いわゆる地ビール
本文後半に修正が入っています。
「コア、起きて、そろそろダンジョンの拡張するから、コア?」
『しーーーん』
うお、ビックリした・・久々にはっきりとしたシステム無音を聞いたから、コアに無視されたかと思ったよ・・
「オイラの驚きが理解できたっすね」
確かに、これ不意をつかれると、凹むね・・
でもレベルアップ無音がしたということは、コアのレベルも上がったのかな?
「バトルの結果にしては、ずれてる気がするっす・・」
以前も、離れたエルフの里で外交交渉が成立したら、上昇したことがあったから、今回もその口かな?とにかくコアにスキャンしてもらうしか、確かめようがないんだけれど・・
『むにゃむにゃ・・』
うちのお嬢様は、いまだ眠ったままのようです・・
『ふああぁぁ』
あ、起きたね・・
『ふにゅう・・』
あ、二度寝した・・・コア、夜だけど起きて、お仕事あるから・・
ぐずるコアを宥めすかして、まずはコアと僕のスキャンから・・・
職業:ダンジョンマスター レベル7→8
技能:ダンジョン知識、予測、サバイバル、恐怖耐性、工芸、水泳、交渉、苦痛耐性、ダンジョン戦史New
特技:精霊流し、個人酒蔵New 健康状態:健康(虫刺され)
ダンジョンコア「コア」覚醒バージョン レベル7→8
機能:管理、召喚、スキャン、設置、分解、カスタム、変換、拡張、再配置、転送、遠話、「 」New
特機:浮遊(覚醒バージョン) DP容量:現在値3913/最大5000 (8587DC)
さて僕から行こうかな・・・
技能のダンジョン戦史は、どうやらコアが「姫」から預かったダンジョンバトルの記録によるものらしい。なぜコアのデータが僕の技能として反映されたのかは不明なのだけれども、その膨大な情報量を有効に活用するための技能らしい。『図書館検索』みたいなものだろうか・・
そして問題は、新たに増えた特殊技能『個人酒蔵』である。
どうやら、あちこちでお酒に対する需要が増えすぎて、「もう自分で酒蔵を始めるしかないよね」という状況に陥った結果、発生したものらしい・・・
コアに問い合わせたところ、ダンジョン内で生産する酒類が、安定かつ美味しく出来るようになる効果があるということだ。
ありがたいけど、微妙な特技ではあるよね・・
なんだろう、ダンジョンマスターの特技って、皆、こんな微妙なものなのだろうか・・それとも僕だけ?
今度、マリアにでも聞いてみようと思ったけれど、聞けば、こちらのも答えることになるだろうし、そこでものすごく笑われそうなので、止めておこう・・・
コアの機能には、また新たな三択が登場したらしい。
「コア、それぞれの説明をよろしく」
『こほん』
「隠蔽」 ダンジョン内で、敵の探知系能力を無効化する、または著しく低下させる。
「遮断」 ダンジョン内で、敵の空間転移能力を無効化する、または著しく低下させる。
「隔離」 ダンジョン内の、壁・床・天井などの強度を飛躍的に増大させて、破壊や貫通を困難にする。
の三択らしい・・・
「これはまた、選ぶの難しいのが来たね・・」
『なやむー』
全部、今すぐ欲しいんですけど、どうしようか?
