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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第9章 氷炎の魔女編
282/478

主砲、斉射3連

 『構築タイム終了です。各侵攻チームは攻略を始めて下さいね、うふふ』

 「管理人さん」の声が仮想空間に響き渡った。


 「じゃあ、行ってくるわ。防衛は任せたわよ!」

 「マスター、無茶をするなといっても聞かないだろうから、ほどほどにな」

 「攻略、お願いしますね」

 「いってらー」


 僕らとボンさんが見送る中、マリアはゴブシロードを護衛につけて、双子の防衛ダンジョンへ転移していった。本来なら一緒に転移するはずのボンさんは、やはり離れ離れになったマリアを心配しているようだった・・

 「いや、『我家マイホーム』の機能を使って、マリアが遠出するのには慣れているんだ・・」

 「では何か別の心配事が?」

 「転移する直前の『ぐふふふ』という忍び笑いがな・・」

 「・・・嫌な予感がしますね・・・」

 「だろ・・」


 ボンさんの一般常識という鎖から解き放たれた女帝は、双子の迷宮に災いを振りまくのであろうか・・

 「まりあはざーど」



 『アンタたち、あとで覚えていなさいよ』

 あ、念話が繋がった。

 「そっちの様子はどうだ?マスター」

 『味方が盛大にディスってきて、気分が悪いぐらいで、他にはなにも・・』

 やばい、ご機嫌斜めみたいだ・・

 「ゴブシロード、今日はお前が前線指揮官の補佐役だ。頼んだぞ・・」

 『御意、我が身に代えても主殿に勝利を』


 ゴブシロード(R8)は既に完全武装で転送済みだ(960)。主にマリアが支配下に置いた部屋の警護を任されている。まあ、あの能力なら、大抵の敵を撃退できるだろう。ただし、探索には使いづらいのでそこはどうするつもりなのか・・・


 『スタートルームは出口が1つしか無さそうね・・小細工は無しなのか、DPの節約なのか・・』

 「設計は姉だろうから、裏をかいて隠しルートがある可能性もあるが、まあ、まずは様子見だろう・・」

 『そうね、ボン、ゴブリン・スカウト(R2)を罠探知カスタムで4匹召喚して(240)』

 「了解した・・武装はそのままでいいか?」

 『接近戦は無理でしょうね。弓に換装しておいて』

 「・・召喚完了・・」

 『スタートルームはセーフゾーンだから、ここからできるだけ偵察しとくわ』

 「ああ、それがいいな・・」


 「思ったより慎重だし、冷静ですねマリアさん」

 「こっちの噂話に気を取られて、頭に上った血が下がったようだな・・ただバトルの序盤はいつもこんな感じだぞ・・」

 へー、もっといけいけを想像していたけど、そうでもないんだ・・


 「・・ゴブリンウォーズの場合はその限りでないんだが・・」

 ・・どんだけゴブリン好きなんですか・・




  その頃の双子姉妹のコアルーム


 「姉さん、姉さん、コアルームの四方に出口が出現ですよ、何かきます!」

 「ここはセーフゾーンだから、何もこない・・」

 「ちぇっ、期待して損しちゃったです。煽り商法ですよ、C級映画金返せです」

 「どうでもいいから、周囲の確認をさせなさい・・」


 「イスカ、任せたです」

 『テスラ、任せます』

 『イスカ、仕事しなさい、今は貴女が攻略担当でしょ!』

 『マスター、そうなんですか?』

 「フレアに聞かれても、判らないですよ。でもテスラがそう言ってるなら、そうなのかも」

 『では配置転換を希望します』

 「『・・イスカ・・』」


 『あっと急に勤労意欲が湧いてきました。マスター、召喚済みの眷属を偵察に派遣する許可をください』

 「よく考えたら、偵察なんて面倒だよ。適当に突破してけばいいですよ」

 『しかし4つある出口のどれが正解かは・・』


 「んーーと、こっちかな」

 『でたよマスター必殺、当てずっぽう。これが外れないから世の中は理不尽です』

 「じゃあ、姉さん、行ってくるねー」

 「DPはちゃんと残しておきなさい・・」

 『御武運を・・』




  モフモフ連合司令部にて


 「あれ?いきなり本命ルートに来たね・・迷いがないから何か呪文を使ったのかな・・コア、探知系の継続反応でてる?」

 「・・なっしんぐー」

 「双子の妹の方だと思うが、たまに妙に感が鋭いんだ。二択とか迷わず正解ルートを引き当ててくる・・」

 「うわ、直感系なのかー、それはやり辛いですね・・」

 呪文や理論的推測なら裏もかけるが、直感はどうやろうと正解を引き当ててくるから、こっちの苦労が全部無駄になるんだよね・・


 「初期の4択罠が回避されてしまったのか・・」

 「何を仕掛けたんだい?」

 「スタートルームから4方に廊下を延ばして(40)、突き当たりに4種類の扉を鍵つきで置いたんです(82)」

 「ふむ・・その真意は?」


 「敵の罠探知能力と鍵開け能力の見極めですね。あとどの材質の扉まで壊してくるかの実験でもあります」

 「というと本命以外の扉は、鍵を開けても開かない?」

 「そうです、開かない扉は、あきらめるのか、ぶち破るのかも見たかったんですけど・・」

 「でも本命も鍵はかかってるんだろ?」

 「そこだけ掛けないと、素直な相手だと本命からきちゃいますからね」

 「なら、向こうの出方は見れるわけだ・・」

 「んー、でも簡単な鍵ですからね・・技能があればすぐに・・」 

 

 ドガッ!


