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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第10章 ドワーフキャラバン編
330/478

魔法兵団再び

 今朝方、接続障害で書き込みも投稿も出来ませんでした。

 これが今朝投稿される予定だった話です。深夜にもう1話更新する予定です。

  オークの丘の北にある林の中にて


 夏の盛りを過ぎて、季節は徐々に秋に移り変わり始めていた。

 この地方では、今が最も自然の恵みが豊かな季節である。鳥も獣も昆虫も、冬を越すために出来る限りの食料を確保しようと、活発に行動を始める。

 日が沈んで、木々が月明かりに照らされる頃、騒がしく鳴いていた虫の音が、ピタリと止んだ・・・


 息を潜めて何かが訪れるのを待っているかのようだ。

 そして、宙に裂け目が出現した。

 それは、正確に長方形を形作り、扉の形状になると、ゆっくりと開き始めた・・・


 「外には・・何もいないな・・」

 空間魔法の避難部屋から、そっと外を伺いながら、ランチャーは呟いた。

 ここは虚無の魔法兵団が退避した、ディメンジョン・シェルターの内部である。


 「待ち伏せをしているかと思って、夜まで時間をつぶしたが、考えすぎだったか・・」

 タンク役のロータスが、奇襲に備えて構えていた盾を下ろしながら、答えた。


 「まあ、退避する所を目撃されなければ、長距離転移して帰ったと思うでしょうね。ふふん、アタシの読み勝ちよね」

 リーダーのコルベットが胸を張って威張っていた。


 「だといいけどね。思ったよりデキる相手だ、油断は禁物だよ」

 参謀役のカレラが引き締める。すでに一度、二人が精神攻撃を受けて敗退していた。その時にロータスとランチャーはメイン武器を無くしており、現在は予備の武器を使っている。

 戦力的には低下しているのだから、慎重にならざるを得ない。

 しかも敵の正体がダンジョンマスターであるならば、尚更であった・・・


 

 この数時間前・・・


 「それで、幻覚を見せられて、失神したところをインビジブル・ストーカーに助けられたってわけね」

 シェルターの中で、意識を取り戻した二人に、コルベットが状況を説明させた後、説教をしていた。

 「案山子が罠だってことぐらい、想定して行動しなかったの?アンタ、何年斥候やってるのよ!」


 「すまねえ、最初に転がっていたのは間違いなく、単なる野菜だったんだ。だが、それに気を取られていた間に、いつの間にか他から状態異常を仕掛けられてたらしい・・ あの時、聞こえたと思った仲間の声は、暗示によって生み出された幻聴だったんだな・・」

 「おい、あれって幻聴なのか?奥まで野菜をもってこいっていうお前の声だよ!」

 ロータスがランチャーに詰め寄った。


 「ああ、俺はそんなことを言った覚えはないし、落ちていた野菜は俺も拾って持ち運んでいたからな。まあ、どっちが本物でどちらが幻覚だったかは知らないが・・案外、二人とも幻覚を持たされていたのかも・・」

 「信じられねえ・・あれが幻覚かよ・・」


 ロータスは、あの麦畑で起きたことを思い返していた。

 ランチャーだと思っていた声に従って、野菜を抱えながら麦の穂をかき分けていたが、いつまでたってもランチャーには追いつけなかった。やがて腕が重くなり、つい両腕で抱えてしまった。

