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ダンジョンマスターは眠れない  作者: えるだー
第9章 氷炎の魔女編
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復讐のジャー

 投稿が大変遅くなりました。申し訳ございません。

 先手を取ったのはトロンジャだった。

 「大蛙で怖いのは飲み込み技だけさ、こいつなら口に入りきらないだろ!突っ込めえええ」

 叫び声に合わせて、アイスドレイクが1頭、突き進んできた。


 「アタイのカラクリ・モンモンチームを舐めるな!、ジャー」

 ベニジャの叫びで、大蛙達が一斉に、舌で絡めた円月槍を口の中から射出した。

 次々に突き刺さる槍は、敵のアイスドレイクを重傷にまで追いやり、その突進力を失わせた。


 「どこから出しやっがったんだい、そんな数の槍を・・・おい、まさか、それは・・」

 トロンジャが何かに気がついて、震える指で円月槍を指した。そこには自分達のクランの紋章である三日月が刻まれていた・・・


 「モグモグ、ケロッ、ペッ」

 大蛙達は、胃の中から、消化に悪そうな皮鎧を吐き出した。槍もそうやって、飲み込んだ敵の兵士の武器を再利用したのであった。


 「生きた紅鮭を飲み込ませてから、吐き出させる訓練をした成果だぜ、ジャジャ」

 「「ケロケロ」」


 突き刺さった槍はそのままにして、弾かれたり、抜け落ちたりした槍を舌で回収すると、2射目が放たれようとしていた。


 「ブレスだよ!」

 トロンジャの指示をうけたアイスドレイクが、起死回生のコールドブレスを吐いた・・・


 しかし、冷気耐性のあるスノートードには、まったく効果がなかった。

 「こいつら、ただの北方大蛙じゃないのかい・・」

 呆然とするトロンジャの前で、2射目を受けたアイスドレイクが、ゆっくりと倒れていった。



  その頃のコアルーム


 「よし、部屋に入った9体は全部倒したね。伏兵部隊のアイスドレイクを、再度進撃させて、左右の兵士をつぶして」

 「ぱんつぁーふぉー」

 んー、二人しか乗れないし、装甲車みたいなもんだし、戦車ではないかな・・


 「ワタリ、もう1頭の敵側のアイスドレイクは目視できる?」

 「背骨の脇道に入り込んで出てこないっす」

 「戦力外ならそれはそれでいいか・・・ならそこから敵のボスが見えるよね?」

 「見えるっすね」

 「・・呪文使いそうになったらクロスボウで阻害して」

 「らじゃーっす」


 止めはベニジャに譲らないとね・・




 アイスドレイクを倒した大蛙達は、突き立った円月槍を舌で絡めて回収すると、目標をトロンジャに据えた・・

 その頃には、左右の兵士達も駆逐されて、クロコとグレコのアイスドレイクコンビに押しやられるように、トロンジャは族長の部屋へと足を踏み入れた。


 正面には大蛙達を従えたベニジャが居た。

 睨みつけるようにトロンジャを見ていた彼女は、低い声で呟いた。

 「言い残すことがあったら聞いてやるぜ・・・ジャジャ」


 「はっ、このアタシが、小娘にここまで追い込まれるとはね・・・まったくヤキが回ったもんだよ・・」

 「もう逃げ場はないぜ、アンタの死に場所はここだ、ジャー」


 「ふっ、蜥蜴訛りも消えないネンネに、アタシの首はやれないねー。どうしてもって言うなら、ハクジャの爺さんでも呼んできな!」


 捨て身で呪文を唱え始めたトロンジャに、待ち構えていた射手が一斉にクロスボウと槍を放とうとした。

しかし、ワタリ達のクロスボウは、偶然脇道から姿を現した敵のアイスドレクに、射線を塞がれてしまう。


 「邪魔するなっす!」

 元々、防御力増加のスキルを使った状態を想定した、新型クロスボウは、易々と通常の装甲を貫き、一斉射でアイスドレイクを葬っていた。

 しかし、その巨体が通路を塞いだことにより、こちら側からは敵のボスを狙うことができなくなってしまった。


 大蛙達の放った12本の槍は、狙い違わずトロンジャに命中したが、なぜか、その全てが、突き刺さらずに弾かれてしまった。

 攻撃が命中するたびに、トロンジャの肌に雪の結晶の文様が浮かび上がるのを見て、ベニジャは祖父さんの言っていた事を思い出した。

 「あれはアイス・スキン!・・・効果は・・・なんだっけ?ジャジャ」


 せっかくのお祖父さんの魔法講座も、この孫娘には意味がなかった・・・


 その隙をついて、トロンジャの威力増し増しの呪文が完成した。

 「くらえ、アタシの渾身のフルブースト・アイスランス!!!」

 

 トロンジャの頭上に出現した巨大な氷の槍は、ベニジャに向かって解き放たれ・・・る前に消滅してしまった。

 「えっ?」


 ベニジャの頭の上で、ヘルムに擬態したフェアリードラゴンのラムダが、翅をパタパタさせていた。


 「助かったぜ、用心棒の先生、ジャ。今度はこっちの番だぜ、ジャー」

 大蛙の槍の雨は、さらに3本がアイススキンで弾かれたが、それで呪文が切れたのか、残りの9本は防御を突き抜けてトロンジャを串刺しにした。


 その直前、2度目の槍の斉射を見上げながら、トロンジャは、首につけていた水晶の数珠のような首飾りを引きちぎっていた。

 「アタシの負けだよ・・・だけど、アンタも道連れさ・・冥府で待ってるよ・・」


 大蛙の放った槍でトロンジャが絶命するのと、床に水晶の珠が散乱するのと、ほぼ同時だった。


 

 「コア!分解!!」

 「ん!」

 床に散乱した12個の水晶の珠が、連鎖的に魔力爆発をする、まさにその刹那、コアの高速演算処理が、7つの水晶を分解していた。

 しかし間に合わなかった5つが、その場で倍に近い威力の氷の嵐を部屋全体に撒き散らした。


 「やっぱりネックレス・オブ・ミサイルの別バージョンだったか・・氷属性みたいだから、冷気耐性があれば、軽傷ぐらいですんだはずだけど・・」

 12個全部連鎖してたら、アイスドレイク以外はやばかったね。


 部屋に吹き荒れた嵐が収まると、ベニジャとラムダの様子を覗ったが、二人の姿はどこにもなかった。

 「え?うそ?消滅するほどの爆発じゃないよね?」

 「ばいたるぐりーん」


 コアのリンクによれば二人とも無事らしい。けれど、どこに?・・・



 「いやー、まいったぜ、執念深いったら、ありゃしねえぜ、ジャー」

 「・・・・!」

 そうぼやきつつ、ベニジャとラムダが、スノートードの口の中から現れた。


 「そこに避難してたんだ・・」

 「いや、毘沙門が飲み込んでくれたんだぜ、な?ジャジャ」

 「ケロケロ」

 あの瞬間に危険を察知して、二人を保護するとは、さすが武神の名前をさずかっただけはあるね・・


 「とにかく、これで敵討ちは終わったね」

 「親父もお袋も喜んでくれっかな・・・ジャジャ・・」


 遠くを見つめるベニジャを、大蛙達が見守るように囲んでいた・・・




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