 「ん?コア、何の音?」

 「たっくるー」

 なぜか本命の石の扉に、敵の眷属が体当たりをしていた・・

 「鍵開けの技能持ちいないんだ・・」


 良く見ると、通路の中央に仕掛けた落とし穴(10)にも嵌った形跡があった。探知能力を見るためのものだから、本当にただ置いただけの罠だったのだけれど・・

 「ボンさん、妹の直感て危険回避とかには働かないんですか?」

 「致命的な罠なら避けるぞ。ただ注意力が散漫だから掛かる時はかかる・・」

 なるほど・・


 「鍵開けの技能持ちもいないんですかね?」

 「いや、それはないな。妹のリストになくても姉のリストにはあるはずだ・・たぶん、面倒だから召喚しなかっただけだろう・・」

 ・・・なんだろう、とてもやり辛い相手だね・・


 「深く考えずに、生存本能に忠実な野生の獣が来てると思えばいいさ・・」

 「なるほど、そう言われると判り易いです」

 だとしたら、心理的な駆け引きとかはいらないね。罠を掻い潜って、こちらの喉笛を狙ってくる猛獣の鼻面にガツンと弾を撃ち込んでやればいいだけだ・・


 「コア、陽動作戦は中止。戦力を3箇所に固めて、シャフトで迎撃する」

 「らじゃー」


 「ストーンキャノン、スタンバイ!」

 『1番砲塔準備よしっす』

 『2番砲塔準備よし』

 『ギャギャ(3番砲塔準備できました)』

 『4番砲塔いつでもいけるだ』

 『キュキュ!』

 『ギュギュ!』

 「おーるぐりーん」


 「ストーンキャノン、全弾発射!」

 『発射!!』x6




  フレア侵攻部隊


 『サラマンダー・ソルジャー(R5/250)が落とし穴に嵌って、軽傷を受けました。作戦行動には影響ありません』

 「足挫いたぐらいで、泣き言いわないの。唾つけとけば治るですよ」

 『サラマンダーに足首はありませんが』

 

 双子姉妹の妹、ファイアーダンサーのフレアは、その性格の通りに、ダンジョン攻略も大雑把であった。

 罠のほとんどは、体力のある眷属が強引に突破する漢解除で突き進み、鍵のかかった扉は、筋力のある眷属が強引にこじ開けていた。

 だが、ここぞという致命的な罠は、直感が働いて、避けることができた・・・今までは・・・


 「むう、なんか嫌な予感がするです・・」

 頑丈な石の扉をなんとか叩き壊して、長い下り階段を降りてきた先にあった、不思議な形の石扉の前で、フレアは悩んでいた。

 『材質は今までと同じ頑丈な石の両扉ですね。形が八角形で、引き手がついているのが特徴的ですが』

 「姉さん、姉さん、今日はもう帰って寝ていいですか?」

 『いいわけないでしょ・・』

 「でもでも、この先ヤバそうなんですけど」

 『めずらしいわね・・貴女がそこまで嫌がるなんて・・』

 『別のルートはないのですか?』

 「んーー、たぶん、こっちで正解のはずですです」

 『まあ本命が一番防衛戦力が高いのも良くある話ですし・・フレアが嫌がるなら、インターバルで交代しても良いですよ・・』


 『それでいきましょう、私が貧乏くじを引く必要は、1ミリグラムもないです。臆病なのは生き残る為には有益です』

 『イスカ、黙って・・』

 「むう、そういわれると不愉快、カイカイ、奇奇怪怪なのです」

 『生兵法は怪我の元ですよ』

 『イスカ!』


 「いいです、フレアの本気見せてやりますです。サラマンダー・ノーブル、扉を押し開けるのです!」

 「キシャー(仰せのままに)」

 『マスター、その扉は内開きです』


 「・・・引いて開けるのです!」

 「・・・キシャ(は、はい)」

 サラマンダー・ノーブル(R9/810)は、上半身は蜥蜴人に似ている亜人タイプで、下半身がナーガ族のように蛇の形態をしている。炎の精霊の貴族クラスが、力をこめて八角形の石の両扉を手前に開いた。

 その奥には、急角度で上下に延びる、直径3mほどの円筒形の通路・・というか水道管のようなものがあった。傾斜角度は45度、階段もない急勾配は、登るには至難で、下るのは簡単だが、どこまですべり落ちるかわからなかった。

 

 「サラマンダー・ソルジャー、敵がいないか確認するです」

 「キシャー(了解です)」

 サラマンダー種族のなかでは、最もランクの低いソルジャーを索敵に向かわせた。


 両足で立つとしたらかなり不安定な急斜面であったが、サラマンダーの蛇胴体なら、さほど苦労もなく張り付いていられる。ソルジャーは通路を見上げながら報告してきた。

 「キシャー(敵影は見当たりません。ただ通路の上から何か音と振動が・・)」

 

 ゴオオオオーーーー


 ソルジャーの声が突然の轟音にかき消された。


 そして、その音が止むと、ソルジャーの姿はどこにも見当たらなかった・・・


 「はあ?」

 呆然としていると、すぐにまたあの轟音がせまってきた。

 今度は心の準備ができていたので、何が起きたのかを見極めることができた。

 『でかい岩の砲弾ですね』

 目の前の円筒形のシャフトを、すごい速度で、岩の砲弾が転がり落ちてきたのだ。しかも次々と、間隔をおきながらも続々と・・・


 「姉さん、姉さん、大変です!」

 『どうしたの?』

 「奴ら、飛び道具を持ち出してきやがりましたです」

 『それは・・弓矢ぐらい用意してるでしょ・・』

 「そんなんじゃないです、これは60インチ砲・・いえ、120インチ砲です!」


 『ごめん・・何言ってるのかわからない・・』


 「くっくっくっ、燃えてきましたです、やってやるです、大艦巨砲主義が時代遅れだってことを、教えてやるですよ!」




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