 その瞬間、野菜が内部から炎を上げて燃え上がったのだ。


 反射的に放り出そうとしたのだが、何故か腕に張り付いて取れなかった。いや既に腕の皮膚が焼けただれて、野菜に張り付いていたのだ。

 剣で切り離そうとしたが、両腕を手枷のように固定されている為に、思うように腰の剣が引き抜けない。

激痛に耐えながら、鞘から抜き出したときには、炎は手の先から肩まで延焼しており、すでに剣を握る力さえ残っていなかった・・・


 気が付くと白い空間に横たわっていて、見たことのある顔が見下ろしていた。

 「・・どうせなら、お迎えの天使は、幼女じゃなくて綺麗どころが良かったぜ・・」

 そう呟いたら、顔面を思いっきり踏まれた。

 それで、自分がまだ死んでなくて、ここがディメンジョン・シェルターの内部だと気がついたのだった。



 「二人の話を総合すると、あの麦畑自体が、強力な暗示結界になっていて、そこに足を踏み入れると、自動的に精神攻撃を仕掛けてくるようだね・・」

 カレラが罠の正体を推測していた。


 「あの案山子は単なる囮ってこと?」

 「いや、あれも罠の一部だろう・・暗示を強化する為に配置されているのだと思う・・」

 実際に、案山子が物理攻撃をしてきていないので、カレラがそう考えるのも致し方なかった。


 「とにかくあれは、アイスオークのクランなどで扱える代物ではないな」

 「だったら何なのよ?」

 「そうだな・・・あえて言うならダンジョンか・・」

 「・・麦畑の?」

 コルベットはジト目でカレラを見上げて尋ねた。


 カレラもそこは自信が無かった。ダンジョンにしては開口部が多すぎるし、麦畑や果樹園を地上部に開放しているのも聞いたことがなかったからだ。

 「あとはノームでも巣食っているかだが・・」


 大地の精霊と呼ばれるノームは、姿からすると三角帽子を被った小人の集団である。しかし彼らは土の中を自由自在に歩き回り、幻覚で敵を混乱させ、召喚したアースエレメンタルやゴーレムで粉砕してくる。見た目に惑わされると大変に危険な生物であった。

 彼らなら、幻術結界はお手の物だし、丘を掘り抜いて整地するのも簡単なはずだ。とはいえ、こんな人里に近い、しかも単なる丘に巣を作るとも思えなかったが、農耕ダンジョンとどちらが在りうるかと問われれば・・


 そのとき、ロータスが何かを思い出したように呟いた。

 「ああ、そう言えばビスコ村のギルドの受付が言ってたな・・北に新しいダンジョンが出来たけど、入場制限してるから、調査を希望するならギルドに相談してくれって・・」

 それを聞いた3人が、すごい勢いで振り向くと、ロータスを睨みつけた。


 「「「早くいえ!」」」

 


 そうして、敵がダンジョンであり、農耕をするということはダンジョンマスターが存在する確率が高い、というかまず間違いないという結論に達した。


 「どうする?ヘタをすると依頼自体が罠で、我々を壊滅させる策かもしれないぞ」

 カレラは、王都で活動している間に、いざこざのあった冒険者や貴族の顔を思い浮かべていた。


 「こんな北の果てで、そんなまどろっこしい事する奴いる?しかもエルフまで巻き込んで」

 コルベットの意見に他の二人は頷いた。それは彼女の考えを正しいとするよりも、無くした武器の回収がしたいからに他ならなかった。


 「というわけで、再挑戦するわよ。相手がダンジョンマスターとわかっていれば、出し惜しみもしないしね」

 「しかし、彼らの装備はどうする?」

 マジックアイテムから、黒鋼とはいえ通常の材質の武器にランクダウンしている二人を指さした。


 「しょうがないから、あたしが何とかするわ。いい、特別なんだからね、いつも貰えると思わないでよね!」

 そう言い放つと、コルベットが付与呪文を詠唱し始めた。


 「魔力よ集え、そして輝け、刃を包みて魔剣と成せ!マジック・ウェポン(武器魔力付与)!」

 力ある言葉が紡がれると、ロータスの持っていた黒鋼の長剣が、淡い光に包まれて、発光していた。


 「すげえ、この輝き、前の剣より威力が上がったんじゃねえのか?」

 「当然でしょ、魔力をブーストして第五階位呪文を十一階位相当で放ってるのよ。持続時間は1時間だけど、そこらの低位マジックソードより切れ味は上よね」

 ランチャーの小剣にも付与して、準備が整った。


 「付与魔法が切れたら撤退よ。それまでに目的の遺品を見つけるか、ダンジョンコアを撃破すること、いいわね!」

 「「「了解!」」」



 やがて彼らは林を抜けて、オークの丘へと歩いていった・・・


 彼らが立ち去ると、それまで鳴り止んでいた、虫の音が林に戻ってきた。

 そして何匹かのコオロギは、そっと近くの土竜塚に潜っていった・・・






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