「隠蔽」は、コアルームを探知されたり、遠隔地からダンジョン内を偵察されるのを防ぐのに役立つ。
「遮断」は、邪神教徒戦の時のように、いきなり本拠地を強襲されるを防いでくれる。
「隔離」もあのときのように、外側から掘削してダンジョンを裸にされるのを防いでくれそうだ・・
将来的には、全部とれるわけなんだけど、今、一番欲しいのは・・・
「遮断」かな・・
双子姉妹とのバトルでも、シャフトの罠の回避に使われたし、疲弊して逃走を図る冒険者を封じることもできそうだ・・
「コア、追加する機能は『遮断』を選択して」
『らじゃー』
さて、レベルアップの処理も終えたことですし、懸案の、ダンジョンの拡張をしておこう。
必要なのは、これからやって来るドワーフ難民の受け入れ場所と、仕事場、それにせっかくだから、酒造の為の施設の拡張かな・・
場所的には、水霊の洞窟の先、第四層を広げていけば良さそうだ・・・酒造施設は現状のフィッシュボーンにある施設の増設で賄おう・・
「コア、第4層の左側を拡充するよ。9マス部屋の3方向に出口をつけて、3マス廊下をそれぞれ接続して」
『ん』
「その先にそれぞれ25マス部屋を設置、廊下の両端は石の扉で仕切って」
『・・ん』
「もう少し必要かな?・・左正面の25マス部屋の奥に同じサイズの部屋を隣接で拡張、間の壁には2つ石の扉をつけて」
『ん?』
「ああ、3mほど離した等間隔でいいよ」
『ん』
「左の右手は共用の鍛冶場にするから、その奥に3箇所、個人用のスペースを9マス部屋で増設して」
『・・ん?』
「あっと、一つは左中央の9マス部屋と対称形の位置に」
『ん』
「一つは、正面中央の9マス部屋と線対称の位置に」
『・・ん』
「最後は、その二つの部屋の間に上手く収めて」
『ふぁじー』
「廊下は曲げてもいいからね」
『らじゃー』
保険として避難用の隠し通路も繋げておいたほうがいいかもね・・
その頃、北の山脈の地下にある、元「鍛冶場の番人」クランの居住地では・・・
「フレアだぜ!」
「フリージアです・・」
「二人合わせて負け犬シスター・・」
「ストップ・・自虐ネタが酷すぎです」
いまいち元気の無い双子姉妹が戻ってきていた。
「姉さん、現実に目を背けたらいけないんですです」
「貴女にそういわれる時が来るとは思いもしませんでした・・」
「あれあれ、フレアはいつでも、ありのままを見つめているですよ?」
「なら、バトルで失ったDPの予備はちゃんと貯蓄してありますよね?」
「・・ららら~ららら~らら♪・・」
タッグ戦で敗北すると、合計で1万ポイントの損失になる。まさかの為にDCに蓄えのある姉と違って、その日暮しの妹に、そんな余裕があるはずがなかった。
「DPなら、そこらへんのドワーフを、きゅっと・・・」
「絞めて吸収したら、契約違反でとんでもない違約金を払わされます・・今ならペンペン草1本も残らず没収されますね・・」
バトルの景品になった以上、このクランのドワーフには手が出せなかった。
「なら居るだけ邪魔です、とっとと追い出すです」
「そうですね・・当初の目的も果たせませんでしたし、契約通りに、希望者は放逐しましょう・・」
そう姉妹が相談していると、どこかともなく声が聞こえてきた・・
『うふふ、謎の査問官が参上です』
「いや、絶対管理局でしょう・・」
『あらあら、そこは気がついていても「何者だ!」ぐらい言ってくれないと』
「姉さん、怪しい気配がするです。声だけで姿が見えない敵ですです」
『・・妹さん、素直ね・・』
「・・どうも・・」
「くうう、姿を現すです。卑怯者め、なのです」
「それで、『管理人さん』直々になんの御用ですか?」
『うふふふ、貴女達に素敵なプレゼントを持ってきたの』
「やったです、姉さん、この敵は、良い敵です」
「貴方が、そういう言い方をするということは・・・警告ですか?」
『あらあら、察しも良すぎると、可愛げがないって言われるわよ』
「大丈夫です、姉さんに可愛げは、元からゼロですー・・痛い痛い・ギブ、ギブです」
『アイスドールとファイアーダンサーにダンジョンバトル委員会からの警告を伝えます。規則第9条により、勝敗の際に契約した事項を誠意をもって履行しなさい』
「・・・断ったら?」
『お仕置きです』
「・・・手を抜いたら?」
『罰金とダンジョンコア機能の一時停止ですかしら』
「・・・財務的に履行不可能だったら?」
『あちらに頭を下げて負担してもらうか、借金ですね。バトルの損失の補填なら短時間の査察で融資が受けられます。24時間受付ますよ、うふふふ』
「はっきり言って、眷属でもない亜人を100人単位で、この距離を移動させるのは無理だ。半分は途中で脱落するぞ・・」
『あらあら、それはきっとあちらに考えがあるのでしょう。引取りにくるつもりかもしれませんね』
「なら、それを待てばいいのか?」
『ちゃんと、それまで面倒みるんですよ』
「・・了解した・・」
「姉さん、姉さん、いいんですか?」
「仕方ない、管理局に目を付けられているうちは、派手な行動は取れないからな・・」
「でもでも」
「大丈夫だ、幸運なことに私達には1年の猶予期間ができたのだ。これを有効活用すれば問題ない・・」




