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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
333/478

ある意味ブラック

 「危なっ!青銅の扉を壊すのに原子分解の呪文なんか使ってきたよ」

 なんとか侵入者の斥侯役を確保して、縦穴に全員退避できたけど、ギリギリだった。

 酸欠の罠は上手く働いたけれど、誘い込めたのは、短剣を投げつけられても我慢した、スケルトンファイターのお陰かな。

 『ぐっじょぶ』

 『カタカタ』


 さて、縦穴の探索はあきらめて、一度、出口付近まで退却した冒険者パーティーだけど、さすがにこのまま引き下がることはしないだろうね。仲間の捜索もするだろうし、もう一度ルートを変えて潜ってくるはずだ。

 ただし、斥侯役が居なくなったので、これからは、さらに固まって移動すると思われる。罠の探知も、主に呪文に頼ることになるだろうね。


 「ロザリオ、準備は良い?」

 『主殿、いつでもいいぞ』

 「配置はどんな感じにしたの?」

 『範囲魔法より、重い一発を入れて来るタイプみたいだからな。小出しにするより囲んで殴殺するつもりだ』


 なるほど、少し被害がでるかも知れないけれど、その方が結果的には正しいのかな・・

 「了解、くれぐれも無理はしないようにね」

 『ああ、親方への腹パンの借りは必ず返す』

 ・・聞いてないね、これ・・


 「救護班の準備もよろしく」

 『こちら救護班でしゅ。ロザリオしゃんは治しぇましゅが、しゅけるとんの皆しゃんはヒールすると、逆に具合が悪くなるでしゅよ』

 ああそうか、聖属性や光属性には相性が悪いんだった・・

 闇属性のキャスターもこの先は必要になるのかな・・・


 『くっくっくっ』

 いや、コアの左腕の封印はまだ解けてないからね。

 『おのれゆうしゃ』

 あ、その左腕は、勇者に封じられた設定なんだ・・



 しばらくするとタンク役の治療が終わったのか、冒険者達は、3人で陣形を組みなおして、階段を真っ直ぐに降りてきた。

 治療中に外から狙撃しようと、アズサとアサマを遠回りで送り込んだのだけれど、階段の降り口に見えない召喚獣が配置されていて、即バレてしまった。

 吼えながら噛み付いてきたというから、フェイスフル・ハウンド(忠実なる番犬)だと思う。

 あれは結界の一種で、番犬にHPとか無いから、ディスペル・マジックで消すしか方法が無いんだよね・・


 『ギャギャ(ラムダさんには頼めないなんですか?』

 「特にラムダ自身にとっての脅威にはならないからね。難しいかな・・」

 逆さ妖精竜は何を考えているのか理解しづらいのが難点なんだよね。魔法戦になると頼りになるんだけれど・・



 それはさておき、侵入者パーティーだけれど、アルカナ・ナイトを先頭にした三角陣形を保ちながら、地下墓地の玄関ホールまでやってきた。

 やや少女が内側寄りで、神官が外寄りに立っていて、見えないけれどインビジブル・ストーカーも来ているはずだった。パーティーの後方で、時おり埃が巻きあがったりするのは、アンシーン・サーバント(透明な従者)でも引き連れているのだろうか・・


 「サーバントCは正面の扉を押し開きなさい!」

 リーダーらしき少女が透明な従者に命令している。やはり罠はサーバントを使った漢解除(身体を張って無理矢理突破する方法)に切り替えたようだ。


 「・・しかし冒険者のリーダーって、あのタイプが多いのかな?・・」

 『ギャギャ(ビビアンさんに似てますよね)』

 『ギャギャギャ(やはり放火しまくるのか?)』

 いやいや、同じ様に見える術者でも、ビビアンは火炎属性のソーサラー(精霊術士)で、このリーダーはウィザード(魔術士)みたいだから、大分違うと思うよ。

 

 『ギャギャ(どう違うんですか?)』

 「精霊術士はエレメント(元素)を元にした呪文体系を使う術者で、純粋な魔力やフォース(理力)は無属性元素として扱っているんだ。魔術士は、その無属性が基本となって、魔力操作や召喚などのアルカナ呪文の系統を確立しているクラスかな」

 これも僕のダンジョン知識からの情報だから、この世界の分類とは若干ずれがあるかもだけれど・・


 『・・ギャギャ(良くわからないが、放火はしないと)』

 「ファイアーボールぐらいは使えるかも知れないけれど、見境なく撒き散らすことはしなさそうだね」

 周囲を巻き込むかどうかは、術者のクラスよりも個人の性格によるものなんだけどね・・



 玄関ホールでは、サーバントが石の両扉を開けられなくて困っているようだ。普通のドアは開け閉めできても、重い石の扉は筋力が低すぎて開けられないみたいだね。


 「サーバントD・E・F、石の扉を開けるのを手伝いなさい!」

 ん?同時に4体展開しているのか?だとすると高レベルのサーバント・ホードなのか・・

 4体でやっとという感じで、石の両扉がゆくっりと開き始めた。


 その瞬間、扉の奥から矢が射掛けられた。


 「敵襲!」

 アルカナ・ナイトが叫ぶと、盾を翳して背後の二人を庇った。

 盾や鎧に当たった矢は、まったく傷を与えられずに床に落ちる・・


 『弓隊、散開!』

 効果なしとみて、ロザリオがスケルトンファイターの弓隊を下がらせる。

 『抜刀!』

 中央ホールに並んだ、1体の骸骨戦士長と配下の骸骨戦士6体が、ロザリオの号令で一斉に剣を引き抜いた。その動作は洗練されていて、よく訓練されていることがわかった。


 「あの黒い鎧の戦士はそこそこ出来るな。だが一番ヤバいのは銀色の奴だ」

 アルカナ・ナイトが冷静に敵の強さを測っていた。


 「ええ、わかるわ、あの奇妙な狐の仮面・・相当、やばい奴ね」

 「・・意味が違う気もするが、とにかく銀色集中でいいんだな?」

 神官は、主目標をリーダーに確認すると、まずは聖句を唱え始めた。


 「魔力を司りし我等が女神よ、邪悪な術で操られし、哀れな使者に安息をもたらし給え!ターン・アンデッド(怨霊退散)」

 聖句とともに掲げた盾に刻まれた魔術を表すルーン文字が光り輝くと、骸骨戦士が4体、強制送還されてしまった。

 床に崩れ落ちる白骨死体を見ながら、それでも神官は険しい顔をしている。


 「ターン・アンデッドの効果が薄い。敵のランクが高いのか、高レベルの術者が召喚・使役してる可能性があるぞ」

 「大丈夫だ、一度に相手にはしないからな」

 そう言って、アルカナ・ナイトが開いた扉の前まで進み出た。通路を塞ぐことで、玄関ホールに雪崩れ込まれるのを防ぐつもりのようだ。


 「まずは兵隊2体を瞬殺する・・」

 通路を迫ってくる2体の骸骨戦士に集中していたアルカナ・ナイトだったが、後ろの骸骨戦士長が黒い剣を振り上げたときに驚愕することになった。


 神官の聖句で退散させられたはずの4体が、再び立ち上がってきたからである。

 「おいおい、反則だろう、それは・・」


 アルカナ・ナイトの首筋を嫌な汗が流れ落ちていった・・・






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