


 「コア、領域化開始して」

 『てらふぉーまー』

 それ、Gに邪魔されるから・・



 ・・・フラグだったらしい。


 『しきべつしんごう、あか!』

 まさか使徒じゃないよね?


 コアの地域マップの北に延びる点線が、領域化されると緑色に塗変わっていく。その動きが途中で止まった。丁度、ヘラジカの湖辺りだ。

 『てきせいえりあ』

 どうやらヘラジカの湖には主がいて、コアが領域化できないらしい。

 「ミコト、ヘラジカの湖に主なんていた?」

 他の2体は召喚したから知らないだろうけど、ミコトは地元出身だ、何か知っているかもしれない。


 『ピュイピュイ』

 『びりびりぬぼー?』

 でかい電気ナマズが主だそうです・・


 「それって今のミコトさん達より強いんですかね~」

 「『なるほど!』」

 ルカの一声で、ミコト達3体を転送して、ボスを排除してもらうことにした。

 お互いに決め技の電撃が無効ならば、あとは肉弾戦の強さで勝負が決まる。

 すでに個体でボスのランクに並んでいたミコト達は、3体の連携であっという間に巨大電気ナマズを調伏してしまった。

 最後まで降参せずに戦い抜いたナマズに敬意を表しつつ、死体は領域に持ち込んで、後ほどスタッフが美味しく頂きました。


 『えりあかいほう!』

 コアの叫びとともにマップ上のヘラジカの湖が領域化に入った。


 「けど、脱出艇を探しに行った時は何も起きなかったよね?」

 「その時は領域化はしていなかったので、見逃されたのでは?」

 なるほど、勝手に通り抜けていったけど、追いかけて通行料を取るほどでもなかったということか・・



 地図上の点線は、すごい勢いで緑色に塗りつぶされていく。


 「このまま行けるかな・・」


 その呟きは2度目のフラグになってしまった・・・



 『しぐなるれっど!』

 再び、敵性勢力のエリアにぶつかったらしい。位置的には最北湖の手前辺りである。


 「あともう少しだったのにな・・」

 第二補給拠点の側まで繋がれば、あとは地上を行く予定だった。なぜなら地下水道といえども、その先は黒衣の沼の勢力範囲かもしれなかったからだ。


 「位置的には、かの魔女の領域というより、最北湖の主の可能性が高いかと・・」

 カジャが冷静な判断を下していた。

 「あそこって生物は居ないという報告があったような・・」

 水質のアルカリ・イオン濃度が高すぎて、魚が住みづらいという話だったはずだ。飲料水としては問題ないらしい・・鉱泉みたいな成分なのだろう・・


 「魚が住まないからといって、モンスターが居ない理由にはならないと思いますが」

 カジャから至極まともな指摘を受けてしまった。

 「とにかく勢力を主張する何かが存在するのは確かなのか・・」

 「ミコト殿だと危険かもしれませんね」


 魚類といえども魔獣にまで進化したミコト達だから、水質の変化ぐらいで弱体化はしないと思いたいけれど、最北湖の謎が解明されるまでは慎重に行ったほうが良さそうだ。


 「まずは最北湖に繋がる枝道を探そう。コア、スケルトンファイター・スカウトカスタムを現地に4体召喚して」

 『みるみる!』


 あれ?現地で召喚できるなら、こっちからわざわざメンバーを転送する必要ないような・・

 「キュキュ!」 「ギュギュ!」

 あ、わかった、わかったから、すねに齧り付かない様に・・昔と違って骨まで削れるから、ね・・

 「キュ!」 「ギュ!」


 穴掘り部隊が共同して展開した、「出番無し反対運動」を鎮めている間に、スカウト・カスタム(索敵の技能付与)が地下水道から最北湖に繋がる通路を発見した。

 ただしそれは非常に細い通路で、ほとんどの眷属は通過できそうにもなかった。


 「これは一度、地上に出てから、湖に突入した方が良さそうだね」

 「水質の関係で、ニジマスや水すましを偵察に送り込んでもダメそうです」

 「よし、穴掘りチーム、出番だよ!」

 「キュキュ!」 「ギュギュ!」

 

 「出現位置は水中だから、慌てないこと。コアの指示に従って地上までの通路を掘り抜いて」

 「キュキュキュ」 「ギュギュギュ」

 「転送!」

 『とらんすぽーと!』


 領域化した地下水道に、穴掘りチームが次々と出現する。彼らは器用に水かきしながら、通路の天井に泳ぎ着くと、その爪に力を込めた。


 ギャリギャリギャリギャリ


 驚く程の短時間で、地上へと繋がる縦穴が掘り抜かれた。

 最北湖の南岸に、ポコポコと顔を突き出すと、キョロキョロと辺りを見回してみる。

 「キュキュ」 「ギュギュ」

 安全を確認すると、穴掘りチームは地上に這い出て、すぐさま、その周囲を要塞化し始めた。

 その間にも、スカウト・スケルトンが、苦労しながら縦穴をよじ登ってきた。そして次々に最北湖にダイブしていく・・・


 地上部分の要塞化が終了すると、暫定的に領域化に成功した。

 これで地上部隊も送り込めるようになったと、第二補給拠点へ遠話を掛けようと思っていた、その時、

湖底で、スカウト・スケルトンが奇妙なものを発見した・・・


 「これ、水竜の化石だよね・・」

 透明度は高いけれど、コアの映し出すモニター越しでは、湖底の映像は鮮明には見えなかった。

 「確かに骨格は水竜のようですけれど、化石というよりは、白骨死体が土に埋まっているように見えますが・・・」

 

 うん、そうだよね・・でも化石ってことにしておきたかったんだよ・・


 なぜなら白骨死体だと、動き出すって相場が決まってるからね!


 『あらーむれっど!!』

 コアの叫びと、スカウト・スケルトンが噛み砕かれるのが同時だった。

 

 「スケルトン・サーペント!」

 カジャが叫ぶが、事態はその上を行った。

 水竜の白骨死体は、噛み砕いたスカウトを吐き出すと、その口から強アルカリのブレスを噴き出したのだ。


 灰色の水流に巻き込まれたスカウトスケルトンは、一瞬にして全滅した。


 「ボーン・サーペントだ・・・下手すると呪文もつかうぞ・・」



 最北湖の主は、予想を遥かに越える強敵だった・・・








 





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